表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

442/548

お父さん

目覚めると、アイリスがしがみつきながら足をのっけて寝てやがる。涙の跡があるから寝ながら泣いてたのか。嫌な夢を見たのかもしれん。


足をペッと払い除けて起こす。


「ほら、起きろ。飯作ってやるから顔洗ってこい」


「朝ごはんはハンバーグですか?」


朝からそんなもん……と言いかけたが、


「ちょっと時間掛かるからな」


と、答えると、パァッと明るい顔になり、エアリスを起こして顔を洗いにいった。


ここはオープンキッチンなので、アイリスとエアリスがハンバーグができていくのをふんふん♪ と鼻歌を歌いながら見ている。


「お皿の上にはハンバーグが1つ、ナイフで切れば2つに増える♪」


それは増えてないぞ。と、心の中でツッコミながら、フライパンからハンバーグを取り出し、ケチャップ、醤油、砂糖をいれて少し煮詰める。


「ケチャップ入れんのかよ?」


振り向くとバネッサがいる。


「勝手に入ってくんなよ」


「ちゃんとノックして入ってきたぞ。なぁ、アイリス」


「はい」

 

ハンバーグの焼き加減に集中しているときに、アイリスが招き入れたようだ。これ、カタリーナ達も来る流れだな。


「バネッサは次のを待て。ケチャップ抜きにしてやるから」


「別に入っててもいいぜ」


丼にご飯を入れて、そこにハンバーグと野菜類、目玉焼きをのせたあとに煮詰めたソースを掛ける。


「ほらよ」

 

アイリスとエアリスの目玉焼きは堅焼き、バネッサのは半熟だ。


「いっただきま~す♪」


じーー。


アイリスはがっついて食べている。エアリスはバネッサが目玉焼きを割って、ハンバーグの上にとろとろ黄身が流れていくのを見ている。


「どうして僕のと違うの?」


「うっせぇな、うちはこういうのが好きなんだよ」


取られまいと器を隠すバネッサ。


「エアリスはお前と違って、お育ちがいいんだから、人の飯を取るかよ」


「そっ、そんな言い方すんなよ」


「エアリス、バネッサと同じ目玉焼きがいいか?」


「うん」


と言うので追加で焼いてやると、嬉しそうに割って、ハンバーグに黄身を流していた。


「おいひいっ!」


「だろ? 目玉焼きはこうじゃなきゃダメなんだよ」


バネッサは仲間が増えて嬉しそうだ。


「マーギンさん、私のも半熟目玉焼きをお願いします」


アイリスも仲間に入りたいようだ。というか、もうハンバーグだけ食べて残ってないじゃないか。


自分の分も含めてハンバーグを追加で焼いていく。


じーー。


振り向くとカタリーナとローズかいる。俺はダルマさんが転んだでもしているのだろうか?


「目玉焼きは半熟と堅焼きどっちだ?」


「堅焼き!」


と、カタリーナとローズは堅焼きをチョイス。自分のとアイリスのは半熟に。


「悪くないですね」


半熟目玉焼きを割って食べたアイリス。


「焼き加減は好き好きだからな。これからは焼く前にどっちがいいかリクエストしろ」


じーー。


自分のを食べようとしたら、それを見つめるバネッサ。


「食いたりないのか?」


「ま、まぁな」


と言うので自分のを渡しておく。もう作るのが面倒なので、自分はトーストだけでいいわ。


そして、トーストを焼いていると、バネッサが目玉焼きとベーコンを焼いてくれた。



「ねぇ、マーギン。今日は何をするの?」


カタリーナはなんの遊びをするのか聞きたいのだ。


「そうだな……エアリス、海で泳ぎたいか?」


「うん」


「ということで海水浴だな。ビーチは人が多いから、領主邸のプライベートビーチでいいんじゃないか。岩場もあるから遊ぶところも多そうだし」


「釣りもしたい!」


「それはマーロックに頼め」


朝食を終え、リビングでワイワイしていると全員が集合したので、領主邸のプライベートビーチで遊ぶことを伝える。


「マーロック、カタリーナが釣りをしたいらしいんだけど、頼めるか?」


「何を狙いたいんだ?」


「美味しいの!」


「小さくてもいいのか?」


「いいよ」


ということで、カタリーナをマーロックに押し付ける。今日はエアリスの面倒を見てやらないとダメだからな。



「エアリスを海で遊ばせる? 大丈夫かね?」


皆で領主邸に来て、今日の予定を説明する。


「エアリスは熱以外に、咳が出たりしますか?」


「い、いや。それはないが、まだ体力が心配でな」


「なら、大丈夫ですよ。何かあればカタリーナもいますし」


「姫殿下にそのようなことを……」


「ま、今日ぐらいはいいでしょ。エアリスも外で遊ばせた方が体力付きますよ」


と、エドモンドを説得し、ビーチに移動すると、マーロックが船を持ってきていた。船を漕ぐ他のやつらは宿に泊まってないようなので、洗浄魔法を掛けておいた。海で汗を流したぐらいみたいだからな。



「エアリス、これ見てみろよ」


波打ち際に移動すると、バネッサが早速、何かを拾って来たようだ。


「これ何?」


バネッサにはいいものに見えても、エアリスにはゴミに見えたのだろう。


「知らねぇよ。なんか半透明で綺麗だろ?」


「う、うん……」


この歳で忖度できるエアリス。


「マーギン、これなんだ? 宝石か?」


「多分、割れたガラスだ。漁具のブイかなんかが割れたカケラだと思うぞ」


「なんだよ、ガラスかよ。でもいいや。戻ったらカザフに宝石のカケラだと自慢してやろ」


それから、アイリスも加わって、波打ち際で貝殻集め大会になる。


「へっへーっ、見ろよ。トンガリ貝殻だ」


「私のは綺麗なピンク色の貝殻です」


「僕のはこんなにおっきくて、軽い貝殻見付けた!」


「おっ、エアリス。すっげえじゃねぇかよ」


と、バネッサに褒められて嬉しそうだ。

しかしそれはコウイカのフネだ。貝殻じゃない……とも言えないのか?


