第九十九話 奇襲
家に帰ったロキは、トトニスの真意をレンに伝えた。
それを聞いたレンは自分は愚かだったと落胆した。
そして、トトニスへの嫉妬をロキに打ち明けた事が急に恥ずかしくなった。
それは表情でロキにも分かった。
「ま、まあ……あれだ。恥ずかしながら俺も、トトニス俺に気があるんじゃないかなー……なんて思ってたよ。そ、そういう意味では俺が一番愚かだった……かな。しかも他に聞く人いないからってそれをレンに聞こうとしてたし……ごめん」
「……ロキ……ばか……」
「うっ……ごめん」
「……二回言った」
「な、なんだよそれ!」
「ふふっ!」
「ははっ!」
レンは改めて自分がニアである事を認識し、そしてトトニスに理由を告げず、お礼だけを言おうと考えていた。そう、このジュヴェルビークで感情が芽生える事は決して恐ろしい事では無く、生き方を選択できるという事なのだ。
しかしそんな矢先、事件は起きた。
――深夜……
ウウウーーーーーーーー
「わっ! サイレン!?」
「レン!」
サイレンで起きたロキがレンの部屋に走ってきた。
「だ、大丈夫。それより、カルマたち……」
「ああ……」
――その頃、防衛班東部隊
「カルマ! おかしい……、レーダーは敵の反応を捕らえているが、姿が無い」
「ああ、奇襲の可能性が高い」
時を同じく、無線で西部隊から連絡が入った。
「カルマ! クリオネだ。敵の姿が無い……。そっちは?」
「同じくだ。だが、反応はある。警戒態勢を解くな」
「了解」
その時だった。
「カ、カルマ! クリオネさん! こちら中央司令部! 町の上空に転移反応を観測! ま、まずいですっ! 侵入されます!!」
「バカな! そんなはずは……! ちっ! 直ぐに向かう!」
司令部からの連絡を受け、カルマは町の中心へ向かった。
「何処だ! 何処にいる!!」
しかしそれは罠だった。
「こちら東部隊! カルマ! さっきのは罠だ! 敵さんのお出ましだ! こっちは俺が引き受けた! お前は西へ行……――」
通信が途中で途切れる……。
知らせを聞いたカルマは西へ向かい、クリオネと合流したのち敵を退けた。
――
その後、東部隊に合流すると、既に敵の気配は無かった。こちらのも敵を退けたようだ。
「……カルマ、お疲れさん……!」
声を掛けたのは、第一防衛班長“ノイ・クラップハンド”。先日、バジリスクが現れた際にはカルマと共に行動しており不在だった彼だが、実は戦闘能力においてクリオネをも上回る程の実力者だ。
「ノイ……、お前……」
血だまりを辿った先……、有るはずの左腕が……無い。
「まあ、そんな顔をするな。変な恨みは隙になる。明るく行こうぜ!」
深手を負いながらも、カルマに怒るなと諭すノイ。
「……斑鳩と時朗……二人掛かりか」
ノイの左腕を奪ったのは敵の部隊長、一番隊の美鏡斑鳩、六番隊の紫夜雨時朗。
いずれも剣の達人クラスの二人だ。
わずかに残る敵の匂いで相手を推測するカルマ。
「あ、ああ、……すまん、油断した」
「ノイ……家へ来い。治療する」
その後、町から敵の反応が完全になくなり、戦闘配備は解かれた。
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