第五十六話 動揺
そのころ、有利な展開の三人とは対照的に吾郎は焦っていた。
「八十一式……暮葉麓竜胆!!」
「羅刹遊戯……【告別】……」
互いに技を繰り出すも、その威力は互角。相殺した。
「(くっ! 八十一式の技が通らん……。この女、なんという強さだ……)」
「おや? 表情が思わしくないですよ? 打つ術無し……といったところですか?」
「くっ! それは、お互い様じゃないのか?」
「ふふっ、私の任務はあなたを傷つける事では無いですから。あくまで、レヴェイの撲滅です。その為に有効なのは人質のようです……が、そのくらいはあなたさえいなければ、新でも可能です。私は、あなたの足止めができればそれで十分」
「だが、その彼はどうやら劣勢のようだな」
「……まあ、あれでも私の部下です。任務は果たすでしょう」
「(くっ、早くこいつをなんとかせねば)」
――
ガラガラ……
瓦礫の中から立ち上がる新。一方的に攻撃を受け続けていたものの大きなダメージには至ってはいない様子だ。
「(くっ! ちょこまかと鬱陶しい猫だ。……だが、いつまでも続くと思うなよ)」
立ち上がる新にソラが追い打ちをかける。しかし……
「……そこだ!!」
ついに新がソラを捉える。
「え!? うぐっ!!」
弾き飛ばされるソラ。ノアとソアラもタイミングをずらした攻撃を仕掛けるも、ソラの翻弄無しではそれも無意味に等しい。容易く弾き飛ばされる二人。
「あうっ!」
「うぐっ!」
「ははっ!! 見切っちまえばなんてこたーねーな!……さてと、散々ボコられたツケを返さねーとな」
立ち上がる三人。それぞれ三方向から新の様子を窺う。
「んー、そうだな。式神の娘を捕らえる前にちょっと可愛がってやるとするか。殺すなとの命令だ。ちょっと強いのいくけど……死ぬなよ。……はぁぁぁ!!」
新が空に手をかざすとその手に光が集まり槍のような形が形成された。
狙われたのはノア。かわすタイミングを窺っているものの如何せん実践経験が無い。形勢が逆転した事に動揺し足が震えている。
吾郎がその様子に気づき斑鳩を振り払ってノアの下に向かおうとした。
「ノア!! くっ! 離せ! 貴様!!」
「案ずる事ありません。命は奪うなと言ってあります」
しかし、一瞬斑鳩の手がもつれた。その隙に吾郎は手を解き、ノアの下に向かった。
だが、間に合いそうにない。
「くらえ!! フィアー ・ レイ!!」
光の槍がノアに迫る。
その時、ソアラが間に入った。
「え?……ダメ! おねえちゃん避けて!!」
ザシュ!!
「うぷっ……!」
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