第三話 戦闘特化型
それから暫く歩いていると、前方に怪しい人影が見えてきた。
「レン、なんか前からヤバそうな奴らが歩いてきてる。関わらない方が良さそうだ。一旦引き返えそう」
「確かに。あの者たちは見たところ賊の類です。それが得策と私も判断します」
ロキたちは、一旦引き返そうと振り返った。
しかし、既に後ろには仲間と思われる賊の姿があった。
「くっ……、後を付けられていたか」
「すみません。私が周りに注意を払っていれば……」
「いや、お互い様だ。それより、この状況をなんとかしよう」
ロキたちは、見る見るうちに賊に囲まれてしまった。
賊の頭らしき男がロキの前に立つ。
「おー、にーちゃん! 可愛い女連れで羨ましいこって。楽しいデートの最中申し訳ねぇんだがよ、俺たちゃ金に困っててよぉ。ちっと恵んでくれねぇか」
金を請求する賊だが、レンを買ったことで一文無しのロキ。
「生憎、金に困ってるのは俺も同じだ。他人にやれる金なんて無いんだ。そこ、どいてくれ」
強気に出るロキ。
「生意気なガキが!……よぉーし、なら仕方ない。そっちの嬢ちゃんの体で払ってもらうことにすっか! どうせヒューマライズだろ? こんな可愛い人間もそうそういねーからな」
そう言うと、賊がレンに近づき目を覗き込んだ。
レンの目が赤くなる。
「やっぱりな。……一応……よし、“戦闘特化型”でも無さそうだ。まあ、こんなガキがそんな代物持ってる訳ないがな……。おい、野郎共!この女、好き放題やってやろうぜ!」
「ういぃぃぃーーー!!!」
「レン、逃げるぞ!!」
レンの腕を掴み走り出そうとするロキだが賊に蹴り飛ばされる。
そして、レンは男たちに捕まってしまった。
「おい!! やめろーーー!! レンに手を出すなーーー!!!」
起き上がったロキが、怒りに任せて賊の頭に殴りかかる。
喧嘩の仕方など知らないロキだが、不意をついた一撃が顔に入った。
「っ!! うぐっ……くっそ! ……てっめぇ、やってくれるじゃねぇか! 予定変更だ! おい野郎共! お楽しみは後だ! まずはこの生意気なガキに世間の厳しさを思い知らせてやれやーー!!!」
「ういぃぃぃーーー!!!」
20人はいようかという男たちが一斉にロキに襲い掛かる。
「レン!! 今の内に逃げろ!!」
そう叫ぶとロキは、圧倒的不利の状況を顧みず、大群に立ち向かう。
「うおぉぉぉーーー!!」
しかし……
「ぐはっ……うぐっ……がはっ……」
「おらおらー、にーちゃん、さっきまでの威勢はどうしたよー? お頭に当てた一撃はマグレだったのか?」
元々闘い方など知らない上に、大群相手……。ロキはあっという間に追い詰められてしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……(くっそ……、ヤバいな……。まぁ、レンだけでも逃げられたのなら良しとしよう)」
そんなことを思いながら、ロキはレンのいた方に目をやる。
するとそこには、立ったまま下を向き、なにやら様子がおかしいレンがいた。
「ばか!! レン、なんで逃げない!! 早く逃げ……っぐは!」
「他所見なんて余裕だな、にーちゃん!」
賊が、容赦なくロキに攻撃する。
その瞬間、レンが賊に飛び掛かった。
「ぐわぁぁぁーー……」
凄まじい勢いの突進で、賊が激しく吹き飛ばされる。
それを見た複数の賊がレンに攻撃を仕掛ける。
「ふざけやがって!! このアマーーー!!」
しかしレンは、それをいとも簡単に受け止めた。
そして……
「はぁぁっ!!」
「ぐっ、だぅぁぁぁーーー……」
レンが気合を入れると、周りに凄まじい風が生まれ、襲い掛かった賊を一気に吹き飛ばした。
部下が次々とやられていく様に、腰を抜かす賊の頭。
「……うっ、こ、この女……目は赤かったはず……」
下を向いたままだったレンが賊の頭のほうを向き、目を見開いた。
「!!!……あ、青……!」
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