なんか、イカは貝の仲間だったようなことを聞いたことがある。まぁ、そんな説明は楽しそうに遊んでいるアイツラには無粋な話だな。


マーギンは子供達を見守る父親みたいな感じで、エアリス達を見守っていた。


「はい、お父さん」


と、横に座ってきたシシリー。冷たいドリンクを持って来てくれたのだ。


「ありがとう。てか、お父さんってなんだよ?」


「だって、そんな感じじゃない」


「なら、シシリーはお母さんだな」


「ふふふ、マーギンがお父さんで、私がお母さん。悪くないわねぇ」


と、嬉しそうに笑う。


「マーロックと結婚しないのか?」


「そうねぇ、タイベの基礎が固まるまでは無理かなぁ」


「仕事より自分のことを優先しろよ。お前はもう十分足場を固めてくれてるだろ」


「そうね、だいぶ形にはなってきた。次はそれを任せられる人を育てないとね」


「王都から何人か引っ張ってくればいいんじゃないか? お前が声を掛けたら来るやついるだろ」


「王都からタイベに生活拠点を移すのって勇気がいるものなのよ。遊びに来るにはいいところでも、不便な田舎だからね」


元の世界からしたら、どっちも不便な田舎だ。それはそれでいいと思えるんだけど。


「ま、仕事のことは任せるけど、あんまり歳食わないうちに結婚しろよ」


「私にもお父さんをしてくれるのね」


と、シシリーは笑ったのであった。


「シシリー、ちょっといいかしら?」


と、シスコが呼びにくる。水着を着ていない。


「シスコは水着を着てないのか?」


「私の水着姿を見たいのかしら?」


「そうだな。何も足さない、何も引かないって感じでちょうどいいぞ」


「それ、褒めてるの? けなしてるの? どっち?」


「バランサー体型ってやつかな?」


自分でも褒めたのかどうか分からないマーギン。普通って言うと、褒め言葉ではないような気がして、何かで聞いたことのあるセリフを言ってみたのだ。が、シスコは眉を顰めてシシリーを連れて行った。


お代わりはオルターネンとロッカだ。海に鍛えに来たのだろうか?


「マーギンは泳がんのか?」


「今日はエアリスの見守りですよ。隊長とロッカは泳がないんですか?」


「やはり、上手く浮かなくてな」


二人とも筋肉質だからな。泳ぎ続けてないと死ぬサメみたいな感じなのだろう。


そこへ、アイリスがたくさんピンクの小さな貝殻を持ってやってきた。


「マーギンさん。これ、首飾りにできます?」


「穴あけて、つなげるぐらいなら簡単だぞ。加工するのは手間暇が掛かる」


「じゃ、穴をあけて下さい」


「ここではやらんぞ」


「じゃあ、戻ってからでいいです」


と、加工するのが前提のような感じでまた集めにいった。


ずっとここで見てるのも暑いので、マーギンも波打ち際に行くことに。オルターネン達も来るようだ。


「マーギン、これ見て。おっきい貝殻見つけた」


と、エアリスが持って来る。


「それ持って帰るか? 耳に当てたら波の音が聞こえるぞ」


「ほんとっ?」


「王都に戻っても、海を楽しめるだろ?」


「うんっ!」


そしてバネッサも大きな貝殻を持って来る。


「うちの方がおっきいぜ!」


子供に張り合うきょぬー。


「耳に当てたら波の音が聞こえるんだって」


と、エアリスが教えてもらったことをバネッサに伝える。


「ホントかよ?」


と、バネッサが貝殻を耳に当てた。


チョキっ。


「痛ってーーっ!」


中身が入っていたバネッサの貝殻。大きめのヤドカリに耳を挟まれたようだ。


「ヤシガニじゃないから大丈夫だ」


「ヤシガニってなんだよ?」


「それのデカいのだ」


耳を挟んだあと、すぐに閉じこもるヤドカリ。


「こいつか、うちの耳を挟んだのは」


バネッサが仕返しに貝殻を振る。やめたれ。


「出てこねぇなコイツ」


「やめとけ。出てきたら出てきたで、気持ちが悪いぞ」


「気持ち悪いっても、日頃魔物とか見てるだろうが」


と、言ってる隙に、ズルんと出てきたヤドカリ。内臓を引きずって歩くように見えて気持ち悪いのだ。


「ぎゃーーっ!」


びっくりしてマーギンに抱きつくバネッサ。


ムギュウウ。


「死ぬっ、死ぬっ!」


バネッサの背中をタップするマーギン。


「わっ、悪ぃ……」


「窒息死するだろうが」


と、言ったマーギンの顔は赤くなっていた。


そして、逃げ出したヤドカリの近くに貝殻を置いてやると、またそこに入ったので、逃がしてやれと言っておいた。


なのに貝殻に入ったヤドカリをまだツンツンしているバネッサ。


「やっぱり、嫌じゃねえ。なんなんだよ……」



その呟きは波の音に混じり、誰にも聞こえなかったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
マーギンパパも早く結婚してどうぞ シスコとの関係好きだからシスコとも良いぞ
シシリーは一応は気持ちは決まってるんだね。マーロックとの結婚はまだって言ってるもの。
マーギンがマジで皆のお父さんしててほっこりw エアリスが素直な末っ子ポジに収まって、こりゃあ皆に可愛がられそうだな そしてバネッサの感情は父親ポジへの親愛なのか はてさて男への愛情なのか 当人の精神年…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