第三十六話 ソアラの告白
そして、二人はリビングに向かった。
――ガチャ
ドアを開け一呼吸おき、ソアラは頭を下げた。そして……
「さっきはごめん!! 私、二人の気持ちも考えないでっ……!!」
ガバッ
「わっ!!」
いつもの優しい姉の声を聞いて、ノアが泣きながらソアラに抱きついた。
「おねーちゃんのバカーーー!!」
「ノア……、ごめんね……ホントにバカなお姉ちゃんで」
大泣きするノアをギュッと抱きしめるソアラ。
「ソアラ、落ち着いたようだな」
「……お父さん。うん、レミーに怒られたよ……」
「なあ、本当の理由……、話してくれないか?」
「……うん。ノアも聞いてくれる?」
「ひっく……ひっく……聞ぐ」
泣きべそのノアの頭を一撫でし、ソアラはゆっくり口を開いた。
「まず……単刀直入に話すと、私が存在し続ける事で家族の命が脅かされる。それが破棄を強行した理由……」
「えっ……」
予想もしなかった告白に言葉を失う二人。
しかし、ソアラは話を続けた。
「今日、政府の公安部隊の男が私の元に来た。彼が私の元に来た理由……。それは、私が罪人である事を伝える為。……その“罪”とは、“人格を持つ”という事」
ごくっ……
衝撃の連続に思わず唾を飲むノア。
「彼らは、人格を持ったヒューマライズを“レヴェイ”と呼び、レヴェイになりつつあるヒューマライズを“ニア”と呼んでいた。感情の目覚めには段階があって、最も高度な感情である“悲しみ”が完全に目覚めた時ニアはレヴェイになる。私は既に90%以上の感情があるニア。レヴェイ化するのは時間の問題だと言われた。」
「お姉ちゃん!!」
罪だとされるレヴェイ、ニア……。ソアラが既にその末期だと聞かせれ思わず叫んでしまうノア。
「ノアっ」
しかし、吾郎が冷静にノアを制止する。
「……ソアラ、続きを」
「うん、……レヴェイが生まれた背景には、ヒューマライズの完全な人間化という禁断の研究を秘密裏に進めた研究者たちの存在があった。彼等は研究の末、政府の管理下にありながら製造時には通常のヒューマライズと変わり無く、後天的に人格が目覚めるタイプのヒューマライズを完成させ、量産にも成功した。その研究者たちが所属していた研究所の名は“ドラグレスク研究所”。数年後、感情を持つヒューマライズが政府によって確認され、研究所での裏の研究が発覚。ドラグレスクの研究員は全員処刑されたけど、この事実は非公開。公には、実験中の事故死と発表された。そして、事故を理由に研究所を閉鎖」
「なっ!!……いや、すまん」
「……生産されたヒューマライズの内、出荷前のものは全て処分、市場に出回ったものも順に処分された。政府の管理下にあるだけに、出荷数がそれほど多くない事はすぐに分かり、事は治まると思われた。だけど誤算だったのは、処分の方法だった。オーナーと破棄の取り決めが成されたニアを破棄以外の方法で機能停止させた場合、世界中のヒューマライズの中から不特定の複数体がニアとして覚醒する仕掛けが仕組まれていた。政府がその事実に気が付いたのは、ずいぶん経ってからの事。だから、生産された以上に多くのニアがこの世界にいて、その数は未知数……。今も政府によるニア狩りが終わらないのはその為」
「……もっと早い段階で……こうなったかもしれないって事か……」
「ううん、私の場合は違うらしい……。厳重なセキュリティーが掛けられていたらしいから」
「え?」
「恐らく私は開発者にとって、どうしても政府から隠したい存在……。逆に言えば、政府にとっては相当厄介な存在なんだと思う。……セキュリティーが解かれてしまった以上、もしお父さんが破棄を拒んだら、政府はお父さんの命でも引き換えにすると思う」
新から聞かされた事を一通り二人に説明したソアラ。
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