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第四十七話  守る側 守られる側

 斑鳩の殺気を真面に喰らい、気を失ってしまったノアを部屋まで運び、看病をする吾郎。いつの間にか時間が経ち、夕方になっていた。


 そこへソアラとソラが帰ってきた。


「ただいまー!」


 ガチャッ


「ごめーん! ちょっと遅くなっちゃった。すぐご飯作るから……ってあれ? お父さん? ノア?……嘘……お母さん!!」


「落ち着きなさいソアラ!……二階に気配を感じるわ」


 二人の姿が見当たらない事に焦るソアラだったが、ソラが冷静に二人の気配を感じ取る。


「……ホントだ。よかった……」


 玄関の扉が開く音を聞いて吾郎がノアの部屋から顔を出した。


「おかえり! すまんな、時間を見ていなかった」


「お父さん! 居ないと思って心配したよ! ノアは?」


「……ゴローちゃん、……来たのね」


「……ああ。ノアは大丈夫だ。少し精神的なダメージを受けて気を失っていたが、もう落ち着いた。今は眠っているよ」


「ノア!!」


 思わずノアの部屋に走るソアラ。


「……ソラ、やはり話し合いでは解決できなかった」


「……政府はどう出るって?」


「一週間後、また現れる。彼らはそこで決するつもりらしいが、私は抗う」


「……ノアはどうするつもり? 分かってるとは思うけど、政務の執行を妨害する行為は、第一級犯罪になる。私が言えた義理じゃないけど、ノアに背負わせるには余りにも重過ぎるわ。それにノア、破棄の後継者でしょ?」


「それは……」


 破棄の後継者。それは破棄の権限を受け継ぐという事だ。破棄は一度だけ、それも主人の血族限定で権限を譲渡する事ができる。ヒューマライズは主人の死と同時に破棄される運命にあるのだが、主人の死後もその家族がヒューマライズとの生活を望むという需要も多く、その需要に答える形で生まれたシステムが破棄の譲渡である。譲渡は主人の死後に発動するようになっており、それまでは譲渡の契約を交わしていても後継者に支障はない。その為、譲渡を考える者は早い段階で譲渡をするケースがほとんどである。

 ノアも10歳の誕生日に破棄の後継者になっている。しかし、ソアラの破棄を強行する政府によって吾郎の命が狙われる事態も考えられる今、姉妹の将来を考えて行った譲渡がノアの命さえも脅かす可能性を生んでしまったのだ。


 ――ガチャ……


 そこへソアラが入ってきた。その表情は曇っていた。


「…………」


「ソアラ、言いたい事は分かるわ。でも言ったはずよ。頼るのも勇気だって」


「でもノアが!」


 暗い顔のソアラを見て、吾郎は不意を突くように話題を変えた。


「なあソアラ、明日ノアの組み手の相手をしてやってくれないか?」


「え!? お父さん、こんな時に何言ってるの?」


「まあまあ、いいじゃないか! な? 頼むよ! ノアも久々にお姉ちゃんと組み手したいって言ってたし」


「え?……う、うん。……じゃあ」


 戸惑うソアラであったが、しつこく懇願する吾郎に渋々返事をする。


「よし! そしたら明日だな! じゃあ一先ず晩ご飯にしようか。作るぞー、ソアラ!」


「あー、待って。私が作るから、お父さんは座ってて!」


「まあまあ、たまには一緒に作るのもいいじゃないか!」


「う~ん、……じゃあ私ハンバーグ作るから、お父さんスープ作って」


「ほーい了解!」


「(流石ね、ゴローちゃん。暗くなりかけた空気を一瞬で変えるなんて。そうよ。深く考えて悩むより当たり前の日常をいつものように送る。今必要な事は、そういう事なのかもしれないわ。ありがとね、ゴローちゃん)」


「おーい、ソラも手伝ってくれよー! 買い物袋の中の食材持ってきてくれないかー!」


「はいはい」


 この日の晩ご飯は三人で作った事もあり、いつもよりも少し豪勢だった。ノアは、ぐっすり眠っていたので、三人は先に食事を摂った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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