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年の瀬

「ゴホッゴホッ 母さんっ 死んだらどうすんのよっ」


「それぐらいで死にゃしないよっ。それよりマーギン、あんた貴族の家に行ったんじゃ?」


「あれ?なんで知ってんの?てか家になんて…」 


「そ、そうだっ。私はマーギンが結婚するなんて認めないんだからねっ」


「は?結婚?誰がだ?」


「マーギンのくせにあの美人貴族と結婚するなんて身分違いも甚だしいんだからっ」


「美人貴族ってローズのことか?そんな訳あるかバカっ」


「え?」


「貴族街の図書館で見たいものがあったから頼んで図書館に連れてってもらっただけだ」


「で、でもそんな正装で…」


「俺は庶民の上、異国人だろ?貴族街の図書館に入るにはローズの家の客人扱いにならないと無理だったからしょうがなくこれを着ていっただけだ。誰が好き好んでこんな窮屈な服を着るってんだよ」 


「貴族の家に挨拶に行ったんじゃ…」


「俺はローズの家がどこにあるのかすら知らん。どこでそんな話になってんだよ?」


「だって、父さんと母さんが…」


ギヌロッ


マーギンは女将さんを睨む。


フュー フュー


女将さんは吹けない口笛を拭きながらそっぽを向いた。


「リッカ、俺がローズと結婚するとか誤報だ。相手は貴族だぞ?」


「だってだって…」


「あのなぁ、貴族の結婚てのは家と家の結び付きを強める為にするんだ。惚れた腫れたでするもんじゃない。それにローズの家は建国以来からの名門貴族の一人娘だ。婚約者とかいるに決まってんだろ」


「え?」


「ローズはお客さん、俺は図書館に連れてってもらうために少し割引をした。それだけの関係だ」


「本当に?」


「こんな事で嘘付いてどうすんだよ?」


「だって、ああいう人が好みなんでしょ?」


「そうだな。美人は目の保養になる。是非、色っぽい姿を拝みたいものだ」


バキッ


「すけべっ」


思った事を言ったマーギンはグーでいかれた。


しかし、プンプンと怒るリッカを見て、泣いているよりリッカらしくて良いと思ったのだった。


「マーギン」


「何女将さん?」


「今夜は飯を食べに来ておくれ。洗い物が溜まって仕方がないんだよ」 


マーギンはちらっとリッカを見る。


「晩飯もアイリスだけお留守番させるのはちょっとな…」


「連れておいで」


「そう?なら着替えたら飯食いに行くわ」


ということでマーギンは家に帰って着替えることにしたのであった。




ーハンター組合ー


「あー、疲れたぜ」


「星の導きの皆様お疲れ様でした」


「今年はもう終わりだ。それと年明けも成人の儀が終わるまで休む。依頼があっても受けねーぞ」

 

