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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、11月末同時発売予定】  作者: しゅーまつ


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また仲間が増える

「マーギン、いつまで遊んでるんだ? 俺もそんなに暇ってわけじゃないんだぞ」


宿の部屋でロドリゲスにそう言われる。確かにそうなんだよ。今回の旅は王妃のためのものではないのだ。


「明日にはナムの村経由でミャウ族の集落に向かう。王妃様は大隊長がいるから大丈夫だろ」


「そうか。ならいいけどな」


「大隊長に予定を伝えに行ってくるよ」


と、王妃の部屋の前で護衛をしている大隊長の元へ。


「交代してくれるのか?」


「違いますよ。明日からの予定の話。俺とロドリゲスは先住民の集落に用があるんです。今回の目的はそれなんですよ。なので、明日からは別行動ですよ、と伝えに来たんです」


「そうか。王妃様も何も告げずに出てこられたようだから、ここらが潮時だろうな」


「大隊長も大変ですね。では……」


と、去ろうとすると、カチャッと扉が開いた。


「マーギンさん、私のわがままに付き合って下さってありがとうございました」


と、王妃にこちらの声が聞こえていたようで、挨拶に出てきてくれたみたいだ。


「こちらこそ。素敵な水着姿を拝見させていただき、ご馳走様でした」


と、変な返しをするマーギン。すると、王妃はふふふと笑ってから、真顔に戻る。


「もしお嫌ならお断りしていただいて結構です」


「何をですか?」


「ミャウ族の元に向かわれるのに、同行させていただけませんでしょうか」


は?


「どどど、どうしてですか?」


まだ付いて来るのかよ? と言いかけるマーギン。


「そうですわね。きちんとお話した方が宜しいですわね。スターム、ボルティアも呼んできてください。ロドリゲスさんもご一緒に」


と、いうことで、王妃の部屋に全員集合した。



「マーギンさん、今回の目的は先住民と王国のつながりを強化したいと思い、マーギンさんに付いて参りました。本来であれば、マーギンさんを巻き込むのはご迷惑な話と分かっておりますが、架け橋になってくださる方がいたほうがスムーズに話が進むと思ったのです」


「なぜ急につながりを持たれるんですか?」


「これまでも機があればとは思っておりましたが、チャンスがなかったのですよ。このままでも問題がないのかもしれませんが、ハンナリー商会が先住民達と取引を始めたので、他の商人達も先住民と取り引きを持ち掛けるようになるでしょう。王都からの人の流れも増えるでしょうし、揉めごとが起こる可能性が高いのです」


「それは自分も心配してましたので、他の商人と取り引きしないように伝えてあります」


「商人は海千山千、純朴な先住民は簡単に騙されますわ。こじれてから話をするより、先に話をしておきたいのです。別に先住民達を国に取り込もうとしているのではありません。こちらは友好を望むと直接お伝えしたいのです」


そういうことか。


「ここから結構な距離がありますけど、王妃様が移動するには無理があると思うんです」


「カタリーナはどうやって移動してましたの?」


転移魔法以外だと、おんぶしてホバー移動や、プロテクションスライダーとか言えない。それにトロッコでヤバかったこととか……


「は、走ってとかです」


と、マーギンはフクロウのように顔を背けて返事をする。


「プロテクション階段で空から滑ったと伺いましたけど?」


げ、バレてる。


危ないんですよ、と言いかけて、カタリーナをそんな危ない移動をさせたのかと突っ込まれても困るしなぁ。


「怖いかもしれませんよ?」


「大丈夫ですわ。スタームもおりますし」


そうか、王妃の護衛は大隊長だ。王妃を後ろから支える役は大隊長にしてもらうか。それからプロテクションスライダーを水平にして、半筒状にしたらホバー移動しても危なくないかもしれん。多分……


