第四十九話 久しぶりの組み手
朝、吾郎が目覚めるとソラの姿がなかった。部屋を出て階段を下りると、キッチンの方から音が聞こえた。
扉を開けるといい匂いがしてきた。匂いのする方に目をやると、ソラとソアラが朝食を作っていた。
「おはよう! 二人とも早いな」
「あっ、お父さんおはよー! いいよ座ってて」
「んじゃ、お言葉に甘えて。ソアラ、今日はノアの相手宜しくな!」
「うん! もちのロン!」
「……ソアラ、あんたそれ、ゴローちゃんの受け売り? そんな古いダジャレ今時流行んないわよ」
「おいおいソラ、ノリが悪いな~。分かるかな~、このノリが~!」
「はいはい、海苔ね。はい、ゴローちゃん、の~り!」
「ちっがーう!」
「ぷっ……あはははー、お母さんの勝ちだ!」
「ソアラさん、そんな殺生な~……」
ガチャッ
そこへノアが起きてきた。
「なになに? なんか盛り上がってな~い?」
「ノア、おはよー!」
「お姉ちゃん、おはよ……って、あ! お母さんいた! 昨日部屋戻ったらいないと思ったら、お姉ちゃんとこで浮気してたでしょー!」
「ううん、私んとこじゃないよ」
「え? はは~ん、て事は……うんうん、お熱いね~、お二人さん!」
シャー!!
「わっ! お母さんいきなり引っかかないでよー」
「ふんっ! 大人をからかうからよ」
「えー、だってホントの事じゃん!」
「ノア~、もっかい引っかくわよ?」
「ひっ! もう勘弁っ!」
「はい! 二人ともそこまで! ごはんできたよ!」
「う~ん、今日もおいしそ~! いただっきまーす!」
「ノア、食べたら私と組み手だからね!」
「うん、楽しみ! 暫く一緒に稽古してない内に私だいぶ強くなったから覚悟しててよ」
「半年ぶりだもんね! 期待してるよ!」
――そして朝食後
四人は道場へ向かった。中へ入ると吾郎の弟子達が既に待機していた。
「先生、おはようございます」
「おう、おはよう! 昨日はすまんかったな」
「いえ、本日も宜しくお願いします」
「うっし!……そしたら今日は、稽古の前にノアとソアラの組み手を行う。みんな、しっかり見て勉強するように!」
「はい!」
幼い頃は、吾郎の弟子たちに到底適わなかった二人も、いつの間にか立場も逆転する程の腕になっていた。
「お姉ちゃん、今までのように簡単にはいかないよ! 念願の初勝利、頂くからね!」
「自信に違わぬ力を感じるよ! かなり稽古を積んだようだね。だけど、私だって負けるつもりはないよ! 勝負だねノア!」
ノアの力を感じ取るソアラ。予想以上の力の向上に少し驚いている様子だ。
「それでは二人とも、準備はいいかい?」
「いつでもOK!」
「うん、私もいいよ!」
「それでは、……始め!!」
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