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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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リゾラバ

今日は女性陣の水着のお披露目だ。


「じゃーん、どう?」


真っ先に見せに来たのはカタリーナ。前よりお育ちになられたのか、水着に仕掛けがあるのか分からんが、女の子らしい体型になりつつある。もうおんぶとか気軽にしてはダメだな。


「可愛いぞ」


「やったぁ! ほら、ローズもじゃーんどう? をやって。ほら、早くやって」


「わ、私はいいのです。いいですからっ!」


風呂上がりのようなバスタオル姿でイヤイヤするローズ。


「もうっ!」


ローズのバスタオルを剥ぎ取るカタリーナ。


「きゃぁっ!」


大きな声を出したので注目を浴びる。あらわになった白いビキニ姿が艶かしい。


と、鼻の下を伸ばし掛けたマーギンは慌てて尻を隠す。ジェニクスで突かれると思ったのだ。


「あれ?」


尻に衝撃が来なかったのでキョロキョロすると、オルターネンはロッカに「ど、どうだろうか?」をされてモジモジしていた。それを見たマーギン、


「お二人、似たような体格ですね」


と、いらぬことを言う。


「貴様ぁぁぁっ!」


激怒したロッカにケツを蹴飛ばされた。


お似合いですね、とからかおうとして、初めに2人を見た印象が口に出てしまったのだ。


「ふぉぉぉぉ……ヒールっ、ヒールっ!」


悶絶するマーギン。蹴られたのはケツだけではない。


「あなた、言葉が過ぎるわよ」


見上げたらシスコムーン。


「パンツ見えてるぞ」


ゲシゲシゲシゲシ。


砂まみれの足で顔を踏みつけられる。


「同じことをしないでちょうだい」


そういや、前にもこれやったな。


「おめぇよぉ、ロッカもちゃんと褒めてやれよ」


バネッサがマーギンの顔の上に立って説教する。


「誰だ? 乳で顔が見えんぞ」


ゲシッ。


おもくそ顔を踏み付けられたマーギン。


「大丈夫ですか? 炙ります?」


心配したアイリスが覗き込む。


「なんで炙るんだよっ!」


「冗談ですよ」


と、笑うが、お前が言うと冗談に聞こえないのだ。


「ほら、新しい水着です。どうですか?」


幼児体型だったはずなのに、ちゃんと胸がある。本物か? と、確かめかけて止める。傍から見たら少女にイタズラをする不埒者に見えてしまうと気付いたのだ。


「この水着凄いんですよ。ほら、こんなふうになってて……」


「見せるな見せるな。お前も一応成人してるんだから、ちょっとは恥ずかしがれ」


「だって妻ですし」


ごすっ。


「それやめろって言ってるだろうが」


ヒソヒソヒソヒソ。


たくさんの人がいるところで騒がしくしてたので注目を浴びている。おかげですっかり、ローリー扱いされてしまったではないか。


「賑やかね」


マーロックを従えてやってきたのはシシリー。周りの注目度も高い。


「相変わらず見事だな」


胸元に大きくV字のスリットが入ったワンピースタイプの水着を着ているシシリー。ヘソまで見えてるけど、どんな仕組みになってんだ?


