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第百九十一話  悲しみの先へ

「ソフィアちゃん。私は昔、ソアラって名前でお父さんとお母さん、それにノアと一緒に暮らしてた。……でもね、私がニアだって事で当時の政府に破棄を強要されたんだ。……でね、その時私の破棄の遂行を担当したのが、斑鳩さんだった」


「え……?」


「お父さん、お母さん、ノア……。みんな私を守る為に立ち向かってくれてね、お母さんはその時、命を落としたんだ」


「なっ……」


「私はその時一度レヴェイになってる。そして、怒りのままに斑鳩さんを葬ろうとしたんだ」


「そんなっ!」


「でも、それをお父さんが庇ってくれて、何とか斑鳩さんの命を奪わずに済んだ」


「え? あんたが斑鳩ちゃんを助けてくれたの?」


「ソアラに人を殺したという罪を背負わせたくない。わしは、その一心で飛び出した。……だが、結局自身が重傷を負い、そのわしを助ける為にソアラは、全エネルギーを消費し、わしの命を取り留めてくれた……つまり、破棄されてしまったんじゃ。」


「……」


「……それからお父さん。私はソフィアちゃんとの数ヶ月間の暮らしの中で、斑鳩さんとも出会ってる。……その時の私に過去の記憶は無かったけど、斑鳩さんは当然私を覚えていたはず……。それでも私に良くしてくれた。さっきの写真の話を聞いた時も、斑鳩さんらしいなって思った。あの人は、本当はとても優しい人だったんだ」


「……」


「……でも斑鳩さんは、先のジュヴェルビークでの抗争でソフィアちゃんを庇って……、亡くなった」


「なっ……!」


「お母さんの事は、今でも悲しい事だったって思う……。だけど私は、過去に捉われたままじゃなくて、それぞれの信念に従った皆の気持ちを大切にしたいって……今はそう思う。だから……」


「……ソアラ。……いや、レン。 わしは、お前を誇りに思う。立派になって戻ってきた娘を嬉しく思う」


「お父さん……」


 後ろでソフィアが泣いていた。


「ソフィアちゃん。……ごめんね、ソフィアちゃんにはわざわざする話じゃなかったかもしれない。私の事も嫌いになったかもしれない。だけど……」


「……斑鳩ちゃんがパパの悲願を叶える為に数多くの命を犠牲にしていたのは分かってる。だから、恨まれて殺されたとしてもそれは当然なのかもしれない。……それでもその時あんたが斑鳩ちゃんを殺していたら……、私はあんたを恨んだ……」


「ソフィアちゃん……」


「だけどあんただって、お母さんが死んじゃって斑鳩ちゃんが憎いはずどけど、ちゃんと斑鳩ちゃんと向き合って今を見ようとしてる。だから、もしあんたが斑鳩ちゃんを殺していたとしても今の私はあんたを恨んだりはしない」


「……」


「……だけどさ、なんて言ったらいいの? 会えないってこんなに悲しいの? あんたはお母さんに会えなくて平気? こどおにに会えなくて平気? 私は……こんな思いになった事……ない」


 思わず本音を漏らすソフィアを優しく抱きしめるレン。


「ソフィアちゃん、大丈夫。一人じゃないよ」


「うん……」


「……お父さん。ロキは……」


「ああ……。ここにいない事で察しはついている……」


 ロキの名を聞いた途端、思い出してしまった吾郎は、涙を流す。


「レン……! お前を守る為に必死に闘ったんだな! あいつは!」


「うん! 私だけじゃない。世界を救ったのはロキなんだよ。……もう会えないけど、ロキがいた事は私の心にもお父さんの心にもずっと残る。……だから何にも心配いらないよ。ずっと一緒なんだから」


「ぅああ……、ぞぅだな……」


 夕日が西に沈む。

 悲しみを乗り越えようとする三つの影が長く伸びていた――

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