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第百八十九話  言えなかった事

 レンとソフィアから先の抗争で起きた出来事、そしてジャネクサスの正体、真意を聞かされたマルクスは驚く。

 だが同時に、合点が言ったように口を開いた。


「……そうか、ようやく繋がったよ……」


「え? 何が?」


「ソフィア……。おそらくノアは、800年後の未来に居る。キミの話を聞くまで想像もつかなかったけど、これで繋がったよ。無論それでもこれは、あくまで僕の推測でしかないけどね」


「え? ノアが……未来に……?」


「そしてレンさん。その推測が正しければ、ロキ君は800年後の未来から来た少年だ」


「ロキが!?……どういう事ですか?」


「これは、ノアが行方を晦ます直前の話になる。僕は彼女から、ロキ君の護衛と彼への伝言を頼まれたんだ」


「え?」


「ジュヴェルビークに“私と気配の似た”ヒューマライズの少年が必ず現れる。その時、彼をドラグレスク研究所の跡地に連れて行ってほしい。それが、迫害を受けているレヴェイ達を救う事になる。そして、その少年には、全てを終えたのち、私の下に戻るように伝えてほしい……と」


「そんな……ロキが……ヒューマライズ!?」


「……ただ、僕はその約束を果たせず、ロキ君にそれを伝えられなかった。……僕が出会った少年は、ただ指示に従うヒューマライズではなかった。意志や心を持ち、真っすぐな目をした少年だったんだ。決定的なのは、レンさんと出会う以前の記憶が無い事。つまり、あの時の彼はもう、ノアの言っていた彼ではなく、レンさんと日々を共にし、生きた……、そして、これからも共に生きるであろう人物だった。……そんな彼に、役目を果たし、もしかしたら消えてしまうかもしれないような宣告などできなかった。……ただ、記憶を取り戻す為の旅をしていると言った彼に唯一言えたのは、最後は自分自身が納得する答えを出してほしい。それだけだった」


 その瞬間レンはロキがあの場に現れた理由を理解した。それが破棄の条件だった事も。

 そして悟った。もう二度とロキに会えないという事を。


 レンの頬に一筋の涙が流れる。


「……レンさん、ロキ君があなたとカルマの危機にジュヴェルビークを守るべく現れたのなら、間違いなくそれは、記憶が戻ったからだろう。そしてその彼が選択したのは、自らの未来ではなく、レヴェイ達の未来だった。……それでもレンさん、彼がどれ程あなたと共に未来を歩みたかった事か……。どうか、忘れないでやってほしい」


「ロキ……ロキぃぃ…………、あああぁぁぁぁーーー――!!!」


 レンの脳裏で俄かに信じられていた希望が突如として不安と恐怖という絶望に変わった。そしてそれは、涙という形で溢れ出した。


「こどおにのバカ……。……パパの……バカ……――」



 暫くして落着きを取り戻したレン。

 二人はマルクスと共に、町の復興の手伝いをする事にした。

 ソフィアと話し合い、数日間の滞在も考えたレンだったが、この先、リトルリヴェールに向かう事をマルクスに伝えると、ロザンヌの事は自分とこの町の皆に任せて、故郷に戻ればいいと温情を受けた。


 一日だけの滞在とはいえ、かつてモーゼスの強行事件の時に集会所で母子の救出をした人物の一人だと町長から紹介されたレン、そして前回町長に紹介され既に町民に認知されているソフィアは、見送られる形で出発する事となった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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