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最終話  若者たちの明日

 ――朝


「(……え?)」


 目が覚めるレン。


 カバっ!!


 ハッとして体を起こす。


「うそ……私、あのまま寝ちゃった……?」


 慌てるレン。


 更には……


「……ってここ、私の部屋だ……。なんで?」


 セミダブルの少し広いベッド……――




 ――と、横に気配が……


「ふあぁぁぁ~、はぁ~寝た寝たぁ……」


「え……? うそ……そんな……」


 そこに居たのは……


「うわっ!! うそ? ここ俺の部屋じゃない!? 話が違うじゃないかっ! すまん、レンっ! これは俺も想定外で……――」


 もう、二度と会えないはずの……、ロキだった。


 バっ!!


 思わず抱き着くレン。


「わっ!」


「ロキ……、ロキなんだね!」


「ああ……た、ただいま」


「ただいま……じゃないよ!!」


「え……?」


「人の気も知らないで!!」


「あ……すまん」


「私……夢でも見てるのかな……?」


 涙が溢れるレン。


「ははっ! 俺もさっきまで夢見てた。まだ頭がボーっと……痛っ!」


 レンがロキの頬をつねった。


「へへっ! 夢じゃない。ロキが……生き返った!!」


「何から話せばいいか……。だけど、そもそも俺は死んではいないんだ。最後はその覚悟もしてたけど、結局最後まで俺はまた助けられたって話だ。……ていうかレン、当たり前のように受け入れてしまってたけど、破棄の前の記憶が戻ったみたいだな」


「まあね! 色々あったんだよ、こっちも!」


「そ、その……お前と最後に会ったのは、俺が牢獄を脱走して闘った時……。以前の記憶が戻ったのなら、お前にその時の記憶は無いのかも知れないけど。……その時はもうお前を救う事さえ出来ないと絶望してた……。だからホントに良かった!」


「あの時はごめん……」


「あの時の記憶もあるのか?」


「うん、私も話せば長くなっちゃうけど……。ていうかロキ、あの時が最後じゃないよね? 私とカルマがジャネクサスに追い詰められた時、ロキが現れて助けてくれなかったら今頃、私はいない……」


