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ポニーの力

プレの集落でも使徒様扱いされるマーギン。山犬達もいるので、祀られるような感じの宴会になる。ポニーは山神の姫、ロブスンとピアンは使徒様の使徒と、ややこしい立ち位置になっている。


「辛いのは大丈夫でしょうか?」


「激辛じゃなければ大丈夫だぞ」


「では、こちらをどうぞ。熱いので気を付けてください」


グツグツと煮えたぎった石焼き鍋に入った赤い溶岩みたいな食べ物。麻婆豆腐みたいな感じだ。レンゲですくってフーフーしながら食べる。豆腐の代わりにサトイモみたいなものが入っていた。


「辛いけど旨いわこれ」


「おー」


マーギンが旨いと言うと、皆がおー、と声を上げる。


「どうした?」


「これは大昔の山が燃えていた頃を表現した料理なのです」


そうか。ここの山は、昔、火山だったからな。溶岩みたいだと思ったのは正解だったのか。


「それで?」


「初めてこの料理を見られた方が躊躇することなく召し上がられたので、皆、驚いたのです」


「そうなんだ。旨いぞこれ」


サトイモから出た粘り気がとろみの代わりをしているのだろう。辛味も複雑で非常に旨い。半熟卵も入ってたらもっといいのに。


酒は火酒と呼ばれるもの。聞いたことのない植物の根を地熱で蒸した物が材料になる酒なのだそうだ。独特の風味と喉が焼けるような強い酒。熱い料理に強い酒。身体から汗が噴き出てくる。この組み合わせはガインが好きそうだな。作り方を教えてもらってお供えしてやろう。


プレの村は辛い食べ物が多く、丸い唐辛子でめっちゃ辛いやつとカエル肉の炒め物とか、辛く味付けした刻み肉を葉っぱで巻いた物などがご馳走のようだ。バネッサが来たら食えるもんないなここ。


ポニーも食べれそうにないので、マーギンの手持ちの飯を食べさせておく。


「使徒様、随分と汗をかかれたようですので、温泉に案内いたしましょうか?」


「行くっ!」


そう、ここには温泉があるのだ。


◆◆◆


「ミスティ、温泉があるぞ」


「そこは熱くて浸かれんぞ」


源泉ってやつか。確かにゴボゴボしていて熱そうだ。


しかし、温泉とくれば入らねばならない。


マーギンは少し離れた所を魔法で掘って湯船を作っていく。そして、そこに水を溜め、源泉を引いてきた。そして湯加減を確かめる。


「おっ、ちょうどいいわ」


マーギンは服を脱いで温泉に浸かる。


「はぁ〜、疲れた身体に温泉はたまらんな」


冷えた炭酸水を指先から出してごくごくの飲んでくつろぐ。


「早く、代わらんか」


と、ちょうどいい湯加減になった風呂にミスティも入りたいようだ。


「なんでだよ。俺はもっとゆっくり浸かってたいんだよ。お前も入りたきゃ入ってくればいいだろうが」


「こっこっ、このドスケベがーーっ!」


一緒に入れと言われて、真っ赤になって怒るミスティ。


「お前みたいなツルペタボディを見てスケベ心なんか出るか。恥ずかしいならタオル巻いて入ってくりゃいいだろうが」


ゴスゴスゴスコスッ。


「痛たたたたたっ。何すんだてめぇっ!」


デリカシーのないマーギンの言葉に怒ったミスティが石を投げてぶつけてくる。


ザブッザブッザブッ。


反撃にお湯を掛けるマーギン。


「なっ、何をするのじゃーーゃ。びしょ濡れになったではないかっ!」


「お前が石を投げてくるからだろうが」


「もうこのまま入る」


結局、上着を脱いで服のまま入ってきたミスティ。


ジーー。


「貴様、何を見ておる?」


「まったくないわけじゃないんだな」


濡れてぺったりと胸に張り付いた服。透けてはいなかったが、その膨らみはミスティにも胸があることをけなげに主張していた。


「死ねっ!」


いらぬことを言ったマーギンはミスティにグーでいかれるのであった。


◆◆◆


「わーっ、ひろーい」


平気でマーギンと風呂にはいるポニーは大きな温泉にはしゃいでいた。


しばらく浸かったあとに、ポニーの頭を洗ってやる。ついでに耳の中も拭いておこう。ロブスンは風呂に入るが、ピアンは嫌そうにした。


「アッシは遠慮するでヤンスよ」


と、逃げようとしたのを見えない手で掴んで洗っておいた。濡れイタチのできあがりだ。


「さ、そろそろ出るぞ」


と、言ったときにポニーの耳がピクピクと動く。


「ガウッガウッ」


そしてキンとギンも吠え出した。しかし、魔物の気配はない。


「ロブスン、戦闘準備だ。チューマンが来てるかもしれん」


急いで服を着て準備をする。


キンとギンは吠え続け、ポニーも耳をピクピクさせているが何も襲って来ない。


「ポニー、何か聞こえているのか?」


「なんか、時々、キーンって耳鳴りみたいな音がするの」


「どっちからだ?」


「んー、よく分かんない。あっ、また鳴った」


「ロブスン、ピアン、何か聞こえたか?」


「いや、分からん」


「アッシも分かんねぇでヤンス」


ポニーだけに聞こえてるのか。キンとギンは何を察知して吠えているのだろう?


