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閑話休題 姉は勉強する

前話のあらすじ


魔法の習得を頑張ろうと思っています。

「そりゃあ、アレクはアリスさんを、聖女として以上に気に入っているからねえ。」


「何でクリス様がここにいるんですか…?」


 食事が終わった後、アリスの部屋に魔力と使い方にしての講義にかわるがわる人が入っては出ていく。

 2人目が入ってくるくらいにクリス様が入ってきて、それから一緒に講義を聞いているのだ。近くのテーブルに書類を置かれ、それに書き込みや何やら魔法のような光を発しながら作業をしているので、おそらく仕事をしているのだろう。

 

 今はいったん休憩、と言われ用意された茶葉とお湯で紅茶を入れているところだった。


「アリスさんの召還に失敗した場合や聖女になるのを断られた場合、説得が必要な場合を想定していろんな仕事が組まれていたからね。思っていた以上にすんなりアリスさんが聖女様になることを受け入れてくれたから、この先1週間くらいはアリスさんに関わる仕事を任されていた人間は大体暇してるんじゃないかなあ。」


「殿下は?」


 アリスはなんというか、きちんとアレク殿下のことが気になっているらしい。


「今はアレクは陛下代理だからね。片づけなければいけない仕事は山のようにあるんだ。本来なら僕も手伝わないといけないんだけどね。僕が下手に手伝うと後々面倒な事態になりかねないから、正式にアレクが即位するまでは陛下の業務代行はあんまり触らないようにしているんだ。」

 

 姉君からしたら腹ただしい扱いと態度しかとられてないからしっくりこないと思うけど彼は優秀なんだよ、という。まあもっとも表立ってしないだけで今持っている書類はアレクがすべき仕事なんだけどね、と付け加えた。

 僕はもっと優秀と昨日言ってた口で何を言うか。


「アリスさんの表情は僕は読み慣れていないんだけど、二人はうまくいきそうなのかい?」


「どうでしょう、でもアリスも顔のいい男は好きだと思いますよ。」


 性格もよくないと話にはならないが、あの殿下の印象が自分の中でよくなる気がしないのでどういってもとげがある表現しかできなさそうだったのでそこで言葉を切った。


「もってことは、姉君もかい?」


 椅子から立ち上がり、少し顔を近づけてくる。反射的に頬が熱を持つが、すぐにからかっているだけだと心にシャッターを下ろす。

 そしてこれは自分の顔もいいと自覚してやっていることに気づき熱がすっと引く。


 まあ、ここまで整っていれば自覚しない方が難しいんだろうが。


「嫌…いな人はいないでしょう。」


 紅茶に砂糖を入れてアリスに差し出したが気づく気配はない。

 講義の資料を一生懸命見返しているようだ。字も言葉も本来この世界で使われていた言葉とは異なるそうだが、翻訳の魔法をかける段階でかけてもらっているそうだ。

 書類を見て文字だと認識できるまでは訳の分からない記号だったが、文字だと認識した途端読めるようになった。


「アリス、休む時は休まないと持たないよ。」


 名前を呼ばれて我に返ったらしい。


「ありがとうお姉ちゃん、でもできるときに少しでもできるようになったほうが、この世界のためにもなると思って。」


 屈託ない笑顔でそういう姿は聖女という言葉のイメージそのままだ。

 アリスは言い渡された聖女として求められる業務というのが思ったより大変そうだったこともあり、いやもちろん楽だと思っているわけではなかっただろうが、休み時間のたびに言葉少なになっている。いやだからというよりも徐々に没頭しているという様子であり、底力を感じる。


「アリスさんが聖女としてアレクとくっつくなら、君が僕とくっつくととても丸く収まると思うんだけどどうかな?」


 また笑顔で昨日と同じような提案をしてきた。

 はじめこそどぎまぎしていたが、何度か繰り返すと一瞬で冷静になれるようになった。


「決まった殿方もいませんし、殿方にからかわれることも慣れてません。」


 また顔を傍に寄せてきていたクリス様に、持っていたお盆を押し付けて距離を取る。


「本気になったらいいの?」


「本気なんですか?」


 じろりとにらんで聞き返す。


「今のところは3割くらいかな。」


 悪びれもしない笑顔に少し腹が立つ。3割というのもリップサービスが3割だろう。


 一目惚れされるような容姿も魅力もないのは分かってはあるし想像もしていたけど、いざはっきりするとそれはそれで少し寂しい気分にもなる。まあこんな美形に婚姻を提案された事実だけで満足しておくべきか。


「なるほど一理ありますね。私は元の世界に帰る予定ですので、クリス様には利がないかと。」


「そうしたら君が忘れられないから一生再婚しないと触れ回るから大丈夫。」


 クリス様が私の髪の毛を断りもなく触りながら言う。

 こんな手入れもしておらず、さして長くもない髪を触って何が楽しいのだろうか。

 ずっと触っているので、後ろで一つに束ねた。

 おもちゃを取られた子供のような残念そうな顔をしている。


 これが同級生との酒の席なら、一発といわず数発殴ってやるのだが。



 また扉をノックする音が聞こえる。おそらく次の授業の時間なのだろう。

ご覧いただきありがとうございました。


次回はあす更新です。よろしくお願いいたします。

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