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個別訓練に切り替えていく。

ドライヤーの話が終わった後、カタリーナの話を聞かれる度にドキドキするマーギン。別に怒られる事はなかったが、心臓をキュッと掴まれるような感覚を覚えたのだった。


「マーギンさん、これからも遠慮なくお越し下さいね」


ここで話が終わりのようで、足音のしない執事が高そうなワインを手土産に持って来てくれる。遠慮なくそのワインをもらった後、そそくさと逃げるようにその場を去るマーギンに王妃はクスクスと笑うのであった。



ー夜ー


部屋でカザフ達に日課となっている魔力操作の訓練を行う。


「はい、身体の中心にある魔力を頭に流して、それを右腕に、左腕に」


やり始めた当初はなかなか上手く出来なかったが、今ではスムーズに魔力を全身にくまなく行き渡らせる事が出来るようになっている。


「今度は全身に広げてそのままキープ」


それをしばらく続けた後は、素早く魔力を動かす訓練。


目を瞑らせた3人の手や頭に空気の弾を当てる。当たった瞬間にそこを身体強化させる訓練だ。上手く魔力を集められないと、空気の弾でも痛みはある。


弾が当たった瞬間にその部位を身体強化出来るとそんなに痛くはない。この訓練で一番の反応を示すのはやはりトルク。弾が当たる瞬間というより、当たる前に強化するのだ。これはもはや天性の才能と言っても過言ではない。恐らく何かが飛んでくるのを事前に察知しているとしか思えない。次に上手いのがカザフ。反射神経がかなり良いようだ。タジキは二人と比べるとやや遅いが、これでも十分凄いのだ。


「よし、3人共随分と上達してきたな」


「ほんとか?」


「ああ。凄いぞお前ら。じゃ、次は動体視力の訓練だな」


マーギンはタイベでやったコイントスをやる。勘ではなく見て判断させるのだ。分からなかった時は勘で答えずに、分からないと言わせる。


タイベの時とは比べ物にならないぐらいよく見えるようになって来ている。一番よく見えているのはやはりカザフ。次にトルク、タジキの順番だ。


「よし、次は目に身体強化魔法が掛かるようにしてみろ」


魔力を目に集中させていくと、さっきまでギリギリ見えていたのがスローに見えてくる。マーギンもそれに合わせてコインを速く回していく。これをすると、一番速く回すのに付いてこれるのがタジキ。強化能力が高い証拠だな。


「はい、これで今日は終わり」


「あー、やっと終わった。これめっちゃ疲れるんだよな」


と、カザフがその場でペタッと床にヘタリ込む。


「もっと慣れたらそうでもないぞ。そのうち無意識に出来るようになる。多分この訓練が終わる頃にはそうなってるぞ」


「マジで?」


「と言うより、なってもらわないと困る。しかし、身体を鍛える時には使うなよ。本来は身体が出来てきてから教えるつもりだったやつだからな」


「わかってるって。剣の素振りの時には使ってないぜ」


と、ちゃんと言いつけを守っている3人だった。



翌日から、柔軟と受け身の訓練時間を減らす。これまで午前中みっちりとやっていたのを1時間ぐらいで終わらせて、本格的な訓練にシフトしていくことに。


「バネッサ、こっちに来てくれ」


「なにやるんだ?」


「身体強化を意識して使えるようにする」


「ロッカにやったやつか?」


「そうだ。多分お前もすでに使っていると思う。本気で戦ったりしている時にな。今日からはそれを意識して使えるようにする」


「どうやるんだ?」


「俺がお前に直接身体強化の魔法を流す。お前はそれに集中して感じ取ってくれ」


マーギンはバネッサの後ろに立ち、バネッサの両手首を握る。小柄なバネッサをデカいマーギンが後ろから包み込むような形だ。


「はっ、恥ずかしいだろうがっ」


「うるさい。これぐらいの事で照れんな」


マーギンはまずバネッサの両手に身体強化魔法を流していく。


「何か感じるか?」


「わ、わかんねえっよっ」


と、答えるので強めに流していく。


「これで分かるか?」


「なんか、熱くなってきやがったぜ」


「それが俺が流している魔力だ。今からそれをあちこちに動かしていくからな」


手から身体に、それを丹田に集めていくと、バネッサの身体が熱くなっていく。


「な、なんか変な気分だぜ…」


「喋るな。集中しとけ」


バネッサ自身の魔力がマーギンの魔力に呼応するように集まってくる。それを誘導するように、全身を巡らせて行く。初めは流れの悪かった魔力が次第にスムーズに流れだしたことで、バネッサは自分の身体がどんどん軽くなっていくように感じる。


