第五十八話 まっすぐに
ノアは意を決し、自分の意思に背く決断をした。
「……お姉ちゃん!! お母さんの気が済むようにしてあげようよ!!」
「ノア!! 何言っ……!!」
しかし、泣きながらも強い眼差しのノア。その表情でソラがもう助からないのだと悟った。
「ううっ!!」
悔しそうに頷くソアラ。
「ありがとう……二人とも。……ソアラ聞いて。あなたに……感情がある原因……私にあるわ」
「……え? そ、それって……」
「そうよ……私は……ドラグレスクの研究員……そこで、あなたたち……を作った。……人とヒューマライズが……等しく生きれる日を目指して。……この町に……住んでるあなたたちには……馴染みが無いかも……しれないけど……今……世界の人口の……多くは……人を思いやるという……概念が……無い。……かつての……私のように……。人は、……間違った方向に……進化してしまった。ヒューマライズに……押し付けすぎた。私は変えたかった……人の心を。……気付いてほしかった……ヒューマライズも……同じ命なんだと……。でも……私がやったことも……結局……ヒューマライズに頼っていた事に……変わりない……それどころか……反ってヒューマライズたちに……危害が及ぶ結果を招いてしまった。……仲間も……私に……賛同……してくれた……仲間たちも……みんな殺された。……私のせいで……。私は……あなたたちに……許されるような存在じゃ……ない」
「お母さんのせいじゃない!! お母さんのせいじゃないよー!!……だってお母さんは、いい事をしようとしただけで……」
言葉が見つからないながらも、必死にソラを肯定しようとするノア。
「……ノア。あなただって……私さえいなければ……こんな危険な目なんかに……。わたしは……あなたに……なんにも……お母さんらしい事……してあげられなかった。……ごめんね……」
「お母さん、そんな事ない!! お母さんはお母さんだった!!……お母さんだったんだって!!」
「ノア……優しい子……ゴローちゃんの子。……うっ!」
「お母さん!!」
「……ソアラ……ごめん……なさ……い……。あの日……あなた……に……言え……なかった。謝り……たかったの……よ。……でも……あなたに……嫌われる……それが……ものすごく……ものすごく怖かったぁ……」
「嫌う……? ううん、私は嬉しい。だって、私はお母さんが作ってくれたんでしょ? 私……お母さんの子だった……。こんなに嬉しい事ないよ。」
その言葉に涙が溢れるソラ。
「……ノア……ソアラ……はぁ……はぁ……」
「ああ……ああ……お母さ……」
「まっすぐ……に……自……分に……素直……に……まっすぐにね。……幸せに……なっ…………て……――」
「お母さん? お母さん!!!!」
「いやぁぁぁーーーーー!!!!」
ソラが死んだ。
二人の叫び声で吾郎にもそれが分かった。
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