「……あれは、俺じゃないんだ」


「え?」


「その前にお前に言っておくべき事がある」


「何?」


「レン。……俺は人間じゃない。ヒューマライズだ」


「じゃあマルクスさんが言ってた事……」


「そっか、マルクスさんに聞いたんだな。続きは……、うん、ゴローじいと一緒に聞いてもらいたい」


「うん、そうだね! お父さんにも早く顔見せてあげなきゃ!」


「え? お父さん?」


「あ、そっか。まあ、私の方も色々話すよ。じゃあ行こ!」



 ――リビング


 パリーン……――


 朝食の支度をしていた吾郎は、驚きのあまり皿を落とした。


「ロキ……ロキなのか!?」


「驚ろかせてごめん、ゴローじい。……その、ホントはもっと普通に帰って来たかったんだけど、色々あって……、えっと……ただいま!」


 吾郎の目から大粒の涙がこぼれる。


「……レンが一人で帰って来た時……てっきりもう……。お前は、後先考えず突っ走るから……。心配掛けおってからに、バカ者が!!」


 駆け寄る吾郎。

 そして、ロキを抱きしめる。


「ゴローじい……、ふぃんふぁい掛けてごべん……」


 ロキも涙がこぼれる。


「ゴローじい、レン……それに……え?」


 話をしようと切り出しかけたロキだが、ショコラとオランジュの姿が目に入った。


「ソフィア様の敵!」


「ちょ……なんで? て事はソフィアも居るの?」


「ソフィア様の敵!」


「いやいや……めちゃくちゃ睨まれてるんですけど……」


「ショコラさん、オランジュさん、ロキは敵かもしれないけど、今はちょっとだけ休戦しよ」


「いや、レン……。敵じゃないって言ってほしいんだけど……」


「ははは……。でもソフィアちゃんが居なくてよかったね。居たら喧嘩だもんね」


「いやいや、それも止めてくれ……。てか、どういう事?」


「敵よ……。一時休戦してやる。……説明するとソフィア様は、じい様の孫になられたのだ」


「それと、レンの妹にもな」


「説明が突拍子もないんですけど……」


「ロキも私とお父さんに話があるんでしょ?」


「ああ、ていうかレン、その“お父さん”って呼んでるって事はもしかして、ソアラさんの記憶が?」


「うん、何故だか分からないけど、今まで生きてきた時間全ての記憶があるんだ。だから、ノアが私の妹だって記憶もある。ノアが小さかった頃や、お母さんの事も」


「そっか……。ははっ! じゃあ、相関図なんて書くとしたら複雑になるな」


「どういう事?」


「ゴローじいも聞いてくれ」


「ん?」


「実はさ……ノアさん、俺の母さんなんだ。あの人は未来で俺を作った。……さっきレンには話したけど、ゴローじい……、俺、ヒューマライズなんだ」


「……そうか」


「……え? それだけ? もっと驚くかと思った」


「そんな気もしておった。ノアとお前はよく似ておる。それと、ヒューマライズだとか人間だとかはわしにとっては一緒じゃ。驚く事も無い。……そうか。ノアは他の星ではなく、未来におるのか。元気でやってるのか?」


「うん! 元気だよ。厳しくも優しい人。それが俺の母さんだ」


「ははっ! ソラに似たかな」


「ゴローじい……、だから俺、本当にゴローじいの孫なんだなって……。なんだか嬉しいよ」


「ああ、ロキ、よくここに辿り着いてくれた。ノアに感謝せねば」


「ゴローじい……」


「じゃあロキは妹の子だがら私にとっては甥っ子?」


「……するとソフィア様にとっても甥っ子……。敵が、ソフィア様の甥っ子だと? そんな馬鹿な……、俺はどうすればいい……」


「オランジュ、おちつけ。甥っ子など大した問題じゃない。敵は敵だ」


「……いや、もう“敵”ってやめて。怖いから……」


「ふふっ! ショコラさんもオランジュさんもめちゃくちゃ強いから覚悟したほうがいいかもよ?」

「お、俺だってお前と離れてからレイチェルさんに稽古つけてもらって……。……そうだ、ゴローじい、レイチェルさん知ってるよね? 育成師だし」


「ああ、かつてはよく稽古を付けてもらったよ」


「……レイチェルさん、亡くなったんだ」


「なっ……! あの不老長寿のレイチェルさんが……」


「あの人がいなかったら、今この世界は滅んでいた。人類もレヴェイも皆……」


「なっ!!」


「……レン。信じられないかもしれないけど、あの決戦の三日前、ジャネクサスによってカルマは殺されているんだ」


「何言ってるの? カルマは生きて……」


「ああ、この時間軸ではな」


「言ってる意味が……」


「なるほどな……」


「……うん。ゴローじいはあの人に稽古つけてもらってたから、分かるんだね」


「……ああ。時空の操作……。そういう事じゃな」


「え?」


「ああ。時を戻したんだ。……正確には、俺をカルマがやられる前の時間、場所に送った」


「……その代償に彼女は……そういうことか」


「……うん。あの人は時空を操る力の持ち主だった。ハザマを作ったのもあの人だ……。時間を戻すという事は、そんな力を持ったレイチェルさんでさえ一筋縄ではいかない業だったんだ。……そしてあの人は、それを分かった上で俺を三日前に送った……」


