第八十三話 ロキを知る人物
「え? あなたが……マルクスさん?」
「ああ、そうだけど……、君は……、ひょっとしてロキ君かい?」
「え!? 俺の事知ってるんですか?」
「うん、知ってるよ! 吾郎さんと同じ技を使う人間がいるって、友人が言ってたんで」
「それって!? マルクスさん、クインシーの知り合いなんですか?」
「クインシー? ……ああ、なるほど。それより、ここらの魔獣と渡り合っていたようだけど……、ずいぶん強いね。そちらのお嬢さんも。お嬢さん、お名前は?」
「レンです」
「レンさんと言うのかい。知ってる顔にそっくりだからちょっと驚いてるよ」
「知ってる顔? 私がですか?」
「うん。まあ、僕自身は直接知り合いではないんだけどね。……まあ、それはさて置き、さっき“目的果たした”って言ってたけど、僕に会う為にここまで来たという事かい?」
「はい! 私たちマルクスさんに会いにロザンヌに行ったんです」
「なるほど……、それは無駄足をさせてしまったね」
「い、いえ。どの道、町長さんから聞かなければ、ここの場所さえ分かりませんでしたから」
「……そうか。では、詳しい話はジュヴェルビークで聞く事にしよう。ここはジュヴェルビークの入口。僕が泊まっている宿舎までもそう遠くないから案内するよ。ただし、ジュヴェルビークの住人たちは少々警戒心が強い。自由行動は一旦制限させてもらうよ。暫くは僕と一緒に行動という事で」
「は、はい……」
こうしてロキたちはマルクスの案内でジュヴェルビークに向かった。
――
「しかし、町長もよく君たち二人だけでこんな危険な場所に行く事を許してくれたもんだ。道中魔獣の徘徊、それに政府の監視やここの住人だって周囲を警戒してるというのに……。もしかして町長は君たちの強さを知ってたのかい?」
「えっと……。町で、ちょっといざこざがあって、その時に」
「いざこざ……、モーゼスさんか」
「はい。税金の滞納とかで、ヒューマライズの回収なんて強引な真似をしようとしてたんで……」
「なるほど。それは申し訳なかった。僕の責任の部分も大きい」
「いえ、聞けば今まであなたがずっと、重税に苦しむ町の人たちの税金を肩代わりしてたとか……。それに俺は、モーゼスを逆上させるような対応しかできなかったです。でもその時、とんでもない力を持った少女が現れて……、そしたらモーゼスのやつが突然怯え出して。最終的にはその子に助けられた感じです」
「ソフィアだね」
「え!? 知ってるんですか……?」
「まあね。それよりやっぱり君たちの技は吾郎さんから教わったのかい?」
「はい。ついこの間まで稽古を付けて貰ってました」
ロキは、これまでの事……、自分が記憶喪失である事、レンや吾郎との出会い、吾郎の勧めでマルクスを訪ねた事、それらすべてを語った。
それを聞いたマルクスの反応は予想外のものであった。
「……話してくれてありがとう。……そして、お会いできて光栄だ」
「え……? どういう……事ですか?」
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