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ご満悦

翌日、ギコンギコンと嫌な音がする馬車で領都の孤児院へ。


「あー、マーギンが来たっ!」


マーギンを見付けて大きな声をあげる孤児達。


「また違う人と来たの?」


「そうだよ」


「お嫁さん?」 


その言葉に王妃ご満悦。


「この人はカタリーナお姉ちゃんのお母さんだよ」


「えーっ、そうなの? きれーい」


「ありがとう。いい子達ねぇ」


お前達、素晴らしい対応だ。


「マーギン……領主様、ようこそお越し下さいました。えっと……」


「シシリー、この方は王妃様だ。今回はお忍び旅行だから、デーエ夫人と呼んでくれ」


「失礼いたしました。ハンナリー商会のタイベ支店を任されております、エルラと申します」


膝をついて頭を下げ、挨拶をするシシリー。


「オルヒデーエです。突然お邪魔して申し訳ありません。私用で参りましたので、顔を上げて下さいな」


「はい。ではお言葉に甘えさせていただきます」


「お名前はシシリー・エルラさんで宜しくて?」


「いえ、シシリーは王都で名乗っていた名前です。今は昔の名前であるエルラと呼ばれておりますが、どちらでも構いません」


「あ、シシリー、ごめん。エルラって呼んだ方が良かったか?」


「ふふ、マーギンはシシリーの方が呼びやすいでしょ? そのままでいいわよ」


孤児達がマーロックを呼びにいってくれ、シシリーは孤児院を見学されますか? と王妃と領主を案内する。


「これはなにを作っているのかしら?」


「練り物だよ。お姉ちゃん食べてみる?」


素晴らしい、素晴らしいよお前達。


決して王妃をオバサン呼ばわりしない孤児達に感動するマーギン。恐らくシシリーがそうしつけているのだろう。全ての女性をお姉さんと呼ぶようにと。


子供達が揚げたてアツアツの練り物の天ぷらを王妃に差し出す。


「美味しいですわ。シシリーさん、子供達はご飯を自分で作っているのですか?」


「いえ、これは売り物です。練り物の天ぷら、蚊取り線香などを作って売り、それでこの孤児達の生活費をまかなっているのです」


「領からの支援はありませんの?」


エドモンドピンチ。


「デーエ夫人、ここは領主様から譲り受けたのですよ。孤児院出身の者たちが協力して自己運営している孤児院です。与えるだけではなく、こうして自分達で稼げる力を身に付けてもらうための孤児院なんですよ」


