第七十八話 徴税制度とヒューマライズ
壇上に町長が現れ話が始まった。
「あーおほん。みんな、忙しい中集まってもらって感謝する。話の内容は皆の想像通りじゃ。……マルクスが行方をくらまして以来、皆には苦しい思いをさせてしまっておるのは他でもない、ワシの力不足故……。現状、皆には生活費を削ってもらい、その分を税金に当ててもらっておる現状も十分理解しとる。……じゃが、それでもはやり厳しい状況なのが現実じゃ。世界の多くの者がヒューマライズに重労働を課し、その稼ぎで不自由の無い暮らしをしとる中、ヒューマライズとの共生を望み、家族として共に生きる皆をワシは誇りに思っとる。じゃが、このまま税金の支払いが滞ってしまえば、政府から厳しい勧告が下されるのも……――」
ガラーッ!!
町長の話の途中で勢いよく扉を開け、男が三人入ってきた。一人は背の低い小太りの中年、残りの二人は体格の良い大男……、風貌からしてボディーガードとしての戦闘特化型ヒューマライズのようだ。
「やぁやぁ皆さんお揃いで! 結構な事です」
「モ、モーゼスさん!?」
ざわざわ……
想定外の来客に町民がざわつき出す。
「ハンスさん、あの人は一体?」
「モーゼスさんといって、この町の徴税を担当している上層階級のお方です。非常に横暴な性格の人で、この町で彼をよく思っている者はいません。……何の目的があって来たのか、嫌な予感しかしません」
「皆! 落ち着くんじゃ!」
場の混乱を町長が鎮める。
「モーゼスさん、今日はどういったご用件で……?」
「回収に来たんですよ……」
「え?」
「町長、あなたには事前に忠告したはずです。上の決定には従ってもらいます」
「ちょっと!! 待っ……」
「どれでもいい、連れて行け!」
モーゼスが声を上げると護衛の二人のヒューマライズが一人の女性型ヒューマライズの腕を掴み強引に席を立たせた。
「うぐっ!」
しかし、腕を掴まれたヒューマライズの横で小さな男の子が泣きながら、必死に抵抗した。
「ママ!! お願い、ママを連れてかないで!! ママがいなくなったら僕、一人になっちゃうぅぅーー……!!」
状況からするに、父親を亡くした少年が母親代わりのヒューマライズと二人で生活していたようだ。
「おい、ガキを黙らせろ。おっと、殺すと面倒な事になるからな。軽く遊んでやるくらいにしろよ」
「はい、モーゼス様」
「やめろ、モーゼス!!」
町長が叫ぶ。
同時にロキとレンが飛び出した。レンが男の子を抱きかかえ、ロキが母親を救出した。
「はい、もう大丈夫だよ! 怪我ない?」
「え? あ、ありがとう、お姉ちゃん!」
「よっと! お母さんも、危ないから後ろ下がってて」
「あ、はい! ありがとうございます」
「なんだ? お前ら、徴税妨害は犯罪だぞ?」
「そんなの知らねーよ! 嫌がってたじゃん、あの子!」
「嫌になるのはこっちだ! 三ヶ月も滞納されては上に面目が立たんのだよ!……けっ! 一町民の分際で私に盾突くとはいい度胸だ小僧。そっちの赤髪のはお前のヒューマライズか? なんなら今月の回収はお前のヒューマライズにしてもいいんだぞ!」
「できるもんならやってみな」
「ふん! やれ! その赤髪の女を捕まえろ!……ガキが生意気な口を聞いたツケだ。軽く可愛がってやれ。おっと、顔にキズはつけるなよ。治るからと言っても価値が下がるからな」
「はっ!」
モーゼスの命令で二人の戦闘特化型がレンに襲い掛かる。しかし、左右から同時に襲い掛かる攻撃をいとも簡単に受け止めるレン。そして、素早い動きで反撃。その瞬間、二人の大男が倒れた。
「な、何ぃ!? お、おい! 起きろ! 相手は生活支援型だぞ! ふざけてる場合か! 回収だ! 早く回収しろ!! 私の命令が聞けんのかこのガラクタども!!」
「おっさん、無理だ。今のレンの攻撃で脳幹にダメージを負ってる。ヒューマライズなら数時間後には回復するだろうけど、暫くは動けないよ」
「んのガキが!! もう許さんぞ!!」
そう言ってモーゼスは懐から銃を出しロキに銃口を向けた。
「ロキさん!!」
ハンスが叫ぶ。
「おい!! 町民ども!! 私に盾突いた者がどうなるか見ておけ! 人形一体の回収を拒んだが為に命を失う事になるんだ!! 覚悟しろよクソガキ……。死ねー!!」
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