第二十九話 眠れない夜に
それから2時間くらいが過ぎた頃だろうか……、テントの入り口から僅かに差し込む光を感じて吾郎が目を覚ました。
気がつくと、横で寝ていたはずのソアラの姿がない。
「……ん? ソアラ……? 外か?」
吾郎が外に出ると膝を抱えて座っているソアラがいた。
「ソアラ?」
「あ、お父さん……」
「どうした? 眠れないかのか?」
「……うん、ちょっとね。ごめんね、起こしちゃった?」
「いや、気にするな」
吾郎はソアラの横に座った。するとソアラが目線を吾郎に向ける事なく、呟く様に言った。
「……お父さん。私、このままでいいのかな……」
吾郎は驚いた。感情が無いはずのソアラが胸の内に思いを秘めていたかのような話し方をしたのだ。それは、明らかに“プログラムのよる状況に応じた対応”ではない。
その言葉には意思が感じられた。
「ま、また突然だな?」
「ははは……。ごめんね。ただ私……、ヒューマライズなのにこんなに幸せでいいのかなって……」
その言葉は、ヒューマライズという存在を象徴するかの様な言葉だった。
「……なあ、ソアラ。お父さんはヒューマライズだから幸せを感じてはいけないなんて思わないよ。今ソアラが感じてる事をそのまま受け入れればいいんじゃないか?」
「え?」
「幸せだと感じるならその気持ちに遠慮する事は無い。お父さんも、お前にそんな風に思って貰えて幸せだ。その気持ちに遠慮はしないよ」
「お父さん……」
吾郎の顔を見上げ、嬉しそうに微笑むソアラ。その表情を見て一安心する吾郎。
そこへ……。
たたたっ……シュタッ!
「おっとぉ!?」
「え? レミー?」
レミーが起きてきていつもの様にお気に入りの吾郎の頭の上に乗ってきた。
「……んもう、レミーのバカー! ノアの顔踏んだでしょー!!」
ノアもレミーに起こされてしまったらしく不機嫌そうにテントから出てきた。
「ん? ……あれ? お父さんとお姉ちゃん起きてたの?」
「うん、なんだか眠れなくて。ごめんねノア、起こしちゃった?」
「ううん、悪いのはレミーだよ! それより二人で何か話してたの? ノアも仲間に入る~!」
そう言ってノアは吾郎とソアラの間に座った。
「よっと! へへっ!」
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