第五話 病院にて①
町に到着した二人。
町の名は、リトルリヴェール。緑豊かな小さな町である。
途中まで元気そうに話していたロキだが、出血が酷かったせいか、今はぐったりしている。
レンは急ぎ病院に向かった。
やがて小さな病院に辿り着き、そこへ駆け込んだ。
「すいませーん! 急患なんですが診ていただけますか?」
大怪我を負った男と、その男を背負って血まみれでやってきた女。
そのただならぬ状況は、その場にいた全員の注目を集めた。
その中に一際驚いた様子でレンを見ている老人がいた。
「(……似ている! あの子……なのか?……いや、そんな筈は無い)」
驚いているのは、“その状況に”では無く、“レンの容姿に”のようだ。
やがて、駆けつけた医師によってロキは運ばれて行った。
一方レンは、受付で費用の相談をしていた。
「すいません」
「はい、どうされました?」
「私たち、お金の持ち合わせが無く……、どうしたら良いものかと……」
「では、お知り合いの方で代理で支払っていただけそうな……例えば、ご家族の方などのご連絡先を教えていただけますか?」
「代理……ですか。……すいません、それもできそうにありません。私たちは家族もありませんし、知人もいません」
「でしたら……そうですねぇ……」
困り果てる受付の看護師。
そこにさっきの老人が現れ、声を掛けてきた。
「お嬢さん、どうなされた?」
レンは老人に事情を説明した。
「うむ、そういう事ならこの老いぼれが代わりにお支払いいたそう。ヤッちゃんや、このお嬢さんの連れの治療費は、ワシに請求してくれ」
「はい。では、そうさせていただきます」
にこやかに答える看護師。あだ名で呼ばれている事から察するに、老人とは親しい仲のようだ。
一瞬、状況を把握できなかったレン。数秒考え、老人に礼を言うべきと判断した。
「あの……、ありがとうございました」
「礼には及ばんよ。それより、金もなくてはこの先困る事もあるじゃろうて。連れの兄ちゃんが回復したら、一緒にワシの家に来ると良い。少しは助けになれるじゃろうから」
そう言い残すと、老人はレンに住所を伝え去っていった。
そこに、ロキの担当の看護師がやってきた。
「あの、ロキさんのお連れの方ですよね? ロキさんが目を覚まされました!」
レンは、看護師に連れられロキの元へ向かった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もし少しでも、面白い! 続きが読みたい! と思っていただけましたら、
ブックマーク、評価をお願できましたら幸いです。
とても励みになります。