第三十七話 雨降って地固まる
「……話してくれてありがとう、ソアラ。つらい話をさせたな……。でもお父さんは、何があろうとお前を破棄なんかしない。それだけは言っておく」
「お父さん……」
「なんで……。なんで感情があっちゃいけないの? 何でそれが“罪”になるの? 分かんないよ私」
「ノア……。あのね、ヒューマライズは身体能力・知能どちらにおいても人間より高く作られているでしょ? そんな存在が人格を持てば、中には人間に従う事に疑問を持つ者も現れるかもしれない。政府はそれを危険視している。レヴェイたちが人間に刃を向ける事を……。それが、人格が“罪”になる理由だよ」
「でもお姉ちゃんは、絶対そんな事しない!! 私が保証するって政府に話す!!」
「ノア……。ありがとう。でも世界政府って組織は……」
ソアラが諦め事を言おうとすると吾郎が言葉を被せた。
「お父さんもノアに賛成だな。やってみようじゃないか。話が通じる相手じゃないかもしれないが、最初から諦める事はないと思う。やるだけやって分かってもらえなかったら、また次の手段を考えればいい。まずは話をしてみよう」
「ゴローちゃんらしいわね」
「え!?」
背後から声が聞こえ、振り返る二人。
なんと驚く事に、声の正体はレミーだった。
「レミー! いいの!? 喋れる事隠してたのに」
「ソアラ、今まで隠しててくれてありがとう。それに、いいわよ。“お母さん”で」
レミーが喋っている事に驚く暇もなく、その発言に更に驚かされる二人。
「レミーがお姉ちゃんのお母さん!? なんで!? それに喋って……」
しかしレミーの声は吾郎には聞き覚えがある声だった。
「……いやノア。この声、ソラだ! ありえん! 夢でも見てるのか?」
「え!? お母さん? お母さんなの?」
「ゴローちゃん、これは夢じゃないわ。ノアも、驚かせてごめんなさい。いろいろ聞きたい事はあるでしょうけど、今日はもう時間も遅いわ。ノア、ソアラ、あんた達明日も学校でしょ? 着替えて早く寝なさい」
「えー、でも私まだお母さんに聞きたい事いっぱい……」
「返事!!」
「ひぃっ!! は、はい!!」
ソラの迫力に負けたノアは、ソアラと各自の部屋に戻って行った。
「はぁー、お母さんってあんなに怖い人だったんだ……。どおりで私、レミーによく叱られた訳だ……」
「ふふっ、そんな事ないよノア。お母さんはぶっきらぼうだけど優しい人だよ」
「ねえ、お姉ちゃん」
「ん?」
「おかえり!」
「ノア……。ただいま!」
「へへっ、じゃあまた明日ね。リオも心配してたから明日安心させてあげてね!」
「うん、ありがとねノア。そしたらまた明日! おやすみ!」
「うん、おやすみ!」
ソアラの告白、更にはレミーの正体と驚きの連続であったものの、ソアラ失踪事件は無事解決した。この先何があろうとソアラを守って見せる。そんな事を決意しつつ、今はただソアラが戻ってきた喜びを噛みしめるノア。
そして、人の心を教えてくれた母、甘えん坊だけど優しい妹、全てを受け入れてくれる父、そんな家族の優しさを感じ、安堵に包まれるソアラであった。
――隣の家――屋根
「……脅しは成功したのに、結果は失敗……。あーあ、見てらんないな~、ああいうあったか家族?……一番キライなんだよな。さて、ここで事を荒立てても斑鳩さんに怒られるだけだし、報告報告っと。見つけたの俺なんだし、きっと褒めてもらえるよね」
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