「……なんて人じゃ」


「そんな……、じゃあ今私たちがこうしていられるのは……」


「……ああ、レイチェルさん無しでは叶わなかった……」


「……」


「ゴローじい。……レイチェルさんさ、ゴローじいのお母さんが願った世界を繋ぐって言ってた。

 あの時、直接それを聞いたのはもう一人の俺だったけど、俺にもその声は届いた」


「……え?」


「……それから、ゴローじいに教えてもらった俺の料理を美味いって……、ゴローじいのお母さんみたいな味だって最後に褒めてくれた!」


「……母さんの……。レイチェルさん!」


 その瞬間吾郎の目から涙が溢れた。


「……それと、俺を生かしてくれた人がもう一人いる。……それが……“もう一人の俺”だ」


「もう一人のロキ……?」


「ああ。……記憶が戻った時、俺の人格は本来消えるはずだった。俺は本来存在しないイレギュラーな存在……。バグから生まれた異質な存在なんだ」


「え!?……じゃあ元々ロキは……」


「そうだ。本当のロキは、もう一人の俺だ」


「そんな……」


「……だけどあいつ、記憶が戻った時にそのまま消えるはずだった俺の人格を、消えてしまう前に隠した」


「隠した? ロキは、もう一人のロキと会ったの?」


「ああ。記憶が戻ったって言ったけど、正確にはそうじゃない。俺は元々存在しなかったんだから、そもそも記憶なんて無かったんだ。つまり俺は、あいつに会う事でこの事実を知っただけって事だ」


「どうやって……会えたの?」


「ドラグレスク研究所があった場所……。縁あってそこに辿り着いた。そこで母さんの声がして……。その後だ。あいつの声がして。そこで俺はアイツからこの事実を聞かされた」


「ドラグレスク研究所……! マルクスさんが言ってた場所だ」


「そっか……、それも聞いていたんだな」


「うん……。あの戦いで私とカルマがジャネクサスと闘った事を話した時、私、マルクスさんにロキが私の身代わりになって死んだ事を話した……。そしたらマルクスさんが私たちと出会った時の事を話してくれて……」


「……マルクスさん、あの時俺が何の為にこの世界に来たか全部知ってたんだな。その上で俺に全てを語らなかったんだ。あの時あの人言わなかったけど、一番の想定外は目の前に現れたのがアイツじゃなくて俺だったって事だったんだな」


「……言えなかったって言ってた」


「……優しい人だ。……たぶんあの時の俺にこの事実を受け止められるほどの覚悟は無かった……」


「……でも最後は自分が消えるって知っても皆を守ろうとしてくれたんでしょ」


「え? なんで俺が母さんに話した事を?」


「そんなあなたの覚悟をもう一人のロキも聞いていた。それであなたを生かしてくれた」


「な!? お前、見てたのか?」


「見て無くても分かるよ」


「え?」


「あの時私の前に現れたロキはどこか冷めた感じだったけど、眼差しはそうじゃなかった。誰かの何かを守ろうとしているかのような……。それは、ロキの“覚悟”だった。それしかないよ」


「あいつ……。そうだ。最後に思念の中で俺はあいつと話す事ができて……。でも話の途中で一瞬意識が無くなって……、気が付いたら目の前にいたあいつが消えていた。その場所がハザマで、あいつが俺をそこに送ったって知ったのは、全てが終わったあとだ」


「……」


「あいつはそのままジャネクサスと闘って目的を果たした……。“loki”はジャネクサスの一部。つまり、同一人物。奴と融合し、その荒み切ってしまった心を浄化し、本来持っていた心を戻させる事が、目的だった」


「……カルマが最後に見たジャネクサスが一瞬ロキに見えたって……」


「そうか……。カルマ、融合した後のあいつに会ったんだな……。いや、でもカルマの知ってるロキは俺だ。あいつ、なんで……」


「私だってあの時目の前に現れたのはロキだって思ったもん。カルマだって同じだよ。……それとさ」


「え?」


「忘れないであげてね」


「レン……。ああ、忘れる訳ない。俺はあいつなんだからな。あいつも未来できっと母さんたちと一緒に俺たちに期待してくれてるはずだ。俺たちがミルシェの遺志を繋げる事を」


「うん」


「……それからレン、さっきまで町と草原の夢を見てただろ?」


「え?」


「お前に出会った時の俺も同じだったんだ」


「どういう……事?」


「ゴローじい、ここから西に行ったところに町はある?」


「西? 西に町など無い。数キロ歩けば海じゃからのう」


「うそ……」


「レン……俺とお前はお互いの夢の中で出会ったんだ」


「え? じゃあ、今も夢?」


「いや、目を覚ませばそこは現実……」


「ちょ……まだ言ってる意味がよく分からない……。ねえ、ショコラさん、オランジュさん、私達昨日、西の町で一緒に料理を作ったよね?」


「ああ。確かに一緒に料理をしたが、町はここから南だ」


「え?……あ、じゃあ、帰り、草原の前で私だけ残って二人は先に戻ったよね?」


「レン、大丈夫か? 草原なんて無かったぞ。三人で一緒に帰ってきたじゃないか」


「……そんな」


「そういう事だ。あの町とあの草原は母さんが作った仮想の世界なんだ。……難しい事はよく分らないけど、本来バグなんかをテストする為の仮想空間として使っていた空間らしくて。どういうわけか、もう一人の俺はイレギュラーにもそこに紛れ込んでしまったらしい」


