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第四話  守られるばかりじゃ……

 目の色の変化に驚く(かしら)。そしてレンは、頭に飛び掛ろうと構えた。

 しかし、倒れていたロキが咄嗟にレンの足を掴んで止めた。

 その隙に逃げていく賊たち。


「ロキ、なぜ止めるのです?」


「げほっ、げほっ……、あいつは、既に戦意喪失していた。部下たちも……。追っても意味がない。もうやめよう……」


 かなりのダメージを負いながらも、かろうじて笑顔を作りながらロキはレンにそう告げた。


「何故です? 私が止めなければ、やつらはロキを殺していたかもしれません。そんな相手を許すのですか?」


 ロキの言っている意味が分からず、質問を返すレン。


「仮にそうだとしても、結果俺はこうして生きてるわけだ。それで良しとしてくれないか」


「……理解できませんが、ロキがそう言うのであればそうします」


 そう言うとレンの目は元の色に戻った。


「命令じゃなくて、お願いだからな」


「そう言うと思いました」


「ははっ、ならよかったよ。……そしたら行こうか。うぐっ!」


 立ち上がろうとするが、ダメージが大きく立ち上がれないロキ。


「ロキ、その怪我では歩くのは無理です」


 ロキを起こし、そのまま背負うレン。


「……うぐっ! おいレン! 恥ずかしいって!」


 と言いながら、抵抗する力も残っていないロキ。


「こうするのが最善と判断しました。我慢してください」


「うぅぅぅ……、はぁ……すまん」


 諦めて背負われるロキ。

 そしてレンは歩き始めた。


「この先に町があるはずです。まず、病院へ行きましょう」

「…………」


 黙り込むロキ。


「どうしました、ロキ?」


「レン、すまん! 何から何まで迷惑かけた! 俺が情けないばかりにお前を守れず……」


「いえ、悪いのは私です。私の判断ミスで、ロキに怪我を負わせてしまいました」


 逆に謝るレン。


「なんでお前が謝る? 助けられっぱなしなのは俺の方だぞ!」


「賊が私の体で払えと言った時、それで済むのであれば、あの場をそうやり過ごそうと判断しました。最善の判断をしたつもりでしたが、ロキが賊に殴り掛かる事が予想できず、ロキに怪我を負わせる結果となってしまいました。普通の人間であれば、あの場は私を置いて逃げます。正直、ロキの行動は予測が困難です」


「……レン、俺は弱い……。でもあの場では、ああでもしなきゃレンを助けられないと思った。まさかお前があんなに強いとは思ってなかったし……」


「本当にロキの考えは理解に困ります。私は人間ではありません。ヒューマライズです。“人間の様に接するように”と言われましたが、(あるじ)を置いて逃げる事はできません。それに、ヒューマライズは怪我をしても痛みは感じませんから、致命傷でない限りは動けます」


「……」


「私の戦闘能力については、あらかじめ伝えておくべきだったかもしれませんが……、“生活支援型”でも、(あるじ)の緊急時には攻撃する事が認められています。しかし、ロキから“逃げろ”と命令があり、最終判断に時間が掛かり、防衛が遅れました」


「……」


「……いずれにせよ、私の能力不足です」


 自分が無茶な行動にさえ出ていなければ、判断通りの結果を出していたであろうレンに対し、無茶な行動の結果、結局レンに助けられる事となった自分の無力さに悔しさを隠し切れないロキは、レンの背中で唇をかみ締め、涙を堪え震えていた。


その震えの意味は、レンにも伝わっていた。


「ロキ、 ヒューマライズとの能力差は当たり前の事です。以前にも話しましたが、ヒューマライズとは、人間には難しいとされている事をする為に存在します。それをこなすため、高い能力設定にされています。ですから、気にする必要はありません」


 ロキの気持ちを察し、言葉をかけるレン。


「……レン、俺は口ばかりで何もお前を助けるような事できてない……。“持ちつ持たれつ”なんて言って、結局助けられてばかりで……」


「……ロキ、ですから気にする事では……」


 その言葉を振り切るように、ロキが申し出る。


「俺もお前みたく闘えるようになりたい!」


「突然何を!? 人間には無理です。仮にできたとしても、その力に体が付いてこれず、全身が崩壊します」


「いや、強くなってみせる! そんで、強い体にもなってみせる!そこでだ。レン、お前、俺に稽古をつけてくれないか?」


「無茶です!」


「そうかもしれないが、今日のような事を無茶じゃ無くする為に必要な無茶だ。やってみる価値はあると思う。バカだと思って聞いてくれ! 頼む!」


「言ってることが無茶苦茶ですが……。仕方ありません。引く気が無さそうなので、怪我が回復したら、少しだけならお相手します」


「ありがとう!! よろしく頼む!!」


 こうして、ロキはレンに戦闘技術を学ぶ事となった。


 時刻は、間もなく日も沈もうかという夕暮れ時、二人は町までもうすぐの所まで来ていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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