第二十三話 不穏な兆し
――ある日の事……。
それは、二人でリオの家で遊んだ帰り道だった。
ノアとソアラが、楽しそうに話をしながら歩いていると……、幼稚園でノアをいじめる男の子たちが現れた。
「あ! かーちゃんのいないノアだ!」
「……」
無視して通り過ぎようとするノア。
「なんだよ! 無視する気か?」
「おい! 今日は変なヤツと一緒だな。誰だ? そいつ」
一人がソアラを変なヤツと呼んだ瞬間、ノアの足が止まった。
「変なヤツじゃないもん……」
小声でつぶやくノア。
「なんだよー! 聞こえねーよ、バーカ!」
「お姉ちゃんは変なヤツじゃない!! あんたたちの方が変なヤツだーー!!」
今まで一度も刃向う様子を見せた事の無いノアが大声で怒鳴り、少年たちも一瞬たじろいだ。
しかし、それが裏目に出てしまった。
逆上した少年の一人がノアに石を投げ付けたのだ。
「う、うるせーんだよ! これでも喰らえ!!」
ビシッ!!
ソアラが間に入り、ノアをかばった。石は額に当たり、血を流しながらも少年たちの前に立ち塞がり、睨みつける。
「この場から立ち去りなさい」
「へん! 俺たちに命令するんじゃねー! 変なヤツのくせに!」
ソアラに向かって更に石を投げつける少年。それを素手で受け止めるソアラ。一瞬の沈黙……、そして徐々にソアラの目が青く光り出す……。
青く光る目……それは、戦闘特化型のヒューマライズの特徴だった。
「お、お姉……ちゃ……」
「ひっ!! うわぁぁ……わあぁぁーー!!」
幼い子供にも伝わるその圧倒的は威圧感。恐怖を感じ、少年たちは逃げ出す。
しかしソアラの様子がおかしい。
青い目の力をコントロール仕切れていない。そして次の瞬間、少年たちに飛び掛かろうとした。
しかしっ!
「お姉ちゃんダメっ!!」
ノアが止めた。
「喧嘩だめ~~~っ!! おどうざん言っでだぁぁ~~!!」
混乱し言葉も目茶苦茶。しかし、そんな必死な妹の姿を見てソアラは我に返った。
「……ノア、ごめん!! ごめんね!!」
「う……あ゛ぁぁぁ~~~!! おねえぢゃ~~ん!!」
暫くソアラに抱き着いたまま泣き続けたノア。やがて徐々に落ち着きを取り戻した。
「……お姉ちゃん……、血……。ノアのせいで……ノアがあの子たち怒らせたから……ごめんね」
泣きながらハンカチでソアラの血を拭くノア。
「ありがとう、ノア。でも大丈夫。それよりノアに怪我無くてよかった」
笑顔で話すソアラ。それを見てノアも笑顔を取り戻す。
「へへっ、うん!」
そして再び二人は家路に就く。
帰宅後、ノアが一連の出来事を吾郎に話す事は無かった。
それを話せば、ソアラを否定してしまう事になってしまうのではないか。幼心にそんな事を思ったのかもしれない。
幸い、被害も出る事も無く、あの一件以来、ソアラの目が青くなる事も無かった。
しかし、明らかな違和感が残った。
そしてそれが世界を揺るがす事態……、その兆しだったという事を、今はまだ誰も知らない。
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