第四十三話 来客
位置に付き対峙する二人。
「それでは、互いに礼! 構え……」
独特のこの瞬間。一瞬、時が止まったような静けさになる。
「始め!!」
開始の合図と同時にロイドが一瞬でノアの背後を取り、足元に回し蹴りを放った。背後は取られたものの、その動きは見えているノアは、すかさずジャンプで蹴りをかわした。
しかし、足元への攻撃は囮、ロイドの狙いはノアを不安定な空中姿勢にする事。まんまと空中姿勢になったノアにロイドのバックブローが迫る。
そのまま決まるように見えたその刹那、ロイドの腕を掴み、鉄棒の様にしてかわすノア。着地と同時に今度はノアが一瞬で間合いを詰め、ストレートを放つ。
それを避け切れなかったロイドが腕で防ぐやいなや、凄まじいスピードの攻撃の応酬が始まった。
全く互角の攻防が暫く続き、互いに間合いを取り直す。
しかし、ほんの僅かノアが速かった。そのまま一気に距離を詰め、ロイドの懐の前に手を当てた。
「二十七式……砕破鑼心撃!!」
その瞬間、ロイドは心臓に大きな衝撃を受け、膝をついた。
「うぐっ……!」
どうやら足に力が入らず、立てない様子だ。勝負は決まった。
「勝負あり!! 勝者、ノア!!」
「ぃやっっったーー!!」
「げほっげほっ……、完敗です。ノア嬢」
「ごめん、ロイド! 大丈夫?」
立ち膝のロイドに手を差し伸べるノア。
「はい。問題ありません。全機能正常です。お強くなられましたね!」
「へへっ! 初勝利!」
「ノア、よくやった! 技もかなりの威力だった。そうでなければ、一撃でロイドに膝を突かせる事はできんよ」
「ホント!? じゃあ、お姉ちゃんにも勝てるかな!」
「ああ、可能性は十分にあると思うぞ! 今月はよく頑張った!」
「まあね! 今月はいつもの3倍は稽古来たからね! よっし、明日にでも久々にお姉ちゃんに組み手の相手お願いしよっと!」
「よし! そしたら、ごはんにしようか」
「あ、お昼私が作るよ!」
「お! 珍しい事もあるもんだな。じゃあ、頼んだぞ!」
「もう! 珍しいは余分だって……。んじゃ、待ってて」
ガラーッ――
戸を開けたノアが立ち止まった。
「ん? どうした、ノア?」
「誰か来る……。お客さん?」
「っ!! 待ちなさい、ノア! 私が出る!」
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