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第百九十四話  約束の一歩

 翌朝――


 ガチャ……


「おお、ソフィア、おはよう!」


「おじいちゃん……。うん、おはよう」


「あ、ソフィアちゃん、おはよー!」


「レン、おはよ……って、ショコラ? オランジュ? あんた達、いつの間に? それに……」


「はははっ。今日はね、朝ごはん私が作る事にしたの? でね、ショコラさんとオランジュさんも手伝いたいって」


「私も一応女ですから、お料理なども嗜みたい気持ちもございます。……い、斑鳩さまのようにはお上手には出来ないかもしれませんが……」


「おい、ショコラ! ソフィア様……お、俺だってその……お母さんにはなれないかもしれませんが……」


「バカ!! オランジュ! 言うな!」


「あ……」


「ふ、二人とも昨日の……見てたんだ」


「い、いえ、その……! ち、違うんです! そそ、そんなつもりじゃなくてですね……」


「ありがとう……。その……、嬉しいよ!」


「ソフィア様……」


「いい匂い。レン、あんた、お料理得意だったんだ?」


「うん、昔は当番制でご飯作ってたからね。あ、ソフィアちゃんは座っててね。もうすぐできるから」


「うん」



 そして――


「美味しい……。これ、お味噌汁ってヤツだよね」


「あ、良く知ってるね。かなりマイナーな料理だと思ったけど。それにソフィアちゃん、お箸も上手に使うんだね」


「うん。お味噌汁もお箸もノアが教えてくれたんだ」


「そうか。ノアがな」


 にっこり笑って話す吾郎。


「……ねえ、おじいちゃん。……私、一度ソートリオールに戻ろうと思う」


「ん? なんじゃ、突然。居心地が悪かったかのう?」


「ううん。そうじゃないよ。……パパが居ない今、政府の統制を執れるのは私だけだと思うんだ。だから、私なりにやってみようと思う」


「……そうか。約束したんじゃな」


「え?」


「いや……、立派じゃよ。行っておいで。……じゃが、お前はわしの孫じゃ。帰りたくなったら、いつでも戻ってこい」


「うん。ありがとう」


「ソフィアちゃん! 私も行くよ!」


「俺たちも行きます! ソフィア様!」


「ううん。あなた達はここに残って。ショコラとオランジュはおじいちゃんとレンにお料理教えて貰いなさい」


「え?……はい、ソフィア様がそうおっしゃるなら……」


「おじいちゃん、レン、二人をよろしく」


 何故だか何時になく笑顔のソフィア。何か考えがありそうだ。


「うん! 任せて! ね、お父さん!」


「ああ、ショコラ、オランジュ! 修行は厳しいぞ! 覚悟して臨め!」


「はい、じい様!」



 ソフィアは、一人ソートリオールに戻った。

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