「なっ、なんだよこれ…」


「だから喋んなって言ってんだろうが」


バネッサは自分の身体が自分のものではなくなっていくようで怖いのか、魔力の流れを止めようとする。


「抵抗すんな。上手くいかなくなるだろうが」


マーギンは抵抗しかけたバネッサに無理矢理ガッと魔力を強めて流す。


「あっ…」


そんな声を出すな。


抵抗を止めたので、そのまましばらく全身にぐるぐると魔力を巡らせた。


「感覚は覚えたか?」


「う、うん…」


子供みたいな返事をするバネッサ。


「魔力を全身に巡らせたまま、クナイを投げてみろ」


バネッサは言われた通りにクナイを投げる。


ビシュッ


今までとはまったく違ったスピードで飛んでいくクナイ。マーギンがエアキャノンで援護したぐらいのスピードで飛んでいき、木の真ん中あたりに刺さった。


「なっ、なんだよこれ…」


「それが身体強化だ。これは魔力も使うし、体力を前借りするようなものだから、調子に乗ってやりすぎると倒れるぞ。お前の魔力量は普通だからいざという時に瞬間的に使えるように訓練しろ」


「シスコとの連携にどう使うんだよ?」


「今のまま連携の訓練をしても、あまり効果がなさそうだから、個別に強化してからやり直す」


「で、私は何をすればいいわけ?」


「シスコはエアキャノンで木の上の葉っぱを撃ち抜く訓練だ。矢で葉っぱを射る代わりに風魔法でやってくれ」


マーギンは手本を見せる。


「シスコが今使っている風魔法だとこんな感じだな」


マーギンは風をブホォーーと吹かせていく。距離のあるところまで風を吹かせ続けるのはかなり魔力を使う。


ざわざわ


「今葉っぱが揺れただろ?ここから出した風があそこまで届いた証拠だ。これはかなり魔力を使うし、高威力で出すのはお前の魔力量だと無理だ。前に説明した竜巻のまっすぐ版みたいなものだな」


「出来ても1〜2回しか使えないってことね」


「そう。だから必要最小限の空気の弾を飛ばす訓練に切り替える。俺が使ってるエアキャノンってやつだな」


マーギンはエアキャノンを葉っぱに向かって撃つ。


ボヒュッ


ガサッ


葉っぱが数枚落ちた。


「風魔法は目に見えないから上手くイメージが湧かないかもしれん。俺がシスコをアシストするから、ちょっとやってみようか」


マーギンはシスコの後ろに立ち、手をピストルのような形で構えさせる。弓師のシスコはこうして狙いを付けさせた方が上手く出来るかもしれないのだ。


マーギンはシスコの手首を持ち、シスコの手からエアキャノンが出るように撃ち続ける。


「感覚はわかるか?」


「えぇ。手から矢が飛んでいくみたいな感じがするわ」


「そのまま自分で撃ってみてくれ」


シスコはボヒュッボヒュッと自分で撃ち出した。


「よし、出来てるぞ。後はコントロールとスピードを上げる事が出来ればバネッサのクナイのアシストが可能になると思う」


シスコにはそのままエアキャノンの射撃をやらせて、バネッサには自分で魔力を全身に流すコントロールの練習をさせておく。


「ちい兄様、サリドンとの訓練は一時停止。今日から土魔法操作を覚えて貰うよ」


「ストーンウォールというやつか?」


「あれを練習するとすぐに魔力が切れるから、もっと小さいのでやる。素早く狙った所に出す練習だね」


オルターネンにはストーンウォールの魔法陣を刻む。自力で覚えて貰うには時間がなさすぎるのだ。


マーギンはポコポコポコと、拳程の高さの土瘤を出すのを見せてから、オルターネンに同じ事をさせる。


うーん、ポコっ


「そう。それをもっと素早く、狙った所に出せるようになって。これからはそれをひたすら練習ね」


「私はどうすれば良いですか?」


「サリドンは走りながら、的にファイアバレットを正確に当てられる練習。壁に自分で目印付けてやってみて」


これもマーギンが実演してみせる。右から走りながら撃ち、撃ったら左から右に走り同じように撃つ。


「こんな感じ。ちゃんと当たるまでやるんだぞ」


ローズとロッカはまだまだハンナリーを捕まえる事が出来ないので継続。デバフは身体強化でレジスト出来るが、ハンナリーのデバフの方が断然強いので良い練習になるだろう。複雑な逃げ方をするハンナリーに直線的な動きをする二人が合格するのは難しいかもしれんな。


「ホープ、ガキ共は見てなくても大丈夫そうか?」


「うむ、横切りも問題なくなってきたから、縦横の連撃をさせている所だ」


イチで構えて、ニで縦斬り、サンで横斬の連撃をするガキ共。ちょいと苦戦しているが、もっと筋力が付いて来たら大丈夫そうだ。


「なら、ホープも次のステップに進もうか」


「よろしく頼む」


ホープは随分とすっきりとした顔をしている。何かあったのだろうか?


「なんか晴々としてんな。良いことがあったのか?」


「あぁ、身軽になったからな。では頼むぞ」


嬉しそうにそう答えたホープにもバネッサにやったように魔力操作を教えていく。バネッサと違って素直に受け入れたので、かなり早くスムーズに出来るようになった。


「ホープ、その魔力を足に集中してダッシュ、俺が手を叩いたらすぐにターンしてこっちへダッシュだ」


「わかった」


その後、ホープがぶっ倒れるまでダッシュ&ターンを繰り返していくのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うら若い少女に体から出た熱いものを浴びせかけて嬌声を上げさせる事案 カザフ達が伝説の勇者になったら 伝説の勇者の伝説に残らない賢者の師匠 になりますねw
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