表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/68

聖女の姉は真相を知りたい

少し長いので分けました。最終話 前編です。

最終話 後編は明日更新します。

「今回の黒幕をそそのかしたのは誰か、ということです。」


 ミシェル嬢が言った後、場は静まり返る。


 こういう言い方をするということは、今回の一連の流れはクリス様が仕組んだということか…?


「待ってくれ、そこまで言うと語弊がある。」


「そうですね、クリス様はもっと早い段階で、姉君に危険が及ぶ手前でことを治めるつもりだったのでしょう。謀反の意思もなければ、罪にもならない。ある程度は陛下に知らせたうえでの行動だったのでしょうね。ですが、姉君にとっては自分を危険にさらした相手である事実は変えられませんし、結果として囮にさせたようなものですよね。」


「そんなつもりはーいや、結果から言うとそうなるか。」


「そうですとも。」


 ミシェル嬢は立ち上がる。


「では、私はもう侯爵令嬢でもない、ただの王宮勤めの魔法使いです。後の話はお二人でどうぞ。姉君は、よければまた元の世界に帰られる前にお茶に付き合っていただければ嬉しいです。ーそれでは。」


 部屋から出ていきかけて、ミシェル嬢は振り返った。


「ちなみにクリス様。お互いの了解なしに相手の行動を気にかけ監視するのは、向こうの世界でストーカーというらしいですよ。アレク殿下は正直に聖女様に告白したそうです。クリス様はどうでしょうね。」


「ーおい!」


 クリス様は聞いたことのない声の荒げ方をした後、こちらを見てしまったという顔をして、両手で顔を隠す。


 しばし沈黙が流れ、ミシェル嬢の去っていく足音だけが残る。

 それも聞こえなくなってしばらくたったころ、ようやくクリス様が口を開いた。


「一つずつ、告白しよう…。」


「なんとなく察したのでもういいですけど。ーいや、違いますね。」


 私は続ける。


「お互い、私たちは必要なことお必要でないこともお互いに知らせてきていないと思うんです。なのにわかっているつもりになって話をするから、うまくいかない。まずは、しっかり話をしたいです。クリス様も私のことを知っているといっても、表面的なことだけでしょう?

 そうですね、例えばー言葉のやり取りを聞いていたところで、大まかな人となりがわかっても、その心の内まで理解できるかどうかは別の話ですよね。」


「ちなみに、君を元の世界から見ていたことは、いつから気づいていたんだい?」


 言葉にされると、やはり抵抗感がある。でも思ったほど拒否感が出てこないのは、きっと私が彼の存在を心に入れてしまっているのだろう。ため息をついて答えた。


「もしかしてとはアレク殿下がアリスの様子を時々見ていた、というのを聞いてからですね。そのときはさすがに自意識過剰かなと思ってましたが。

 ただ、クリス様が私に執着しているのが本当だと思ったあたりから、そうかもなとは思っていました。

 私自身、第一印象で人に興味をもたれるタイプではないのは重々承知していますので。まあ、それ以外に興味を持つきっかけはあったのかなと。」


「なかなか自己評価が低いところから気づいたんだね。」


「自分を客観的に評価できていると言ってください。」


「ミシェル嬢がはっきり言わなかったのは、彼女も確証を持っていなかったからだろうね。異世界を”見る”魔法の使い方は聞いたことはあっても、彼女の前で使ったことはなかったから。」


 思い返せば、はじめこの国に到着したとき、言語がわからなかった。

 翻訳できる魔法をかけてもらう前に、クリス様の言っている言葉は理解できたのだ。

 

 つまり、彼は私たちの元の世界を話せるということだ。


「私たちの元の世界の言語は、私たちの国でしか使われていません。人口比で言えば、日常生活で2%にも満たない人間しか使わない言語を習得する理由なんてあまり考えられなかったですし。

 はじめはアリスにクリス様も興味を持っていたと思っていましたが、それにしてはアリスに近寄る頻度も少ないですし、そんなに興味があるのならクリス様が王位を継いだ方がいろいろと早いと思うとなんだか合致しなくて。」


「…はは。なるほど。抱きしめてもいいかい?」


 返事を待たずに抱き着いてくる。


「…退院してからにしてください。」


「なんでもお預けが好きだね。「あとで」のつづきもまだじゃないか。」


 私が更に赤くなって困るのを楽しんでいるようだ。

 自らの告白に私が本気で怒っていないことで、調子に乗っているらしい。

 

 多少は怒ったように見せたほうがよかったのかなと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