「……どうしてもう一人のロキはハザマに入ったの?」


「……いや、入ったというより未来からやって来るにはハザマを利用するらしくて、この時代に来る途中の出来事だったんだ。本来、ハザマから出た先で目覚めるはずが、ハザマの中で目覚めた事が原因みたいだ」


「……私もそこに紛れ込んでしまったからかな。私は本来ジャネクサスが使っていたハザマの領域に隠されていたみたいなんだけど、ある日そこからいなくなったって……」


「ああ、恐らくはそうだと思う。……その瞬間、“俺という人格”が発生したみたいなんだ。そして俺はそんな事にも気づかず、レンと出会い、そのまま目を覚ました。一方でもう一人の俺はその後、母さんの記憶を辿ってレイチェルさんとハザマの存在を知り、本来もう一度干渉する必要の無いハザマに入って置き去りにした俺を見つけ出そうとした……。少し時間軸が過去にずれた世界で……。ここから俺とあいつがもう一度出会うまで時間がずれたままそれぞれが旅をし、俺が母さんのところまで辿り着いた事でようやく時間が繋がった」


「……」


「そんなイレギュラーさえ起こらなければ、あいつはそのままマルクスさんに会って、ドラグレスクで母さんと目的を再共有したあとジャネクサスと融合し、未来へ戻るという最短での目的を果たすはずだった。……もしかしたら俺がいなければ、レイチェルさんだってまだ生きていたのかもしれない……」


「でも、あなたが居たから私はあなたに出会えた」


「……レン」


「……ごめん。レイチェルさんが亡くなっても……とかそういう事じゃなくて、ロキが自分の存在を否定しようとしてたから……」


「ああ、分かってる。ありがとな」


「話を戻すとつまり、私とロキはハザマの中でノアの作った空間に紛れ込んでそこで出会った……。そこは現実とは違う仮想の空間だけどそこで共有した時間は互いの記憶には共通認識として残る。で、目が覚めるという切っ掛けで現実と繋がるっていう仕掛けだった……って感じ?」


「そうそう、そんな感じだ!」


「だったらさっき、私もロキも目が覚めて、ただハザマから出てきただけって事?」


「ああ、そういう事。最初に出会った時は俺、現実でも草原で野宿してたから目覚めた場所に疑問も感じなかったけどな。別に俺もレンも夢の中から飛び出したなんて御伽噺じゃないって事だ。まあ、俺は一つの人格から二人になったわけだから微妙に不思議な存在ではあるけど」


「どうして今まで……。もう何日も経つよ! 私、もうロキは居ないんだって……」


「悪かった! 脱出方法が分からなくて。迂闊に脱出しても時間軸のずれた世界に出てしまうかもしれなくて、迷った。同じ時間軸の場所に出るわけだから俺が迷った時間だけ世界も同じ時間が経過する……。途方に暮れてたんだけど、ポケットにこれが」


