第四十六話 私が一番知っている
「き、貴様!! 斑鳩さんに向かって無礼だぞ!!」
「おや、威勢のいいお嬢さんだ。申し訳ないがヒューマライズに敬意を示すつもりはありません。しかし、話があるのなら聞きましょう」
冷静に切り替えす斑鳩にノアが必死に訴える。
「お姉ちゃんは、誰よりも優しい思いやりのある人だよ。だからどんなに人間より力が強くても、どんなに人間より頭が良くても絶対に人を支配したりなんかしない。寧ろその逆、人間より強いからこそ、弱い立場の人たちを守ってくれる。それは、子供の頃から何度も助けてもらった私が保証できる。あんた達なんかよりもずっとお姉ちゃんの事を知ってる私が保証する!」
「……お話は、それだけですか?」
「え!?」
「気が済んだのでしたら私達はもう行きます。このままでは話は平行線です。式神さん、一週間後にまた来ます。それまでに答えを出しておいて下さい。よい答えを期待していますよ。それでは」
「ねえ待って! お願いだからお姉ちゃんを助けてください! お願いします!! ねえ、行かないで!! ねえーーー!!」
去っていく2人を追いかけるノア。吾郎もノアを追いかけた。
「待ちなさい! ノア!!」
その瞬間、吾郎とノアはとてつもない殺気を感じた。
「ぐっ!!」
その殺気は、斑鳩のものだった。そして吾郎が庭の方を見るとノアが倒れていた。
「ノア!!」
吾郎は、ノアに駆け寄った。
「……う……うぅぅ……お父……さん……」
「大丈夫か!? ノア!!」
「……何も……何もできなかった……」
「ノア、 お父さんは絶対にソアラを破棄なんかしない! だから大丈夫だ!」
「う……うぅ……」
そのままノアは気を失った。
「先生、大丈夫ですか? 外からものすごい殺気を感じましたが……」
吾郎の弟子達が駆け寄ってきた。どうやら斑鳩の凄まじい殺気は道場の奥まで届くほど強力なものだったようだ。
「すまんな……、大丈夫だ。だが、申し訳ないが今日の稽古はここまでにしてもらえるか?」
「承知しました。それでは失礼いたします」
「すまん……、また明日な」
「はい。本日もありがとうございました。では、失礼します」
かくして吾郎の交渉は、決裂という結果に終わった。
必死の抵抗を見せたノアも返り討ちに合う結果となり、事態は悪化の途を辿り始めるのであった。
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