第百九十六話 被災地支援 その1
――翌日、ジュヴェルビークにソフィアの姿があった
「おじゃまするわよ」
「ああ、義手のメンテだろ? そこに座れ。今用意する」
「まあ、それはついでにお願いするとして、用件は別にあるわ」
「なんだ?」
ソフィアは、ジャネクサスに替わりソートリオールの指揮を執っている事、そして先の抗争で起きた世界各地の天変地異による被害の状況、それに対してソートリオール幹部に出した指示、それらを説明した。
「ジャネクサスとはまるで対極ともいえる方針だな。いいのか?」
「うん。だって全てを終わらすんじゃなくて、全てを繋げるって決めたんだから」
「……要はそれを手伝えと?」
「それだけじゃないわ。あんたには、私と一緒に政府の先頭に立って指揮を執ってもらいたい」
「なっ!……それは無理だ。今更人間たちと関わる事など……。俺はここの皆の日常を守る。それだけだ。間接的な支援なら可能な範囲でしてやるがな」
「あ、そ。意外と器が小さいのね。私の見込み違いだったわ。じゃあ、いいわ。……まあ、あんたにはあんたの考えがあるんだし、仕方ないわね。なら用は済んだから私は行くわ。あ、メンテはまた今度お願いするわ」
そう言って立ち去るソフィア。
「おい……」
しかし、既にソフィアの気配は無かった。
小一時間後……――
「……ちっ。……クリオネ、俺だ」
「どうした?」
「話がある。ノイと二人で俺の部屋まで来てくれ」
「ああ、了解した」
―― 一方ソフィアは……
「無駄足だったわ。まあ、仕方ないわね。とりあえずこの辺りで大きな被害が出てるって報告があったからまずはそこに行ってみよう。……半月くらいの間何の指示も出してないからもしかしたら死者も……。うん、急ごう」
ジュヴェルビークを挟んでロザンヌとは反対方面の地に“クロッセル”という大きな町がある。ジュヴェルビークから大きくは離れていない事もあり、被害は甚大だった。
「ソ、ソフィア様~! 直々に足を運んでいただけるとは~!」
町の指揮を執っている貴族が声を掛けてきた。
「ご苦労様。……えっと、ごめん名前は?」
「はい。アルフレッド・クラウスでございます」
「アルフレッド、被害状況の詳細、分かる範囲で」
「は! 残念ながら、被害は甚大でして死者多数……。確認できただけでも100人ほどです。負傷者は2万人以上……、重傷者2000人を超えております。確認できた範囲も限られており、恐らく実際の被害はその数倍以上になるかと……」
「……悔やまれる事はあるけど、今は助かる命を最優先する。現状の指示は?」
「死地救援型と戦闘特化型のヒューマライズに被害現場で生存者の捜索、重症患者が多い現場に生活支援型を多く配置し対応しております」
「うん。いい判断だわ」
「有りがたきお言葉。……しかし、私一人の指揮で対応できている範囲は限られており、未確認の場所で更に甚大な被害が出ている可能性もございます。……また、市民たちの協力が中々浸透せず……、みな口々に勝手を申すばかりで……」
「……分かった。私が全体指揮を執る。あんたは引き続き対応中の場所の指揮を」
「は!」
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