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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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実家にいるみたいな感じ

 大隊長とオルターネンから王都軍と話が付いたと聞かされた。ホープやサリドン達と王都軍の引き継きに立ち会うから1日出発をずらしてほしいと言われ、出発は2日後となった。


「俺は一度家に帰るわ」


「えー、ここに泊まってた方が楽なのに」


 カタリーナは今晩もここに泊まれと言う。


「疲れてるから、自分の家で寝たいんだよ。他のみんなも宿舎に戻るだろ?」


「じゃあ、私がマーギンの家に行く」


「姫様、マーギンは疲れているのです。1人でゆっくりとさせてあげてください」


 と、ローズがカタリーナを諌めてくれた。


 久々に自分の家に戻り、家全体に洗浄魔法をかけてから風呂に浸かる。


「朝風呂もいいもんだ」


 と、風呂に浸かりながら、天井に向かって手を伸ばす。


 あれはやっぱり夢だったのか? ものすごく長い間、あの何もない空間にいた気がしたけど、カタリーナの部屋で目が覚めたときには時間が経ってなかったからなと、マーギンは伸ばした手をグーパーグーパーしてみる。


「小さい手だったな……」


 あの感触も夢だったのかと思い、風呂からでる。


「ぷはっ」


 1人でソファに座ってレモンサワーを飲んでいると、そのまま寝てしまった。そして、お腹が空いて目が覚める。


「もうこんな時間か」


 外はすっかり日が暮れていた。自分で何かを作るのも面倒なので、リッカの食堂に行くことに。


「いらっしゃ……マーギン。あんた今まで何やってたのよ!」


 出迎えくれたのはリッカ。ここに来るのは怒られるぐらい久しぶりだ。


「久しぶりだな。ちょっとバタバタしてて、家にも帰ってなかったからな。いつもの頼む」


「いつものってのは、いつも来る人が言うセリフですぅ」


「そんな意地悪言うな。疲れてんだよ」


 リッカは憎まれ口を叩いたが、厨房に向かう顔は笑顔だった。


「マーギン、あんた今は何やってんだい?」


「女将さんも元気そうだな。今は面倒なことをやってるよ」


「ほどほどにしときなよ」


「ありがとうね。しかし、店はずいぶんと落ち着いたね」


「萌え萌えキュンはやめたからね」


「なんで?」


「あちこちの店でもやってるし、リッカもお金貯まったから、やりたがらないんだよ。それにダッドも料理でやっていきたいみたいだしね」


「俺がやらせておいてなんだけど、その方がいいよね。リッカも大人になってきたみたいだし」


 少女から女性になりつつあるリッカ。前に聞かされていたとおり、出るところが出てきていた。アイリスの見た目は変わらんのに。


「はい、お待たせ。店が終わる時間にもう一度顔出せって、父さんが言ってたよ」


「分かった」


 赤ワインにくるっと指を回して一口飲み、賄い料理を頬張ったマーギンは、もぐもぐして手が止まった。


「あれ? 美味しくない?」


「いや、いつもどおり旨いよ。うん、いつもどおり旨い」


 穏やかな顔でそう答えたマーギンは、一口ずつ何かを確かめるように食べていた。


 そして、そのまま家に戻らず、厨房に入って大将の手伝いをする。


「ほら、マーギン。そっちの魚を捌いてくれ」


 リッカの食堂でもハンナリー商会から魚を仕入れ始めているようで、刺盛りの注文が入ってくる。


「そんなに薄く切るな。もっと分厚く切ってくれ」


「ぶつ切りにすんのか?」


 マーギンが刺盛りを作っていたら、大将からクレームが入る。


「そんなに薄く切ったら貧乏臭ぇだろうが」


「バランスってもんがあるだろ?」


「もういい、貸せ」


 結局マーギンは柵にするだけで、刺身というか、ぶつ切りを盛り付けるのは大将がやった。漁師飯みたいな感じだ。


 店が閉店したあと、食器類を魔法で綺麗にしてから、残った材料で飲むことに。


「で、今は何をやってるんだ?」


「王様」


「は? 何の冗談だ」


「冗談じゃなくて、ノウブシルクの王様をやってんだよ。落ち着いたら誰かにやってもらうけどね」


「本当の話か?」


「本当の話」


「何をやってるんだお前は」


 と、大将に呆れられた。話が大きすぎて現実味がないって感じだ。


「また王都を空けるのか?」


「そうだね。ここは平和だけど、西側は大変なんだよ。ゴルドバーンの王都も滅ぼしてきたからね」


「は? 滅ぼしただと?」


「そう。その後始末もやらないとダメだし。こんなことならのんびりと魔法書店をやってりゃ良かったよ」


 と、酒をぐいっと飲み干した。


「私も飲もうっと」


「私もお邪魔しようかね」


 と、大将と一通り話が終わったのを見計らって、女将さんとリッカが参戦してきた。


「刺身じゃないものがいい。父さん、何かないの?」


 と、ワインを飲むリッカが他の物を要求する。ワインと刺身はあまり合わないからな、とマーギンはすぐにできる物を作りに行った。


「これなら軽くつまめるだろ」


 マーギンが持ってきたのは揚げたお菓子のような物。


「あ、サクサクしてて美味しい」


「ほんとだね。これならいくらでも食べれるよ」


 いくらでも食べるから、そんな身体に……


「痛てててて」


 何も言ってないのに、女将さんに口をつねられるマーギン。


「何も言ってないだろ?」


「お黙り!」


 女将さんとリッカがバクバク食ってる間に、マグロのぶつ切りを食べる。


「マグロだとこれぐらい分厚くてもいいね」


「肉と比べりゃ柔らけぇからな。これぐらいの方が食べ応えがあっていいんだ」


「白身はたべにくいぞ」


「そうか?」


 まぁ、ぶつ切りの方が人気があるなら、それでいいけど。


「マーギン、なくなった」


と、空になったお菓子の皿を見せるリッカ。


「まだ食うのか?」


「別にいいでしょ」


 そんな食い方してたら、すぐに女将さんみたいに……


「痛てててて」


「太ってないわよ!」


 なぜ、この母娘には心に思っただけでバレるのだ?


「マーギン、これはここでも作れるのかい?」


「切って揚げるだけだからね。材料さえあればできるよ」


「材料はなんだい?」


「ビッグワーム」


「え? なんて?」


「ビッグワームだよ。少し残ってたから使ったんだ。ほとんどあげちゃったから、もうないけど」


「もしかして、魔物のビッグワームじゃないだろうね?」


「魔物のビッグワームだよ」


 それを聞いてワナワナと震える女将さん。


「あんた、なんてもんを食わしてくれたんだい!」


 激怒する女将さん。


「美味かったろ? 下処理をちゃんとしたら、普通に食えるから……」


 と言ってもめっちゃ怒る。女将さんはあの手の魔物が嫌いらしい。口直しとして魔牛カルビを焼いてだしたら機嫌が治った。


 そんなに食うから……


「痛てててて」


 いらぬことを言わなくても口をつねられるマーギンなのであった。




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― 新着の感想 ―
まだ僕には帰れる所があるんだ。こんな嬉しいことはない。 (*・ω・)
帰るところがあるってのはいいことだ。
アイリスの見た目・・・ 3万のままなんだね
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