「……これ、脱出地点の座標と脱出後の場所?……式神家、ノアの部屋のベッドって書いてあるけど……」


「どうやら、もう一人の俺が用意してくれてたみたいなんだけど……。で、脱出する時はレンの名を呼べって」


「あ、じゃああれはやっぱりロキの声だったんだ」


「そう。俺がレンの名を叫んだらレンの夢にあの草原が現れるらしくて……。でも出てみたら、レンの部屋のベッドでビックリしたよ」


「おほんっ!!」


「わわっ! ゴローじい、そうじゃないよ! これは俺の意志じゃなくてっ……」


「ふふんっ! 何を今更。若い二人の間に口を挟むような事はせんわいっ!」


「はははっ(いやいや、ちょっと怒ってるじゃん……)」


「ともかくじゃ、こうしてロキも戻った。ソフィアが帰ったら写真の取り直しじゃ」


「ははっ! 相変わらずゴローじいは写真が好きだな!」


 ――



 ――二週間後


 被害状況の全体把握を終えたソフィアが、要救助者の救出を終えた事で一時帰還した。


「ただいま……」


「ソフィア様~~!!」


 ショコラとオランジュが真っ先に出迎える。


「ソフィアちゃん!! スフィアで見てたよー! 大活躍だったね!」


「……に、賑やかね」


 そして後ろからロキが現れた。


「おー、ソフィアおかえり!」


「げっ!! うそっ!? こ、こどおに!? なんで? 死んだんじゃ?」


「ははは……、相変わらずの反応」


「ソフィア様ご命令とあらばここで成敗を……と、言いたいところですが、その……こやつの飯は美味く、……あまり悪いヤツでもなく……」


「お、恐れながら、わ、私もオランジュと同意見でして……」


「……ふんっ! こどおに! この子たちに感謝しないさよ! あんたを家族と認めてあげるわ!」


「ど、どうも……(めっちゃ上から……)」


「よかったね、ロキ!」


「ははは……。あ、だったらさ、そろそろ、その“こどおに”ってやめない?」


「甘えるな! お前は一生こどおにだ。てか、あんたお料理上手なんだったら、早くご飯。お腹ペコペコなの、私は」


「は、はい……」


「はっはっは! なんだか、仲がいいようじゃのう。ロキとソフィアは」


「どこがっ!」


 ハモリる二人。ここはもう定番。


「あ、そういえばソフィアちゃん。ロキはね、ノアの子だったんだ」


「は?」


「ほら、マルクスさんが言ってたよね? ノアは未来に居て、ロキもその未来から来たんだって。なんと、それだけじゃなくてノアはロキのお母さんだったんだよ!」


「はは……、あ、あと俺ヒューマライズなんだ」


「それも聞いた。まあ、どっちでもいいけど……。それより、あんたどうりでノアの感じがするわけね」


「ほう、ソフィアは気が付いておったのか」


「まあね、言いたくなかったから言わなかったけど……。親子だって事までは流石に想像してなかったわ」


「よろしく! 叔母さん!」


「おばさっ……! あんた、その呼び方やめてくれる?」


「だって、レンの妹なんだろ? そしたら、母さんの妹って事にもなるから、俺からしたら叔母さんじゃん?」


「じゃあ、レンだってあんたの叔母さんになるけどいいの? “結婚”できなくなるよ! いいの?」


 ムキになるソフィア。


「け、結婚……!?」


 変に意識してしまい、真っ赤になるロキ。


「おほんっ!」


「ゴ、ゴローじい、違う、これはその……おい、ソフィア!」


「なに!? うっさいわね! 一人でテンパって……。それより、あんたノアに会う方法教えなさいよ。あんたがもう唯一の手掛かりなんだからね!」


「それは……」


「役立たず! いいわ、自分で探すから」


「……探すってどうやって?」


「おばあちゃんに聞く! おばあちゃんなら時空系の操作も得意だし、教えてくれるわ!」


「時空系の操作って……。おばあちゃんってレイチェルさんの事か……?」


「そうよ!」


「そうか……。お前も、レイチェルさんと面識あったんだな……」


「戦術の師匠よ。それ以外にも色々。ていうか、何でテンション低いの? 私とおばあちゃんが面識あったら、あんた困る訳?」


「……亡くなったんだ。レイチェルさん……」


「え?……ははっ! 何言ってるの? あのおばあちゃんが死ぬはず……」


「……ソフィアちゃん。ロキだってこんな事冗談では……」


「そんな……おばあちゃん……」


「……ソフィア、俺たちは託されたんだ。未来を悲しいものにしないようにって」