バネッサは受付にそう答える。


「えーっ、それは困りますよ。牧場から警戒依頼が来てるんですよ」


「まだ警戒の段階だろ?他の奴らに行かせろよ」


「もう交代で出てますよ」


「なら、本当にヤバくなってから依頼してくれ。ずっと出突っ張りで疲れてんだよ」


「もうヤバいですよ」


「嘘つけっ」


バネッサと受付担当がこんなやり取りをしているなか、


「あれ?雪の花の依頼が無くなってる」


シスコが雪の花の依頼書が掲示板から消えてるのに気付いた。


「本当だな、この時期に雪の花が採取出来るわけがないから諦めたんだろう。ずっと張ってあったからな」


「マジかよー。ちえっ、もしかしたら咲いてるかもって探してたのに。1本で10万Gなんてお宝依頼滅多にないのによぉ」


バネッサは密かに雪の花を探していたようだ。


「あ、その依頼は達成されたんです」


「は?誰が依頼を受けた?」


驚くロッカ。


「新規登録の見習いハンターです」


「新規登録していきなり高額依頼達成だと?」


「はい、100本納品したんです」


「と、言うことはえーっと、えーっと、イチジュウヒャクセンマン………………、、 一千万っ!手数料引いても900万も稼いだのかっ?見習いのくせにっ」


バネッサは悔しそうにそこで地団駄を踏む。


受付(リル)、それはどんなやつなんだ?」


「初めは来年成人の儀を受けてから正規ハンターで登録すると言ってたんですけど、雪の花の依頼を見て、見習い登録して受けたんですよ」


「名前は?」


「えーっと、確かアイリスだったかな」


「アイリス!?」


3人は顔を見合わせる。


「一人で来たのか?」


「いえ、保護者だという黒髪の男の人と来ましたよ。お知り合いですか?」


「黒髪の男?」


そして3人は顔を合わせて間違いないと頷いたのであった。




「本当に聞きに行くのかしら?こんな年の瀬に押しかけて、また機嫌悪くしないかしら?」


「そうかもしれん。私ら印象が悪いみたいだからなぁ」


「だったら、年明けて落ち着いてから行きましょう」


「気にはなるがそうすっか」


星の導きの3人は仕事納めしようかと繁華街の方へ足を進めたのであった。




ーリッカの食堂ー


アイリスがマーギンの隣に座っているのが気に食わないが、顔を見せてくれないよりマシと思い、引きつった笑顔で接客するリッカ。


「へぇ、あんたハンターになるのかい。とても戦えそうには見えないけどね。採取専門でやるつもりかい?」


女将さんもリッカが爆発しないように客をさばきながらこちらの会話に加わってくる。


「いえ、まだどんなハンターになれるかわかりませんが、人の役に立てるハンターになりたいと思ってます」


「そうなんだふーん。頑張ってね」


棒読みでそう言うリッカ。


「女将さん、まぁ、なんとかなると思うよ。才能はありそうだからすぐに死なないようにはしてやるつもり」


「他のハンターじゃなく、あんたが指導してんのかい?もしかして魔法使いにするんじゃ…」


「採取專門でもソロじゃ厳しいだろうから、どこかのパーティーに補助役として誘って貰えるんじゃないかと思ってんだよ」


「ド新人を入れてくれるパーティーなんてあるかね?」


「そこはほら、生活魔法を駆使すりゃ便利屋扱いしてくれんだよ」


「まさか魔法書を買わせたのかい?」 


「アイリスは未成年なのに立派な借金持ちだ。頑張って稼げよ」


「呆れた… いくらの借金になったんだい?」


「に、200万Gです…」


200万と聞いてゲッと言うリッカ。


「あっ、あんた、その歳でそんな借金背負って返せんの?返せなかったらマーギンに娼館に売り飛ばされるかもしれないのよっ」


「さ、3万でした…」


「何が?」


「娼館での私の買取価格です…」


「マーギンっ!あんたこの娘を売ろうとしたとか最低っ!!!」


ビタンっ


「ちっ、違うわっ。ババぁが勝手に値段を付けたんだよっ。こいつの着替えがないから貰いに行っただけだ」


「そうなの?なら初めからそう言いなさいよ」


「お前が勝手に勘違いしたんだろうが」


マーギンとリッカはギャアギャア言い合う。その横で女将さんが、


「娼館にあんたの体型にあう服なんてあったのかい?」


「な、なかったです」


「だろうね」


そりゃそうだろと思う女将さん。


「女将さんの体型に合う服も無さそうだったけどな」


バキッ


またいらぬ事を言うマーギン。


「で、服はどうしたんだい?今ちゃんとしている服を着てるけどさ」


「マーギンさんに買ってもらいました…」


「えっ?」


マーギンに服を買ってもらったと聞いて目が点になるリッカ。


「あんたが買ってやったのかい?」


「こいつ、荷物も金も盗られたんだからしょうがないだろ?服を洗ってやると言っても嫌がるしよ」


「あっ、当たり前でしょっ。女の子がマーギンに服を洗われるなんて嫌に決まってるじゃないっ。脱いだ服を見ようとか変態よ変態っ」


誰が変態だ。


「あのなぁ… 手で洗う訳ないだろ。俺は衣服洗浄魔法ってのも使えるんだよ。まぁ、それでも着替えは必要だから買いに行ったんだよ。しかし、女物の服って高ぇのな」


「そうさね、女物は結構するんだよ」


「数買ったのもあるんだけどさ、おまけしてくれて17万も払ったんだぜ」


17万!?


