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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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バカバカバカバカっ!

ウッキウキでマーギンが来るのを待つカタリーナ。しかし、待てど暮らせどマーギンが来ない。


「お父様達とお昼ご飯食べてるのかな?」


「そうかもしれませんね。ゴルドバーンのことをどうするかお話をされているのでしょうから、長引くのではありませんか」


「うん……」


「姫様も何か食べましょう」


カタリーナとローズは私室でランチを取り、マーギンを待った。


「おっそーーい! いくらなんでも遅すぎない?」


「ですね……誰かに聞いてきてもらいましょうか」


と、王が誰と謁見しているか、使用人に聞きに行ってもらった。


「姫様、陛下は他の方と謁見されているようです」


「マーギンは?」


「申し訳ございません。そこまでは……」


「探しに行くっ!」


と、カタリーナは痺れを切らしてマーギンを探しに行った。しかし、城のどこにもいない。


「何か緊急事態が発生したのかもしれませんね。大隊長もおられませんし」


「なんかあったのかな?」


「どうでしょう」


「街に探しに行ってみよ。もしかしたら、家にいるかもしれないし」


「それより部屋にいた方がよろしいのではないですか? 入れ違いになるかもしれませんよ」


と、ローズに言われて部屋に戻った。



その頃、マーギンはいくら考えても答えが出ずに、溜まりに溜まった疲れがどっと出てベッドで寝ていた。


日が暮れた頃に目覚めたマーギン。


「あーっ、よく寝た。寝すぎて頭が痛いわ」


指先から水を出してゴクゴクと飲む。自分のベッドて寝るのも久しぶりだし、1人なのも久しぶり。


ぐーっ。


朝うどんを食べたきり、何も食べてないマーギンのお腹が鳴る。しかし、自分だけ食べるのに何かを作るのが面倒臭い。


「大将の賄いでも食べにいくか」


しばらく顔を出してなかったリッカの食堂に食べに行くことに。


「おや、マーギン。久しぶりだね」


「うん、昨日戻ってきたんだよ。さっきまで寝てた」


「で、その髪の毛の色はなんだい?」


すでにほとんど黒髪に戻っているマーギン。毛先だけが金髪なのだ。


「おしゃれ」


「ちっとも良くないよ。サビ柄の野良猫みたいじゃないか」


と、褒めてくれなかった女将さん。


リッカの食堂は流行ってはいるものの、前みたいな混雑ぶりではない。


「いつものちょうだい」


と、注文したら、すでにリッカが持って来た。


「どこに行ってたのよ?」


「他国だ」


「他国? へぇ、いいなぁ。私も外国に行ってみたい」


「他国は戦争中だ。なんにも楽しくないぞ」


「戦争してるの?」


「そうだ。魔物も増えてるし、安心して暮らせるような状況じゃない。それと比べたらシュベタインは平和でいい国だな」


「そうなんだ」


と、ピンとこないリッカ。平和しかしらないと、そのありがたみは分からない。ま、それが幸せというやつなんだろうけど。


久しぶりの大将の賄いを堪能していると、


「いたーーっ!」


カタリーナがやってくるなり大きな声を出す。


「騒ぐな。他の客に迷惑だろ」


ボロボロ……


そしていきなり泣き出すカタリーナ。


「おっ、おい、どうしたんだよ?」


「マーギンのバカバカバカバカっ!」


マーギンに泣きながらポカポカしてくる。


「マーギン、姫様の部屋に来る約束はどうした?」


「えっ? 約束……あっ」


「姫様はずーっと、部屋でお待ちになられていたのだぞ。何か緊急事態が発生したのかと思っていたが、呑気に酒を飲んでいるとはな」


ローズにピーマンを見る目で見られるマーギン。


「わ、悪かったな……考えごとをしていたら、ついな……」


「うぇぇぇん。マーギンのバカぁ」


「明日、明日の朝に行くから」


「いっ、今から……ヒック。今から来てっ!」


「今からって、もう夜だぞ」


「いいから今から来てっ!」


「おっ、おい……今からって」


と、カタリーナはマーギンの手を引っ張って外へと連れていく。ローズはマーギンの食べたものの支払いと、騒がせたお詫びに金貨1枚を支払っていた。


「魔法使って」


「は?」


「転移魔法使って私の部屋に来て」


「こんなところで転移魔法を使うとか……」


「早くっ!」