 悲しそうな表情を悟られまいと振り返るソフィア。


 そして……、


「……ロキ、あんた、おじいちゃんの後継いで育成師やりなさいよ! 出来るでしょ? ノアの子なら」


「なっ!? 育成師!?……てか今、俺の事“ロキ”って言った?」


「うっさい! 私だって“おばさん”は嫌だって事! で、やるの? やらないの?」


「なっ! そんな事突然言われても……そもそも俺なんかにゴローじいの後釜が務まるとは……」


「はあ……、もう! カルマといい、あんたといい男どもは器が小さいわね!」


「なっ!」


「……のう、ソフィア。この先も育成師は必要なんかい?」


「そうね。この二週間世界を周って、今はまだ言葉や法だけの統制は現実的じゃないって改めて思った。ぶん殴ってやらないと言う事聞かないヤツも多かったし。流石の私だって世界中の監視を四六時中一人でやるのは無理だし、世界中周ってぶん殴るのも疲れるし」


「いや……ソフィアよ、ぶん殴るのは如何なもんかと思うぞ……」


「私だって、いきなりは殴らないわよ。殴るのは手出して来た奴。つまり、私を見た目だけで判断してねじ伏せられると思ったら力尽くって手段に出るやつが多いって事。言いたいのは、そういうバカな奴らがバカな気を起こさない様に象徴かつ抑止力は必須って事よ」


「うむ、そういう事じゃな。……ロキ、わしが鍛えてやる。やってみんか」


「ゴローじい……。……うん、分かった。……ソフィア、俺、やるよ!」


「初めからそうしなさいよね。じゃあ、私はおばあちゃんに代わって育成師やる事にするわ」


「え? ソフィアも……?」


「なに? 文句あんの?」


「だって育成師って血筋が……、まあ俺もヒューマライズだから母さんの血が流れてるわけでは無いと思うけど……」


 そんなロキにショコラとオランジュが反論する。


「おい! ロキ、ソフィア様は我々をここまで育てて下さったんだぞ!」


「そうだ! 私たち二人は育成師に指南を受けてはいない。ソフィア様に指南を受け、ここまで力をつけた! つまり、ソフィア様は育成師の資質があられるのだ! それに比べ、お前はまだ一人もヒューマライズを育てていないひよっこ! よって、お前はソフィア様の後輩だ!」


「え? ソフィア、お前……。じゃあ、初めからお前が育成師やれば……」


「バカね。育成師は元々三人でしょ? 人数も数えられないの?」


「っぐ! ……そ、そうだな。分かりましたよ、先輩!(はぁ……、こいつのこの性格どっかの誰かさんにそっくりだな……性格まで指南されたんじゃないだろうな)」


「ふん! 分かればいいのよ」


「ふふっ! よかったね、ロキ」


「って、レン……、テキトーに言っただろ?」


「てへっ!」


「よーし! じゃあ、話が纏まったところで、写真じゃ写真!」



 かくして、記憶喪失の少年の記憶を取り戻す為の数奇な旅は、ここに幕を下ろした。


 しかし、託された未来へ向かう道のりは果てしない。若者たちは、その果てしない道のりを進んで行く……そう、ここからまた――


「よーし、それじゃあ皆いくぞー。せーの……ハイ、チーズ!」


「ニッ!!」 



 ――おわり――

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


小説の書き方も拙い素人です。

そして私自身、人類として生まれた一人であり、小さな存在ですが、今も止まない戦争や紛争、また便利を追求した先に出現したIAなど、人は進化しているようで退化している。または変わっていない。一番変えなければいけない本質の部分は変えることができず、変えてしまってはいけない部分だけを変えているように感じてなりません。

その存在意義すら危うい段階に突入しているのではと日々感じ、その思いを物語にしました。

私の思いは、ジャネクサスであり、ミルシェでもあります。

最後にロキたちがミルシェの遺志を継ぐ道を歩みだしたように、人類も思いやりの心を途絶えさせることなく、他者に手を差し伸べ、時に美味しい物を一緒に食べ、ニコニコ笑顔、多くは望まないし、独占もしない。困った時はお互い様。沢山あるなら分けてあげる。保育園、幼稚園で最初に習ったことをいつまでも!

そう願いつつ、

最後に思いを綴り、あとがきとさせていただきます。

ありがとうございました。

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