第七十四話 レンの胸騒ぎ
観客達の動揺を余所に決勝に勝ち進んだ二人。
決勝は二時間後。
控室がそれぞれに与えられ、面会なども自由という事でレンはロキに会いに来ていた。
「うっ! いてててて……! ふぅ、悪いなレン、少しでいいよ」
特殊救護の力でロキの傷を癒すレン。
「ロキ、無理し過ぎだって! 分かってるとは思うけど、私のこの能力はあくまで応急処置的なものだからね!」
「十分助かるよ!……それにしても優勝候補は流石に強かったな。まあでもこの程度の怪我なら決勝が始まるまでには痛みも気にならないくらいには回復してると思う!」
「……」
「ん? どうした? レン」
「ねえロキ……、このまま棄権する気はない?」
「え? ん~、まあこのまま棄権しても準優勝になるわけだから航空チケット買うくらいなら十分すぎる賞金は出るけど……、ここまで来たら優勝も狙ってみたいかなー……なんて……」
説教される事も忘れ、つい調子に乗った事を言ってしまったロキだが、レンの反応は意外なものだった。
「……なんだか嫌な予感がするんだ……」
「え? あのクインシーって奴の格好が不気味だからか?」
「う~ん、それもあるかもしれないけど、それだけじゃないというか……よく分からないけど……」
「大丈夫! ヤバいと感じたらすぐに棄権する。ただ、一つだけわがまま言うと、相手の力を体感する前にここで棄権はしたくないかな」
「はぁー……、ホントにヤバいと思ったら絶対棄権してよ」
「へへっ、悪い。ありがとな」
「だってロキ、言い出したら聞かないんだもん」
「いや、そうじゃなくて……心配してくれてさ」
「え?……それは、ヒューマライズとして当たり前の事だよ」
「そっか。まあ、とにかく無理はしない。約束するよ」
――そして二時間後、いよいよ決勝戦が始まろうとしていた。
「さー、いよいよ決勝戦です!! 今回決勝まで勝ち進んだのはなんと両者共に一般参加の選手!! しかもなんと、人間です!! 初戦では運よく勝ち上がってきた両者ですが準決勝では途轍もない試合を見せてくれました!! 果たして勝利の女神はどちらに微笑むのかー!!」
「……」
「……(改めて対峙すると不気味だな……。隙も無さそうだ。様子見なんかやめて、最初から全力で行かせてもらう!)」
ドーン!
「試合開始!!」
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