と、マジマジと見ると、マーロックが砂を蹴飛ばしてきやがった。


「べっ、べっ。口に入っただろうが」


「他にも女がたくさんいるだろ。そっちを見てやれ」


「そうよ。マーギン、泳ぎに行くわよっ!」


カタリーナがマーギンの手を引っ張って行く。ローズとアイリスもそれに続いた。


「姫様、ヤキモチ焼いて可愛いわね」


と、シシリーがシスコに話し掛けると、スススと距離を取る。


「どうかした?」


「私と並ばないでちょうだい」


「あら? どうして」


と、クスクス笑うシシリー。


「分かってるくせに」


「あら、バランスが取れていいじゃない」


「うるさいわね」


「それなら泳いできたら? 私はここで休憩スペースを用意しておくから」


そう言われたシスコはバネッサを連れて泳ぎに行った。バネッサは規格外だから隣にいても引け目は感じない。


「お、俺達も泳ぎに行こうか」


「は、はい」


オルターネンとロッカも泳ぎに行く。



「マーギン、プロテクションボールで包んで」


「こんなところでできるか」


「えー」


「こんなに人がいるところでやったら騒ぎになるだろ。自力で浮かべ」


「どうやったら浮くの?」


「大きく息を吸って、上向いたら浮かぶ」


やって、と言うので、カタリーナを支えながらそっと海に浸ける。


「大きく息を吸ってろよ」


息を吸ったのを確認して、そっと手を離すとちゃんと浮いた。


「浮いた」


「そう。上手くできてるぞ」


続いてローズとアイリスも浮いてみる。


「浮きました」


「こうすれば泳がなくとも浮けるのだな」


「力を抜いてれば人は浮くもんなんだよ」


近くでそれを聞いていたオルターネンとロッカも挑戦。


「ブクブクブク」


沈んでいく2人。お似合いだな。


「マーギン、泳がねぇのか?」


スイーッと泳ぎながらこっちに来たバネッサ。


「ちゃんと泳げない人の面倒を見てないとダメだからな」


「別にいいじゃんかよ。うちと競争しようぜ」


今回はカザフがいないから競争して遊んでくれる人がいないのだ。


「勝負してあげたら? 私もマーギンがどれぐらいのスピードで泳げるか見てみたい」


「えーっ」


「なんだよ、うちに負けるのが怖いのか?」


「俺が負けるわけないだろうが。こんな人の多いところで勝負したら迷惑だろ」


「じゃあ、沖でやろうぜ」


ったく、こいつは。


少し沖に出て勝負をすることになったマーギン。そこまでは平泳ぎ。


「じゃ、ここから皆のところがゴールでいいな」


「いいぜ。じゃ、スタートっ!」


フライング気味にバネッサがスタート。マーギンは大きく息を吸ってからクロールで追い掛ける。


「げっ、マーギンの野郎速いっ!」


ほぼ息継ぎなしでスピードを上げるマーギン。


バネッサも必死で泳ぐが、泳ぎ慣れたマーギンには敵わない。


「クソッ!」


ん?


マーギンは泳ぎながら違和感に気付く。


これ進んでないんじゃないか?


クロールを止めて顔を水面から出すと、ズザザザと沖へ向かって潮が流れ始めている。


ゲッ、離岸流じゃんかよ。


「バネッサ、泳ぐな。こっちに来い」


しかし、必死に泳ぐバネッサに声が届かない。


これはまずい。離岸流に逆らって泳いでたら体力だけが奪われる。


マーギンはバネッサに向かって泳ぎ、捕まえた。


「なっ、なにしゃがんでいっ」


「うるさい。黙って浮くことに専念しろ。流れが収まったら……」


「な、なんだよ?」


バネッサが着ていた水着は肩紐なしのチューブトップ。必死で泳いだのと、離岸流の流れで下にズレていた。


「あーっ、見るなっ。見る……ぐぼぼぼ」


手で胸を隠そうとしたバネッサは沈む。マーギンは慌てて抱き上げて顔を水面から出してやる。そして、バネッサが一度沈んで暴れたことで、水着が流されてしまった。


「俺に掴まっとけ」


「だっ、だけどよぉ」


「お前が暴れると二人とも溺れる。いいからしがみついとけ」


そして、そのまま結構沖に流されたところで流れが収まった。


「だいぶ流されたな。このまま泳ぐのは無理があるから、ホバー移動で戻るぞ」


「こっ、このままかよ?」


素肌でマーギンに抱き着いているバネッサは真っ赤だ。それに気付いたマーギンも急に恥ずかしくなる。


「しょ、しょうがないだろ」


バネッサを抱き着かせたまま、ある程度のところまでホバー移動をする。二人とも無言だ。


「シャ、シャツかなんか持ってねぇのかよ……」


バネッサがそう聞いてくる。


「あっ……持ってるわ」


アイテムボックスの中には自分の服が入っている。


プロテクションで足場を作り、うしろを向いて、アイテムボックスからシャツを出してバネッサに渡した。


「てめぇ、分かっててやっただろ?」


「そんなわけあるかっ!」


マーギンのシャツはバネッサには大きい。それを着て泳ぐのは難しいので、バネッサを背負い、泳いでいるように見せるために水面に寝転ぶようにしてホバー移動。皆から見える所まで来てから、マーギンが泳いだのだった。