驚くリッカ。


「マーギン、あんたどこで服買ったんだい?」


「店とかわかんないからシシリーに付き合ってもらったんだよ。繁華街の店だったけど高額な服も置いているらしくてね」


「そういうことかい」


「そういうことってどういうこと?」


「シシリーっていや、タバサと並んで人気の遊女だった人だろ?」


「そうそう。もう現役引退してババァの手伝いやってるよ。ババァが死んだら店を継ぐんじゃないかな」


「選んだ服は見てたのかい?」


「いや、聞かれてもわかんないから外で待ってたよ」


「あんたそれ、シシリーの服も買わされたんだよ」


「えっ?」


「普段着だけでそんなにするもんかね。ドレスかなんか一緒に買ったんじゃないのかい?」


「あ、はい。シシリーさんも服を選んでました」


アイリスよ、それを早く言え。


「ったく、シシリーの奴しょうがねぇな。服買った後のクソ高い飯代も払わせたくせに」


「飯はいくらだったんだい?」


「3人で30万」


「キーーーっ 私には髪紐一本も買ってくれたことないのにーーーっ。うちでご飯代も払わないくせにっ。なに1回の食事で30万も払ってんのよっ。お金持ってるならここで使いなさいよっ」


「ちっ、違っ。そんなに金を持ってるわけじゃ…」


「マーギンさん、雪の花で900万稼ぎましたよね?お金持ってるじゃないですか?」


アイリスよ、余計な事を言うでない。


「900万?何よそれっ」


「いっ、いや、たまたまね…」


「そんなに稼いだくせに今日も皿洗いだけで済まそうとしてるのねっ」


赤髪と同化したんじゃないかと思うぐらい真っ赤な顔で怒るリッカ。


「だから違うっ…」


「みなさーーん、本日はここにいるマーギンの奢りです。どんどん注文して食べて飲んでいってくださーーい」


「おおーマジか。あ、あいつ前に暴れたやつか。アイツがいるとラッキーだなおい。リッカちゃん、一番高い料理と酒を持ってきてくれ」


「こっちもだ」 「こっちもーー」


品の良くない客は奢りだと聞くと遠慮なんかしない。ここぞとばかりに高い物を注文し始めた。


「はいよーっ。父さんっ、一番高い酒樽持ってきて、皆に自由に飲んでもらうからーー」


「おいリッカ」


「おー、マーギン。お前気前いいな。うちにある酒樽全部持ってきてやるわ」


厨房でマーギンが成金になったことを聞いてホクホク顔の大将が出て来た。


「大将っ」


大将は本当に店に置いてある酒樽を全部持ってきた。こうなりゃヤケだ。


「大将、もっと持って来いっ」


「これで全部だ」


「ここにもう一つ残ってんだろうが」


マーギンは女将さんの腹をポンポンとした。


ドゴォォっ


女将さんに強烈な一発を喰らったマーギンはその場で気絶し、その後のリッカの店はかつてない程のドンチャン騒ぎになったのであった。





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― 新着の感想 ―
何言っても作者様はこのクソガキ共は可愛いと思って書いてるんですね
理不尽な暴力多すぎてもう見てられない おもしろい要素まみれなのにそれを上回る不快要素が多すぎるわその作品 殴られるのはいいとしてその後のスカッと要素がないからストレスしかたまらない 今までありがとう。
一言余計なこと言わないと死ぬ病気か何かなのだろうかギンさんは!
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