第三十三話 失踪
驚きの余り言葉が出てこないソアラ。
「まあ、ヒューマライズのメモリーに“レヴェイ”の情報があるわけないから当然だよね」
震えだすソアラ。
「からかってごめんよ。キミが僕の隙を見つけようと必死に探ってるのがあまりに滑稽だったから。ふふっ、いや~、10年以上も放置された“ニア”は遊び甲斐があったよ」
「……くっ!」
「さて、遊びはここまで。本題に入ろうか。今日僕がキミの前に現れたのは、キミが犯罪者だという事の所以を話す為。そして、“破棄”されなければならない存在なんだと理解してもらう為だ」
――キーンコーンカーンコーン
「それじゃあノア、また放課後ね~!」
「うん! またね、リオ!」
そのころ、学校では一限目が始まろうとしていた。
ッガラー……
「はい、席に着けー!」
「(あれ? 一限目は、ソアラちゃんの現代宇宙工学のはず……)センセー!」
「ん、なんだー、尼崎」
「あの、ソアラちゃ……じゃなくて、式神先生どうかしたんですか? 一限目は現代宇宙工学だったはずですけど……」
「式神先生は家庭の事情で今日はお休みだ。急ではあるが明日の一限目と入れ替えで今日の一限目は四次元座標理論Ⅰだ」
「(っえ? 朝会った時はいつもと何も変わった事無かったけど……、そのあと何かあった? ってかノアは、この事知ってるのかな?)」
何か胸騒ぎを感じるリオ。
「センセー! すいませんちょっとトイレに……」
「はぁ~、授業始まって早々なんだ。始まる前に行っておきなさい!……まあいい、早く行って来なさい」
「はーい、ごめんなさーい」
リオはノアにソアラが学校に来ていない事を伝える為、ノアのクラスに向かった。すると丁度ノアが教室から出てきた。
「あっ!! ノア!」
リオに呼ばれて振り返るノア。
「リオ? (あ! そっか。リオ、一限目お姉ちゃんの授業だったんだ。)」
「ノア、ソアラちゃん学校来てないって……」
「リオ、ごめん! 心配かけて……。私も今、先生からお姉ちゃんに連絡つかないって聞かされて。お父さんに連絡ついたみたいだけど、お父さんも何も知らないらしくて……。今から許可もらって探しにいくところで……」
「ノア、私も行くよ!」
「だーいじょーぶ! たぶん、何ともないから。あの頑丈なお姉ちゃんに限って事故や誘拐なんて事は無いだろうし。私も見つけたらすぐ学校戻る!」
「でも……」
「じゃ、ちょっくらお姉ちゃんに渇入れてくるから。また学校で!」
そう言ってリオを振り切るように走っていくノア。リオに心配は掛けまいと、口では楽観的な態度を見せるものの、内心では嫌な予感を感じていた。
「なんかあったら言ってねー! 力になるからー!」
「うーーん! ありがとー!」
ノアは、一旦通学路を探しつつ道場の方に向かった。すると、途中で同じくソアラを探している吾郎を見つけた。
「おとーさーん!」
「ノア!! 先生に聞いたのか!?」
「うん! お姉ちゃんの“ディフ”《携帯型通信端末》の電源切れてるみたいで連絡つかないって聞いて私も探しに来たけど、見つからなくて……」
「……そうか。家にも戻ってないし、こっちにもいなかった」
「う、うぅぅ……お父さん」
リオの前では強がっていたが、吾郎の顔を見て緊張が緩み、不安が込み上げ涙を浮かべるノア。
「大丈夫だ、ノア! お姉ちゃんは必ず見つかる! 思い当たる場所を手当たり次第探そう!」
「……うん」
かくして、いくつかの謎を残しソアラは失踪した。
二人は、日が暮れるまで探し続けたが、ソアラが見つかる事は無かった。
解決策を見出せずに一日が終わろうとしていた……。
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