第二十二話 力のコントロール
「ご、ごめん! ノア、大丈夫?」
「う~……、お姉ちゃん、つよい……」
力はほぼ互角。しかし、センスで勝ったソアラに軍配が上がった。
「うむ! お疲れさん二人とも」
「負けちゃった……。でも楽しい! ねえ、お父さんがお姉ちゃんに戦い教えたの?」
「いや、お父さんは何もしてないよ」
「え? じゃあ何で?」
「私が、ヒューマライズだからだよ」
「え? ひゅーまらいずって……ロイドやアイラ(吾郎の弟子たち)と同じって事?」
「うん。でも私はロイド達ほどは戦えないけどね」
「えー、ずるい! じゃあノアもひゅーまらいずがいいー! そしたらもっとつよくなれるかもしれないのに~!」
変なわがままを言い始めるノア。そんなノアを宥めるかのようにノアの頭にポンッと手を置く吾郎。
「ノア、お姉ちゃんの事黙っててごめんな。中々言う機会が無くてな」
「……」
「でもなーノア、ヒューマライズだとか人間だとかは気にしなくていいんだぞ。稽古すればノアだってお姉ちゃんやロイドたちにだって勝てるようになるかもしれない」
「う゛~、じゃあがんばる!」
「そうだよノア。私、ノアがこんなに強かったなんて驚いたよ!」
「へへへ~! それほどでも~」
「でもノア、幼稚園でお友達と遊ぶ時は力加減してるの?」
「分かんない。でもお父さんが喧嘩はダメって。あと、これ」
そう言ってポケットから輪のようなものを取り出したノア。
「これは?」
「これは、いつも足にはめてるヤツ。道場の時は取っていいってお父さんに言われてて」
「それは、ミサンガってお守りだ。ノアのは特別製で力を抑える気を込めてあるんだよ」
「そうだったんだ。それで普段は気が付かなかったんだね」
「ふ~ん、ノアはよく分からないけど」
「ところでソアラ、これからもノアがいる時だけでも一緒に稽古してみないか?」
「ノアももっとお姉ちゃんと戦いたい!」
「うん、いいけど、私じゃその内ノアの相手としては役不足になっちゃうと思うなぁ」
「いや、お父さんは育成師だ。きっとソアラも強くしてみせるさ」
「ねぇ、じゃあさノアとお姉ちゃんが大人になったら三人でどーじょーやろうよ!」
「おっ! ノア、お父さんの道場を継いでくれるのか! そりゃ初耳だな! お父さん嬉しいぞ!」
「だって戦いごっこ面白いもん!」
「あははー……。私にできるかなぁ。でもノアがそう言うなら頑張るね!」
その後も、ノアとソアラも交えて稽古は続き、一日が終わった。
吾郎の提案はソアラに戦闘を教えたい目的では無く、ノアと同じ娘として同じように育てたいという思いからであったが、この日以来、週末には稽古をするようになったソアラは、吾郎の予想以上にどんどん腕を上げていった。
ソアラの場合はノアとは違い、見た目は幼いにしろ頭脳はヒューマライズである為、普段から力のコントロールは出来ていた。
しかし、事件は起きてしまった……。
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