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第二十話  育成師の仕事

 あれから一週間が経った。

 ソアラは、日に日に色んな事ができるようになっていき、式神家での生活にもだいぶ慣れてきていた。

 しかし昼間のソアラの居場所を吾郎は気に掛けていた。と言うのも、ノアは幼稚園、そして吾郎は仕事だからだ。ヒューマライズとはいえ、娘としてソアラを育てている吾郎は、幼い子供を毎日一人にさせておくのは気が引けるのだ。

 結局、吾郎は悩んだ末に職場に連れてきている。幸い、吾郎は個人で道場の師範として働いている為そういった融通は利く状況ではあった。


 吾郎の仕事は世界でも数人しかできないかなり特殊な仕事だ。“戦闘特化型”と呼ばれる戦闘タイプのヒューマライズに戦闘技術を教える“育成師”という仕事を世界政府からの依頼を受け行っている。特殊業務につき、報酬はかなりのものである。


 ヒューマライズには戦闘特化型を含め3種のタイプが存在する。

 一種は、人々の生活を支援する“生活支援型”。会話や表情といった性能が最も優れており、人間に一番近いタイプがこのタイプだ。初回に限りだが、見た目の年齢を変更できるのは、このタイプのみの機能である。また、他の2種に比べると力が弱いが、介護の場面などで力仕事も求められる為、人間より大きな力は出せる。世界のおよそ8割のヒューマライズは生活支援型だ。


 もう一種は、災害現場や水中、更には宇宙空間など人間が生身では作業できない環境での活動を目的とした“非生存地域作業型”。耐久性に非常に優れたタイプで、10トンはあろうかという鉄骨なども持ち上げる力を備えているが、会話においては任務に支障がない程の能力だ。また、現在その全てを政府が所有している。


 そして最後に“戦闘特化型”。戦闘と聞くと争いを連想するかもしれないが、彼らの存在意義は戦争の抑止力である。

 数は極々僅かで、全体数の数千万分の1以下程度。数にしておよそ300体ほどで、非生存地域作業型と同じく、その全てを政府が所有している。

 戦闘特化型については、元々は種としては存在しておらず、非生存地域作業型製造時に極稀に発生する正規品より力の劣った奇形として扱われていたが、のちに性能が後天的に向上する事が確認され、研究が進んだ。そして、彼らの性能を戦争の抑止力となるまでに引き出せるのが、育成師と呼ばれる特殊な血筋の人間だけなのだ。それ故、育成師は民間人でありながら唯一政府から依頼を受ける立場にある。育成師の下で鍛えられたヒューマライズは、個体差はあるものの、初期スペックのおよそ100倍ほどまで成長を遂げる。とはいえ、彼らが大々的にその力を振うような場面は例が無い。それは勿論、政府の政策に多くの人々が満足している事が一つであろう。だが、良からぬ企てを起こそうとする者に対しては、彼らの存在が抑止力として意味を成している。更に政府は、その武力を本来の目的でのみ配備し、決して破壊行為などに使用はしていない。育成師たちは、そういった意味で政府を信用し、彼ら自身も戦闘特化型が平和を維持する為に必要であると考えているのだ。


「なあソアラ、毎日見ているだけだとつまらないんじゃないか? 何かおもちゃでも持ってきて遊んでてもいいんだぞ?」


「ううん、私、見てるの好きだから大丈夫だよ!」


「そ、そうか……。まあでも、今日は幼稚園も半日でノアももうすぐ帰って来るから、午後はちょっとノアの相手を頼むな」


「うん、任せて! お父さんはお仕事頑張ってね!」


 そんな事を話しているとノアが帰ってきた。


「ただいま~!」


「おかえり~、ノア」


「お姉ちゃ~ん!」


 ソアラに甘えて抱き付くノア。


「よし! ノアも帰ってきた事だ。お昼ごはんにしようか」


「うん!」


 昼食は吾郎の弟子たちと一緒に食べるのが式神家の定番である。戦闘特化型は会話や表情といった面においては、生活支援型ほど自然ではないが、日常に支障がない程度にはできる為、ノアも物心ついた頃から弟子たちとも仲がいい。

 大勢で和気藹藹とした時間を過ごし、あっという間に午後の稽古開始の時間になった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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