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第六十六話  壁を乗り越えよ

「羊が一匹……羊が二匹……」


 吾郎に教わったとおり、羊を数えながら修行に挑むロキ。

 一方、レンも次の段階に入ろうとしていた。


「さてレンちゃんや。ロキ君も壁を乗り越えようとしておる。レンちゃんも壁を一つ乗り越えてみんかの?」


「壁……ですか?」


「どれ……」


 ポンッ!


 吾郎の指先から20センチほどのシャボン玉のような球体が幾つか現れた。


「今からこの玉を割ってみなさい」


 そう言うと吾郎は、玉をふわふわとレンの方に向かわせた。その玉に対してレンは、右手で攻撃した。


 しかし……


 スカッ……


「え?」


 その攻撃は玉に当たらなかった。


「その玉はレンちゃんの動きを読み取って動くんじゃ。それ故、そう簡単に攻撃は当たらん」


「それではどうすれば?」


「レンちゃんが玉の動きを読み取って動くんじゃ。できるかな?」


「分かりました。やってみます」


 玉の特徴を聞かされたレン。それを理解した上で暫く攻撃を続けるも、それらは(ことごと)くかわされてしまう。やがてレンの体力が尽きてしまった。


「はぁはぁはぁ……」


「どうじゃ? 思ったよりも難しいじゃろ?」


「はぁはぁ……、一体どうすれば玉の動きが読めるんです?」


「玉はレンちゃんの動きを感じ取って動く……ならば、玉を騙せばいいんじゃ」


「玉を騙す?」


「そうじゃ。まあ見ておれ」


 そう言うと吾郎は玉に近づき拳を突き出した。すると、玉はいとも簡単に割れてしまった。


「すごい! どうやったんですか?」


「玉は今、ワシの動きから左手で攻撃すると読んだ。しかしワシはその瞬間、玉の動きを見て右手で攻撃したんじゃ」


「こんな感じ……でしょうか?……あ、あれ?」


 吾郎の見よう見まねで玉を割ろうとするレンだが当たらない。


「まあ“慣れ”じゃよ。何度か組み手をしてみたが、どうもレンちゃんの攻撃は素直すぎると思うてな。“騙す”という事は生活する事においては悪い事じゃ。だが戦闘においてはそれも“戦術”なんじゃ。その玉を難なく割れるようになった時、レンちゃんも一つ上のレベルの戦闘ができるようになっとるじゃろう」


 ――


 その頃ロキは……


「……羊が608匹……羊が……609……匹…………zzz……――、あーいかんいかん! あれ? 何匹まで数えたっけ? まーいいや、最初から……羊が一匹……ん? 羊が二匹……お? 羊が三匹……え? これって……、ゴ、ゴローじい!!」


 吾郎を呼ぶロキ。


「どうした、ロキ君?」


「ちょっと見ててください!……ホラッ!……ホラッ! ゴローじい、これって!?」


 ついさっきまで全くできなかったのが嘘のように容易く糸を通すロキ。


「良かったのうロキ君! 目覚めたようじゃ!」


「はー、よかったぁ~。ゴローじい、これでいよいよ俺も戦術を学べる訳ですね?」


「ああ、これからが本番じゃ! 期待しておるぞロキ君!」


「はい!! よろしくお願いします!」


 こうして、ロキの修行がいよいよ本格的に始まろうとしていた。








ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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