あまりの剣幕に路地裏に入ってから転移魔法を使ってカタリーナの部屋に移動したマーギン。


「お待たせしまし……た? あれ?」


哀れ、ローズ間に合わず。



カタリーナの部屋でちょっぴりうえぇをしたマーギンは洗浄魔法で綺麗にする。


「どうしたんだよ?」


「ずっとマーギンが来るの待ってたのにっ!」


「だから悪かったって。あっ……」


「なに?」


「ローズを置いてきた」


「あっ……でも、もう夜だしいいよね」


王城にカタリーナがいるときは、夜の護衛は他のものがする。しかし……


「マーギン」


真剣な顔をするカタリーナ。


「はい」


「魔道金庫に自分の名前を入力してみて」


「もう試したぞ」


「本当の名前を入力してみて」


「本当の名前?」


「そう。サナダギンジロウって入力して」


マーギンは言われるがままに入力をする。


カチャ。


「えっ……? 開いた……こっ、これ……」


「お母様がね、パスワードはマーギンの本当の名前じゃないかって。それでもずっと開かなくて、何か間違ってるんじゃないかと思って、マーギンに名前を書いてもらったの。サナダギンジローじゃなくて、サナダギンジロウだったのよ」


「俺の本名がパスワード……だと?」


「そんなの絶対に誰も分かんないよね」


ミスティの魔道具金庫のパスワードが俺の名前? あいつがそんなことをするわけが……


「ミャウ族のマナって、本当の名前ってことだったのよ」


本当の名前……真の名……マナか。


◆◆◆


「マーギン、お前の生まれた国の文字はよくできているな」


ガインに漢字のことを聞かれて説明しているマーギン。


「覚えるのは大変だけど、ぱっと見ただけで意味が分かるという点では優れてるらしいよ」


「うむ。これは暗号にも使えるな」


と、ガインは軍の作戦書類とかに使うつもりらしく、マーギンにしばらく漢字について教えてもらうのであった。


◆◆◆


そういや、ガインに漢字とか教えたことがあったな。それでパスワードのヒントにマナを押せと儀式に組み込んだのか。なんて分かりにくいヒントを残すんだよ。


しかし、よく数千年も変わらずに残ったものだ……


俺の本名をパスワードにしたのがガインだとすると合点がいく。ミスティが先に目覚めてたら、パスワードが変わってて開けられなかったんじゃないのか? と疑問に思いつつ、金庫の中身を確かめねばと思う。ミスティの指輪が入っていたなら、あの壊れた石像が本物かもしれない。指輪がなければあの石像は偽物の可能性が高くなる。


「マーギン、開けないの?」


「カタリーナ」


「なに?」


「ありがとう。俺だけなら絶対に開けられなかったわ」


「うん♪」


マーギンは金庫の取っ手を持ちながらカタリーナにお礼を言った。


ふーっ。


マーギンは大きく深呼吸をした。


金庫を開けるのに勇気がいる。真実を確かめたいのと、知らないほうが良かったと後悔する自分の未来が見える。


「ローズは金庫が開いたことを知っているのか?」


「知ってるよ」


「もう中身は見たか?」


「ううん。パスワードを入力しただけで、扉は開けてないよ」


「そうか。なら、ローズが戻るのを待とうか」


「どうして?」


「ここまで付き合わせて、先に開けるのもなんだろ? それに王妃様も知ってるのか?」


「うん」


「そうか。なら、王妃様とローズにも立ち会ってもらおうか。みんな何が入ってるか気になってるだろ?」


「でも、魔法の師匠は他の人に見られたくないんじゃない? マーギンが見て、みんなに見せていいと思ったものだけ見せた方がいいと思う。だから、お母様もパスワードが分かっても、開けないようにと言ってたから」


そうか。ミスティが何を入れてるか分からんからな。人様に見せてはいけないものとか入ってるかもしれん。


「分かった。じゃ、先に開けるわ」


「じゃ、カウントダウンしてあげる。さんっ、にー、いちっ、ゼロっ。オープン!」


カタリーナのオープンの掛け声に合わせて、マーギンは扉を開けたのであった。





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― 新着の感想 ―
怪獣ジラース…しぶといな?(*・ω・) 混乱やら動揺やらしてる時にちゃんと礼が言えるマーギン偉い。
ちょうどいいトコでひっぱるな〜w 中身が気になるぞ〜〜
マーギンは責任とってカタリーナ娶らなきゃ!! ここで間話は殺生ですw
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