「ロブスン、ピアン。ここで待機していてくれ。俺は偵察に出る。ギン、何に吠えているか教えてくれ」


ギンにそう言って、偵察に出るマーギン。


ギンの先導で走って集落の外に出る。その時にピタっとギンが止まり、空に向かって吠える。


「上か?」


ギンの視線の先を追うが、マーギンには何も見えなかった。



「どうだった?」


「何かいたんだろうけど、分からんかった。ギンも途中で吠えるのを止めたからどこかに行ったのかもしれん。気になるのは空に向かって吠えていたことだ」


「空?」


「あぁ。この辺に飛ぶ小型の魔物は出るか?」


「どうだろうな。プレのやつらに聞いてくる」


と、ロブスンが聞きに行ってくれた。


「ガウッ」


その時にギンが外に向かって走り出す。マーギンはそれを追いかけた。石垣の外に出ると、さっきとは反対方向だ。


かなり早いスピードで走るギンとマーギン。そして、前方にチューマンを3匹発見。背中を向けて逃げているようだ。


「逃がさん」


《ウォーターボールっ!》


マーギンは水の玉を飛ばしてチューマンを包んだ。これですぐに死ぬわけではないが、動きを止められる。


「ギン、お前はここで待て。俺が仕留めてくる」


マーギンは妖剣バンパイアを抜いて、水の玉ごとチューマンの頭を貫いたのであった。


「わふっ」


「もう他にはいないか?」


そうギンに聞くと遠くの空を見つめている。


「やはり、空になんかいたんだな。もしかしてチューマンの中に飛べるやつがいるのか?」


「ハッハッハッハッ」


もうギンは警戒態勢を解除して、穏やかな顔でマーギンを見ている。もうここには何もいないということだな。


マーギンはチューマンの死体をアイテムボックスにしまって集落に戻った。



「チューマンが3匹いた」


集まっているプレの人達とロブスンに報告する。


「さっき、山神様が吠えていたのはチューマンだったのか」


「いや、吠えていたのとは反対方向にいた。気になるのはここから離脱しようとしていたことだ」


「なんだと?」


「それにギンがチューマン達が逃げようとしていた方向の空を見つめていた。もしかしたらチューマンの中に空を飛べるやつがいるのかもしれん」


「チューマンが空を飛ぶだと?」


空を飛ぶ敵は脅威だ。壁が役に立たなくなる。


「ま、チューマンほどの大きさと重さで空を飛ぼうと思ったら、相当デカい翼が必要になる。空を飛べるやつがいたとしても小型だろう」


と、マーギンは自分の言ったことで気付く。


「なぁ、ロブスン。前にミャウ族のところにチューマンが出たときに、小型の鳥か虫が飛んでいかなかったか?」


「そう言われてみれば……」


もしかしたら、偵察している仲間がいるのか? そうだとしたら、こちらの戦い方を見て、巣に情報を持ち帰っている可能性が高くなる。


マーギンはここでようやく、チューマンの中に小型で飛べるやつがいることに気が付いた。


「ロブスン、これは仮定の話になるんだが……」


マーギンは今気付いたことを説明していく。


「なるほどな。それなら学習していることの説明がつく。それにさっき出たやつは逃げていってたんだな?」


「だと思うぞ。集落から離れていく方向に走ってたからな」


「チューマンに偵察個体がいるとしたら、マーギンの顔を判別しているんじゃないか?」


「えっ?」


「こいつがいたらヤバい。退避しろと情報伝達をしたのかもしれん。ポニーが聞いた耳鳴りみたいな音はチューマンの声じゃないか?」


もしかしたらモスキート音ってやつか? ワー族は耳も鼻もいい。それでも聞こえない音がポニーに聞こえたということは、もっと高周波の音かもしれん。子供のワー族にしか聞こえないチューマンの声か……


マーギンはチューマン対策にワー族の子供達の力を借りることになるのかもしれないと渋い顔をするのであった。



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― 新着の感想 ―
リッカはそのうちマーギンが泣いて惜しがるボンキュッボンになりますからね!w (なおそのうち樽にもな…(以下封殺
指令チューマン「こいつが幼女と温泉に入る魔人だ退避しろ」
ポニーの力というか若さ・特性かな しかし致命的な状況になる前に判明して良かった チューマンどう考えても自然発生には思えんな 人類の敵生体として作られたデザインイノセントみたい となると誰がどんな思惑で…
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