「デーエ夫人、マーギンの説明通りです。自分の力で生きていくための訓練を兼ねております」


「こんな小さいうちから……」


「お前ら、これするの嫌か?」


「ううん、みんな美味しいって買ってくれるから楽しいよ」


子ども達は元気いっぱいにそう答えた。


「そう、偉いわねあなた達」 


王妃はそう言って、近くにいた子供達の頭を撫でた。


「エヘヘ。お母さんってこんな感じなのかな」


その言葉を聞いた王妃の目からポロリと涙がこぼれる。


「そうね。こんな感じなのかもしれないわね」


今日、パンジャに移動するつもりだったが、王妃の希望で、孤児院で1日過ごすことになってしまった。


子供達に混じって、蚊取り線香を作る王妃。


「あなた達、上手ねぇ」


「初めはいっぱい失敗したけど、マーギンが気にすんなって言ってくれたんだ。失敗したやつはここで使えばいいって」


「そうなの……」


晩飯は手持ちのマギュウの塊を炙って切り分けていく。ソースはバター醤油。毎日魚か豚肉だろうからな。


「うまーいっ!」


「本当に美味しいですわね」


昨日の領主邸の貴族飯より嬉しそうに食べる王妃。


「これもあなた達が作ったの?」


主食は米で、子供達が小さな手でおにぎりを握ったようだ。


「うん。この方が食べやすいんだ」


丸いおにぎりを上手く作ってある。


「これ、もっと作ってくれるか?」


「いいよ。なんか作ってくれんの?」


「肉巻きおにぎりにしてやるよ」


薄切り肉でおにぎりを巻いて、焼肉のタレで焼いて完成。


「ほらよ。まだ食えるやつは食え」


これも好評。子供達にはバター醤油より焼肉のタレ味の方がいいみたいだな。それと大隊長。一口でバクバクいくなよ。


「これ、豚肉でもできる?」


「できるぞ。豚肉の方が良かったか?」


「ううん、売るの。タレの作り方教えて」


本当にたくましくなったな。


「シシリー、良かったな。着々と商人が育ってるぞ」


「そうね」


と、シシリーはふふふと笑った。



翌日、


「デーエ夫人。イルサンに寄ります?」


「何か珍しいものはありまして?」


「カレーが旨いです。その先のパンジャでも食べれますけど」


「では、パンジャに行きましょうか」


「マーギン、デーエ夫人のお付の方はいないのかしら?」


「いないよ」


「そう。なら私もパンジャに行くわ。マーロックの船で行くわよね?」


「そうだね。馬車より早いしな」


と、話していると、エドモンドがお気を付けてと頭を下げた。


「ボルティアは外せない用事がありまして?」


「い、いえ。大丈夫です」


「では、一緒に参りましょう」


「……はい、喜んでお供させていただきます」


こうしてエドモンドも仲間に加わった。脳内に音楽が流れたけど、気にしないでおこう。



「マーロック、パンジャまで頼む」


と、アニカディア号でパンジャまで。


「こんなに早く来れるのだな」


と、領主は驚いていた。


「では、ショーにご案内致します」


と、シシリーがアテンドしてくれる。俺はこの前体験したから別にいいんだけど。


迫力のある先住民達のファイヤーショーを喜んでくれた王妃。エドモンドも素晴らしいと絶賛していた。


翌日はビーチで日光浴だ。泳ぐにはやや水温が低い。


シシリーがベッドや日傘などを全て手配してくれる。


「しかし、ここは暑っちぃな」


ロドリゲスが船の中で買った派手なシャツを着る。その風貌と相まって、チンピラにしか見えない。


「ロド、離れとけよ」


「なんでだよ?」


「仲間だと思われるだろうが」


タイベまでわざわざ来てくれたのに酷いマーギン。


そこへシシリーのアテンドで王妃登場。カタリーナは上と歳が離れた一番下の子供だと聞いたが、そんな子供がいるとは思えない王妃のプロポーション。太陽の下で見ると、改めてそう思う。そして大隊長とエドモンドは赤くなって慌てて目を逸らした。それを見た王妃ご満悦。


シシリーは王妃より目立たぬように、ぐっと地味めの水着にしている。さすがだ。


「いい歳して恥ずかしいですわ」


「とてもお似合いです。もう少し早いシーズンだと泳げましたね」


「でも泳げませんから、問題ないですわ」


大きなうちわを持った男性も配備、周りを固めるのは護衛の大隊長、ゴツいマーロックとチンピラロドリゲス。秘書のようなエドモンド。これ、王妃というより、極妻みたいだな。


「マーギンさん、お隣へどうぞ」


そして俺は若いツバメみたいに見られているのだろうか?


「俺はちょっと、そこの店で商品説明をしてきます」


「商品説明?」


「えぇ、ハンナリー商会が魔道具の貸し出しをするんですよ。シシリー、お前にも説明するから来い」


と、シシリーを連れて海の家へ。


「これが氷を作る魔道具。かき氷用の塊はこっち、ドリンク用の氷はこっちに溜まるようになってる。ドリンク用の氷の大きさはこのダイアルで調整してくれ」


「これ、買ったらいくら?」


「どうだろうね。機械部分は10万Gぐらいでできるんだよ。回路の値段をいくらにするかなぁ。全部で200万Gぐらいにしとく?」


「運賃は別でってことね?」


「そうだね」


「了解、初期費用10万G、月々5万Gで貸し出すわ」


「それは好きにしてくれ。機械代はハンナリー商会に請求がいく。回路代は俺からの祝いだ」


「いいの?」


「かまわんよ。シシリーには何もしてやってないからな」


「マーギンにはすでにたくさんもらってるわよ」


と、微笑んだ。


次はかき氷の機械で手回し式。


「これは10万ぐらいだから購入でもいいと思うぞ」


「これをどうするの?」


「先にシロップを作ろうか」


と、牛乳を練乳にしていく。


「砂糖を掛けるだけでもいいんだけどな、売り物なら珍しい方がいいと思う。で、今回はマンゴーを使うか」


マンゴーを角切りにしたものと、潰して練乳に混ぜたソースを作る。


「ここに氷の塊をセットして、ハンドルを回すと下からかき氷が出てくる」


小鉢をもらって、そこにかき氷を盛ってやる。


「で、さっきのマンゴーソースを掛けて、角切りマンゴーをのせたら完成。味見してみろ」


「わっ、美味しい……」


「だろ? ソースは色々と試してみてくれ。アイデアしだいで何種類もできるからな。砂糖水、黒蜜だけの安いのと、今みたいな高単価で売れるようなバリエーションがあるといいと思う」


「うん、ありがとう。色々試してみるわ」


そして、マンゴーかき氷を王妃はとても喜んでくれたのだった。




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― 新着の感想 ―
王妃の水着登場はやはり三段ぶち抜きやな(*・ω・) じゃーんの時とは水着変わってる気がする… そして生贄の葬列は数が増えてく…
マーギン気を付けないと爆弾マークが沢山になっちゃうゾ☆
やっぱ文才がすごいなー
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