第六十二話 修行開始
――新暦210年 ――式神家
吾郎の下に残ると決めた翌日、ロキとレンは吾郎に連れられ道場へ来ていた。
「うわー、天井が高い! 外から見ても大きいけど、中に入るとそれ以上に広く感じますね!」
「ワシの自慢の道場じゃ! ちょっとやそっとじゃ壊れんから存分に暴れて良いぞ!」
「いや~、俺が暴れたところでこんな大きな建物に影響は無いかと……。ゴローじいやレンならともかく」
「いいや。ワシが稽古をつける以上、キミにはこの道場を揺らすくらいには成長してもらうぞ! それとワシは、レンちゃんにも稽古をつけるつもりじゃ!」
「え? 私にも……ですか?」
「そうじゃ。嫌じゃったかの?」
「い、いえ……でも……」
そう言ってロキの方を見るレン。
「ちょ、ちょっとゴローじい! 昨日俺がレンと交わした破棄の条件覚えてますよね? レンがこれ以上強くなって、100日後のレンに俺が敵わなかったら……」
「分かっておるよ。だがロキ君、ワシの話も忘れた訳じゃないじゃろ?」
「そ、それは……」
「大丈夫じゃ。キミは強くなる。少なくともワシはそう信じておるよ」
「ゴローじい……。ですね……。すいません、やる前から弱音なんて吐いて……」
「ロキ……、私はどうすれば……」
「レン! ゴローじいの下で一緒に修行しよう! この先の旅で何が起こるか分からない。 また賊に襲われるかもしれないし、それ以上の事が起こるかもしれない。少なくとも、強くなって損はないと思う。……100日後の俺が今のレンすら超えれているかどうか分からないこの状況で正直不安はあるけど、ゴローじいも信じてくれてるんだ。必ず約束は守ってみせる!」
「……約束をした覚えはありませんが、了解です」
「ずこっ! 何この温度差……」
「はっはっはっ! まあ、何はともあれ決まったようじゃな。では、早速始めようかの」
「はい!」
「まずは……ロキ君ちょっとその場でジャンプしてみなさい。……おっと、本気でじゃぞ」
「はい! よ~し……ふんっ!!」
吾郎に言われたとおりジャンプするロキ。その高さは60~70センチといったところ。
「では次、レンちゃんもロキ君と同じようにジャンプしてくれ。もちろん本気でじゃ」
「はい」
ロキと同じようにジャンプするレン。しかしその差は一目瞭然。レンは10メートルはあろうかという天井付近まで飛び上がり、軽々と着地を決めた。
「……これが今の二人の差じゃ。ロキ君、分かっているとは思うが、ただ只管筋力トレーニングを続けても、この差は埋まらん。まずは、ワシが違いを説明する。そしてそれを知った上で次にする事は“慣れる”という感覚を身につける事。良いかな?」
「はい!」
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