第八十九話 ジュヴェルビークの長
ロキたちがジュヴェルビークにやってきて二日目。高熱で倒れたレンは回復したものの、原因は謎のままだった。
その後、マルクスとクリオネの計らいでジュヴェルビークの住民たちに二人を紹介する集会が催され、二人は仲間として受け入れられた。更には小さなアパートを紹介され、住む事になった。
そして現在、長であるカルマが帰還するという事で、ロキとレンはクリオネと共にマルクスの家に来ていた。
「はあー、緊張するー。一体どんな人物なんだろう」
「ははっ! ロキ、ゴローじいに初めて会う時も同じ事言ってたね」
「だってさ、こんな広い土地一帯を治める人物なんだぞ。それに、力だって政府の奴らが束になっても敵わないくらいだって」
「そう緊張する事もないさ。まあ、愛想で言えばクリオネといい勝負といえるくらいクールなヤツだが、優しいって意味でもクリオネといい勝負さ」
「ぐっ! またそんな事を……。私は優しくなんか……っ」
途轍もなく大きな気配が近づいて来るのを感じ、クリオネが言葉を詰まらせた。
「おっと! この感じは王のご帰還だね!」
「んなっ!? こ、この大きさがたった一人の気配なんですか!?」
「ほ、ほんと……、何この大きな力……。で、でもなんだか穏やかにも感じるのは何故? 不思議」
そして、そこに一人の人物が現れた。
「ただいま……」
「えっ!? (ど、何処から来たんだ? 空間転送装置なんて無いし、ドアや窓が開いた気配も感じないかった……そ、それに……こ、子供……)」
「はははっ! ロキ君は面白い! 声に出さずとも表情で全部表してくれる!」
「だ、だってマルクスさん!」
「おかえり、カルマ。半年ぶりといったところか」
「クリオネ、マルクス、留守を預かってくれて礼を言う。……それでマルクス、探す必要が無くなったのは、そこにいるのがそうなのか?」
「ああ、恐らくとしか言えないけどね。それより、驚かないのかい? もっと驚くと思ったよ」
「……今更。何が起きてもそう驚きはしないさ」
「そっか。……おっと、お二人さん、すまない。紹介するよ。彼がこのジュヴェルビークを治める人物、“カルマ・アステロイド”。僕の大事な友人の一人でもある」
「あ、その、ロキです。それに、こっちはレンです。その……、よろしくお願いします」
「いいよ。そんなに畏まらなくて。ロキとレンだったな。ここで生活するならお前たちも俺の友だ。気安く話せ」
「あ、ああ、なら……よろしく、カルマ!」
「よろしくね! カルマ!」
「あ、ああ。よろ……しく」
レンの声を聞いたカルマが一瞬戸惑う様子を見せた。
「な~んだ! やっぱり動揺してるんじゃないか、カルマ~」
「ちっ! 声まで一緒とは」
「どういう事ですか? マルクスさん?」
「僕が初めてレンさんに会った時、知ってる人物に似てるって言っただろ?」
「あ、はい」
「それ、カルマのお母さんの事なんだ」
「え?……えーーー!!」
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