第四十話 後悔
「あれ? あなたは確か、研究員の方。そのお荷物、町を出るのですか?」
「ええ、研究も一段落しましたので」
「そうですか。滞在中、うちの母がご迷惑をお掛けしまして申し訳ありませんでした」
「あ、あなた、あのおばあさんの息子さん!?」
「はい、ご迷惑をお掛けして……」
「違うわ! それは私のほう……、あの、おばあ……いえ、お母さんに会いたいのですけど、今からお宅にお邪魔しても大丈夫ですか?」
「それは……」
「?」
「すいません。母は、……一週間ほど前に亡くなりました」
「……え?」
「しかし会って頂けるなら是非。母も喜ぶと思いますので」
「う、嘘よ……。あなた嘘をついてるわ! だってあんなに元気そうだったのに……」
「母は元々心臓が弱くて、でもここ最近は元気そうでしたが、突然の発作で……」
「嘘よ嘘! 私、自分の目で確認するまでは信じないわ!」
人が死ぬ事にここまで動揺した事もなく混乱していた私は、母親を亡くしたゴローちゃんの気持ちも考えず失礼な事を言っている事にさえ気がついていなかった。そんな私をゴローちゃんは自宅まで案内してくれた。
そして、おばあさんの遺影を前に事実を受け入れた瞬間、私の緊張の糸は切れた……。
「う……うぅぅぅ……うあぁぁぁーーー!! おばあちゃん、ごめんなさーーい!! わだぢ……、おばあちゃんにお礼も言えながっだ!! ごめんも……ごめんも言えながっだぁぁーー!! 迷惑だなんでいっぢゃっだよぉぉーー!! わだぢ、わだぢぃぃぃーー……!!」
実の親が死んだと聞いた時も涙の一滴も流さなかった私が、子供のように泣き喚いた。人が死んで後悔したのは、これが初めてだった。
「母の為に、そんなに泣いてくれてありがとうございます」
「違う! 私が悪いの! 全部……全部私が!! うっうっ……ぅあぁぁぁーー……」
私は、思わず目の前にいるゴローちゃんに縋りついて泣いた。
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