「なんでバネッサはシャツ着てるの?」


「水着を流されたんだよ。それよりここから上がれ。俺達はさっき離岸流で沖まで流された。シシリーに言っとかないと溺れるやつが出てくるぞ」


と、シシリーが用意してくれていた場所に移動する。


「離岸流か。よく戻ってこれたな」


マーロックは当然離岸流の怖さを知っている。


「離岸流だと気付いたから、そのまま収まるまで浮くことに専念してたんだ。そのあとは魔法で何とかなるからな」


「そうか。地元のやつは大丈夫だろうが、観光客はヤバいな」


「対策はできるか?」


「海に詳しいやつなら、兆候は掴めるんだが、観光客には無理だな。スピードの出る細い舟をいくつか待機させておくしかねぇんじゃねぇか?」


ライフセーバー的なやつか。


マーロックからシシリーに説明してもらい、すぐに対策を取ってもらうことにしたのだった。



昨夜も泊まった家というか、コテージみたいな施設。部屋数も多いし、全室オーシャンビュー。庭にバーベキュー施設があるのでそこで晩飯だ。


マーギンはぐったりしていた。肉体的にも精神的にも昼間の出来ごとで疲れたのだ。


「ねぇ、マーギン。チーズちょうだい」


「はいはい」


カタリーナはアイリスとバーベキューで焼いたものをチーズディップしたいらしいので、チーズソースを作ってやる。あとは勝手に食いたまへ。


カタリーナ、ローズ、アイリスがセット。オルターネンとロッカ、シシリー、シスコ、マーロックがセット。マーギンは飯もそこそこにボンボンベッドに寝転んで海を見ながらレモンサワーを飲んでいた。


そこへやってくるバネッサ。マーギンに少しズレろと言って、そこに座る。


「あんまり食ってないだろ? カタリーナ達がチーズ付けて食ってるから、一緒に食って来い」


「それより甘い酒を作ってくれよ」


と言うので、起き上がってグラスにクラッシュ氷とパイナップルジュースとオレンジジュースを入れて、酒と混ぜる。


「ほらよ」


「おっ、旨ぇ」


「お前、こういう味好きだからな」


「うちのことをよく分かってんな」


「どれだけお前に飯や酒を作ったと思ってんだよ


「そうだな。たくさん作ってもらってるぜ」


と、微笑むバネッサ。


酒を飲んでも向こうに戻ろうとしないので、水着のことを注意しておく。


「前にも言ったけど、水着の上にシャツとか着とけ。ポロリしやすい乳してんだから」


「そっ、そんな言い方すんなよ」


「今日なんか全開だったろうが」


「うっ、うっせえな。しょうがないだろ」


「俺がいなかったら、乳丸出しで皆のところに戻るハメになってたんだぞ」


「み、見たのかよ?」


「見た。バッチリ見た」


「責任取れよな」 


「お前が勝手に見せたんだろうが」


「ケツも見たことあるだろうが」


「あれもお前が見せたんだ」


「モグラのときにパンツ下げたじゃねーか」


「あれは治療だ」


そんなことをギャーギャー言い合う。そして少し黙ったあとに、


「きょ、今日のことだがよ……」


「心配すんな。ちゃんと見なかったことにしてやる」


「見たもん忘れられるわけねーだろうが。見られちまったもんはもういい」


「じゃなんだ? 金でも払えって言うのか?」


「そんなんじゃねーよ。ていうかよ、別に嫌じゃなかったんだよ……」


「何がだ?」


「はっ、裸で抱き着いたことだよ」 


と、真っ赤になるバネッサ。


「は?」


「前にお前が言ったじゃねーか。触られても嫌だと思わない相手にしろって」


「俺は触ってないぞ」


「おんなじだろ。なぁ、これどういうことだ?」


「何がだよ?」


「うちはなんで嫌じゃねーんだ?」


「知るかよ」


「ちょっと触ってみてくれよ」


「は?」


「本当にうちは嫌じゃないのかどうか試してみてくれよ」


「おっ、お前酔ってるのか?」


「酔ってねぇよ」


と、バネッサがマーギンの手を取って、胸に当てようとする。


ドキドキドキ……


「お、お前冗談が過ぎるぞ……」


バネッサに真剣な顔で見つめられて、手を取られたマーギンはドギマギする。


ガシっ。


「だめーーーっ! そんなの触ったら元に戻れなくなるじゃないっ!」


間一髪、カタリーナがそれを阻止したのだった。

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― 新着の感想 ―
バネッサとローズを責任持ってしっかりと幸せにするんだぞ、マーギン
おや?ヴァネッサの様子が変わった。マーギンレースのトップじゃないか、今のところ
成長したな、と言えば多少オヤジ臭くはあるが褒め言葉なのにこの男は… 誰かマーギンを「ギン」ってよんで距離を摘めようw 感傷で泣くかもしれんがw
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