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第十九話  お姉ちゃんが家にやって来た

「ただいま~!」


「おかえり、ノア!」


「あれ? ねえ、お父さん。その子、誰?」


 幼稚園から帰って来たノア。リビングの戸を開けると、吾郎と共に見覚えのない少女がいる事に気が付いた。


「おほん……あ~ノア、聞いて驚くなよ。この子はなんと……、ノアのお姉ちゃんだ!」


「……え? お姉ちゃん? この子、ノアのお姉ちゃんなの?」


「あ、いや……、そうだよな。いきなりだと流石に困るよな……」


 困惑したようなノアの反応に、紹介の仕方を失敗したと焦った吾郎だったが、その心配は直ぐにいい意味で裏切られた。


「ぃぃやったーー!! お姉ちゃんだー!!」


「え? そんなに……? (ま、まあ何はともあれ良かった……)」


 予想以上に喜ぶノアに驚きつつも、ソアラを受け入れてくれ、ホッと胸を撫で下ろす吾郎。


「ねぇお父さん! ご飯の時間までノアの部屋でお姉ちゃんと遊んでていい?」


「ああ、仲良くな」


「はーい! 行こっ! お姉ちゃん!」


「はい」


「ねぇ、お姉ちゃんお名前は?」


「ソアラです――」


 ノアは嬉しそうにソアラと話しながら部屋へ向かっていった。


 ――


 やがて時間が経ち、夕飯の時間になった。


「おーい、二人ともー! ご飯だぞー!」


 吾郎に呼ばれ、リビングにやってきた二人。すると、あれほど喜んでいたはずのノアの元気がなくなっていた。


「……」


「ん? ノア、どうした?」


「だって、お姉ちゃん何も知らないんだもん……。遊び方全部教えなきゃいけないから疲れちゃった。なんかノアの方がお姉ちゃんみたい」


 ヒューマライズは様々な状況を想定して、最初からある程度の事には対応できるように設定してあるのだが、ノアの遊びと言えば、ママゴトやお人形遊び、折り紙にあやとりといった古風な遊びが多く、どうやらヒューマライズの基本プログラムだけでは対応できないようだ。


「そっか。でも教えてあげられるなんて、ノアはえらいな~!」


「え?」


 ノアの表情が変わる。褒められて嬉しくなった様子だ。


「なあノア、お姉ちゃんまだ家に来たばっかだから、分からない事いっぱいだと思うんだ。だからお姉ちゃんが家に慣れるまでは、ノアが色々教えてあげてくれないかな」


「へへへっ、分かった! ノアがお姉ちゃんみたいになっちゃうけどそうする!」


「よかったな、ソアラ!」


「はい、よろしくお願いします」


 上手くノアを乗せ、丸く納めた吾郎。するとノアが、もう一つ気になっていた事を切り出した。


「あ、ねぇねぇお父さん。お姉ちゃんの喋り方、ちょっと違うよね。ふつうがいいのに、なんか大人の人の喋り方みたいだから……」


「おー、そっかそっか。なあソアラ、ノアにもお父さんに話すみたいにしていいんだぞ」


「あ、うん! ノア、また色々教えてね!」


 順能力の高いソアラは、迷いなく、言われた通りに対応する。


「あーー! うん、いいよ!」


 ソアラの話し方が期待通りなった事が嬉しくてテンションが上がるノア。


「よし、それじゃあご飯食べようか!」


「うん!」


 席について食べようとする三人。しかし、ソアラの様子がおかしい。


「ん? どうした? ソアラ」


「えっと、これ、どうやって使えば……?」


 どうやら箸の使い方が分からないようだ。


「そうか、箸は巷では一般的ではないもんな」


 すると、


「見て、お姉ちゃん! こうやって持って……ほらっ! こう! ねっ!」


「……こう? あ、できた!」


「うん! じょーず!」


 率先してソアラに箸の使い方を教えるノア。吾郎の言葉が早速効果があったようだ。


「おお! 大したもんだ! いや~、それにしてもノアさんは頼りになるな~!」


 それを少し大げさに褒める吾郎。


「へへへっ!」


「うんうん、照れるな照れるな」


「照れてなんかないよ!」


 吾郎にからかわれてムキになるノア。その間に、箸の使い方を覚えたソアラが食べ始めていた。


「うんっ! 美味しい! ねえノア、これすっごく美味しい!」


「そうだよ! お父さん、お料理上手だもん!」


「そ、そうか? いや~、ソアラの口に合って良かったよ~!」


「あー、お父さんも照れてるよ~!」


「ん? そんなことは……ってノア、お父さん () って言ったな? ん~?」


「うっ! お父さんのいじわるー!」


「ふふっ! 二人とも面白い!」


「え? 面白い?」


 思わずハモる吾郎とノア。


「ぷっ!」


「あ……」


 ハモった事に同時に笑ってしまった二人は、口を開いたまま顔を見合わせる。そして……


「あははははーーー!!」


 その状況に思わず三人で大笑い。


 ともあれ、新たな生活は順調なスタートを切った。最初は不安もあった吾郎だったが、いつかこの三人での生活が当たり前になる。そんな予感を感じるのであった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


もし少しでも、面白い! 続きが読みたい! と思っていただけましたら、


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