「分かりました。明日、マーロックの船でナムの集落の港に行き、そこからミャウ族の集落を目指します」


「ありがとうございます。ボルティアは同行しますか? タイベの領主として、先住民の長とお会いしておいた方がいいとは思いますけど」


「も、もちろんでございます」


ここで嫌とは言えないわな。


「マーギン、いいのか?」


ロドリゲスが俺の秘密のことがバレるぞと言いたげだ。


「王妃様と大隊長は知ってる。領主様にもバレても問題ないかな」


「お前がいいならいいけどな」


「マーギンくん、なんの話かね?」


エドモンドはなんの話か分からない。


「別に気にしないでください。そのうち分かるかもしれませんし」


と、詳しくは説明しなかった。


翌日、


「船でナムの集落に向かいます」


「マーギン、王妃様達もナムに行くの?」


と、シシリーが聞いてくる。


「そうなった。そのあと、ミャウ族のところにもな」


「えっ、大丈夫なの?」


「まぁ、しょうがない」


シシリーに王妃が懸念していることと、友好を望んでいることを先住民に直接伝えに行くことを話す。


「そうなのね。じゃあ、私も付いていってあげる」


「なんで?」


「貴人が女性のお付きなしなんて、大変じゃない。もし、女性にしか分からない問題が起きたときに、マーギンが対応できるの?」


「……無理だな」


「でしょ?」


「エルラも行くなら俺も付いてってやる。護衛役が足りなくなるだろ」


「心配症ね」


と、シシリーはマーロックに微笑んだのであった。



ナムの港に到着すると、


「マーギンさん、サメのヒレが溜まってるんですけど」


そういや、フカヒレにするから干しといてと頼んでたの忘れてた。すでに100匹分ぐらいあるらしい。いくらぐらいの価値があるか分からんな。さて、いくら払おうか。


「いくら払おうね?」


「タダでいいですよ。すり身にする魔道具とかいただいてますし」


というわけにもいかないので、10万G払っておく。


「それ何に使うんだ?」


と、マーロックは不思議そうだ。


「戻してからスープで煮ると高級食材になるらしい」


「らしい?」


「俺も食ったことないんだよね」


フカヒレは高級品というのは知ってる。が、食べたことはないのだ。


そんなもんが欲しいなら、俺達もとっておくぞと言ってくれた。


歩きがてら、ゴイル達のところへ向かうが、王妃は歩き慣れてないから辛そうだな。


「デーエ夫人。ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、箱に乗ります?」


「箱に乗る?」


マーギンは前に作ったトロッコを出し、底にマットを敷く。


「ここに乗ってください。大隊長が引っ張ってくれますので」


自分で引っ張るとは言わないマーギン。


王妃はよいしょと箱に乗り込んで座る。


《スリップ!》


「はい、大隊長引っ張って」


「お前なぁ」


「なんの抵抗もないから大丈夫。俺は横にズレないようにしてるから。ロドは反対側に付いて」


こうして王妃をドナドナしていく。エドモンドもだんだんと辛そうな顔をしているが、王妃と同乗する勇気はないだろうから歩いてくれたまへ。


「マーギン来たか」


と、ゴイルがやってきた。誰かが知らせに行ってくれたのだろう。


「ゴイル、長老のところに案内してもらえるかな? ちょっと話があるんだよ」


「そりゃいいけどよ、今日はメンツが違うな。そっちのご夫人はケガでもしたのか?」


「歩き慣れてないから馬車がわりだよ。あとでちゃんとみんな紹介するよ」


と、伝えて、長老の家に向かった。



「長老様、お久しぶりです。突然申し訳ありません」


「よくぞおいでくださいました」


「今日はご紹介したい方々をお連れしました。こちらはシュベタイン王国の王妃様です」


「オルヒデーエと申します。初めまして長老様」


長老は王妃だと聞かされ、くわっと目を見開き、立ち上がろうとする。


「大丈夫、大丈夫。そのままでいいですよ」


と、マーギンが勝手に許可を出す。


「足が悪く、申し訳ございません」


「お気になさらないで下さい。あと、この者がタイベの領主、エドモンド・ボルティアと護衛のスターム・ケルニーです。ロドリゲスさん達はマーギンさんがご紹介くださいな」


「こちらはロドリゲス、王都ハンター組合の組合長です。マーロックとシシリーはご存じですよね」


「皆様、このようなところに、ようこそおいでくださいました」


と、挨拶が済んだあと、王妃は王国は友好を望んでいることを伝える。


「誠にありがたい話でございます。ゴイル、きちんともてなしを頼むぞ」


「はい、長老様」


どうやら、長老は体調が良くないようなので、早めにお暇した。



「お前、王妃様を連れてくるとか何考えてんだよ。ありえないだろ普通」


ゴイルが目を丸くしながらマーギンと話す。


「だよね。俺もそう思う」


でも、俺のせいではない。


「今日、泊まるんだろ? うちみたいなところしかねぇけど、どうするつもりだ?」


そう、困るのが宿なんだよな。


「王妃様、今夜の宿泊はゴイルの家でいいですか?」


「カタリーナはどうしてましたの?」


「いつも俺のテントですね」


「では、私もテントで宜しいですわ。いきなり来て、泊めていただくのも申し訳ありませんし」


「大隊長、テント持ってきてる?」


「持ってるように見えるか?」


ですよねー。


しょうがない。小屋を作るか。


「領主様は泊めてもらいます?」


「いや、私も遠慮しておこう」


ゴイルは宴会の用意をしてくれるようなので、前に作った東屋の方へ移動。


「テントが人数分ないので、小屋を作ります。これで我慢してくださいね」


小屋といっても、屋根付きの押し入れみたいなものだ。囚人と変わらんな。


王妃とシシリーの小屋は広めに。男は寝れたらいいか。


マーギンがモクモクと小屋を作る間に王妃はシシリーと何やら話をしていた。仲良くしてくれて何よりだ。


小屋が完成するころ、マーイが呼びにきてくれた。


「こんにちは王妃様、領主様と皆様。ゴイルの妹マーイです。ようこそナムの集落へ。お食事の用意ができましたので、ご案内します」


「おー、お前、ちゃんとできるんだな」


「そりゃあこれぐらいわね。あとで、下に敷くものとかタオルとか持ってくるね。うちに泊まればいいのに」


「こういう体験もされたいみたいだから大丈夫だ」


移動しながらマーイと話す。


「明日からどうすんの?」


「ミャウ族の集落に行くぞ」


「全員で?」


「そうだよ」


「じゃあ、私も行こうっと」


「は?」


「ミャウ族から醤油を分けて欲しいって言われてるの。取りに来るか持って行くかまだ決めてなかったんだよね。マーギンがいるなら安心だし、ハナコに運んでもらうよ」


「いや、俺達は……」


「私、ミャウ族のところに行ってみたかったんだよね。楽しみだねマーギン」


と、マーイに微笑まれたマーギンは、そうだねとしか答えることができなかったのであった。




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― 新着の感想 ―
この世界の女性は並べて大概に推しが強い(*・ω・) この調子だと水着温泉回に行きそう…(チラ
マーギンがそうだね、と頷くだけの機械に………
王様「・・・アレ?もしかして、わりと政務止まるんじゃないかこれ?」
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