第百八十八話 戦いの爪痕
ジュヴェルビークを旅立った二人。空を飛べるソフィアの能力で浮遊中。このままリトルリヴェールまで最速で向かう事も出来るのだが、出発直後、ソフィアがレンに声を掛けた。
「ねえ、レン。リトルリヴェール行く前に、ちょっと寄り道していい?」
「うん、どこに?」
「マルクスんとこ。もう税金とか徴収しないって言わなきゃ」
「あ、ソフィアちゃんそういう事もやってたんだっけね?」
「まあね」
ロザンヌを目指す二人。道中、思いもよらぬ地殻変動の被害を目の当たりにする。
想像もしてなかった光景に驚く二人。
一旦地上へ降り、そのまま被害の確認も兼ねて数日掛けて徒歩でロザンヌを目指ことに。こういう予定変更の時にも待機空間は便利である。
ジュヴェルビークからロザンヌまでの間に人が住むような町などは無いが、途中、怪我をした動物を見つけては、ショコラとオランジュにも協力してもらい、治療をしながら進んだ。
そして――
「ふー、ようやく着いたわね」
「……ここも被害が大きそう」
ジュヴェルビークでの出来事は世界各地で地割れや噴火、地震など大きな被害を出していた。星丸ごと一つ程の質量を誇る力を爆発させたレン。そして、そのレンを上回る力を振るったジャネクサス。一つの星の中でこれほど大きな力のぶつかり合いが起こったのだ。それはある意味当然の事であった。
それは、ロザンヌの町も例外では無かった……。
「……マルクスー! 無事ー!」
マルクスの家の前で呼び掛けるソフィア。
そして……
「その声は!?」
玄関からマルクスが出てきた。
「マルクスさん、こんにちは!」
「っ!! レ、レンさん!?……ぶ、無事だったのかい?……それに僕の名前を……」
「話せば長くなるんですけど、今は以前の記憶もソアラの記憶も全部あります」
「なっ!!……すまない。僕が知らない間に色んな事が起きたようだね」
「謝らないで下さい。……ロザンヌでもこれほどの被害が出て、マルクスさんだって大変だったと……」
「……ああ、町の人たちの安否が分からぬままここを後にはできなかったんだ」
「ごめんなさい! 世界がこんな風に壊れてしまったのは私のせいでもあるんです。私がもう少し上手に力を制御出来ていれば……」
「いや、レンさんの責任じゃない。あの時、トトニスさんの救出を二人にお願いしたのは僕の判断だった。こうして無事に顔が見れた事は何よりだ」
「マルクスさん……」
「ねえ、マルクス! 町長のおじいちゃんは!? あの男の子は!?」
「安心してくれソフィア。今はもう町の皆の安否は確認している。それにあの男の子、ルーク君も僕に付いて避難誘導を頑張ってくれたよ。キミに貰ったお守りを握りしめてね」
「そっか。あいつ……やるじゃん」
「ところでレンさん……、さっきの話、やっぱりあなたがカルマと……」
「いえ、私とカルマは二人でソフィアちゃんのお父さんと闘いました……」
「そんなっ! じゃあ、あの世界が震える程の力の主はジャネクサスだというのかい!?」
「はい……」
「かつて力を暴走させたソアラさん……。その力はカルマにも匹敵したと聞いています。僕の推測では、ジャネクサスはレンさんとソアラさんが同一の存在だと知っていて、再度その力を利用してカルマを倒す計画をしている……。こうでした。でも、実際は自らがそれ以上の力を持っていた……。彼の真意は一体……」
「……最初からそんな力を持っていた訳では無さそうでした。その……私が力を暴走させてしまって……それで――」
ソフィアの気持ちを気にして理由を伏せたレン。横からソフィアが割って入った。
「パパが私を殺そうとした……」
「っな!!」
「でも私を庇って斑鳩ちゃんが……。その瞬間、レンからとんでもない力が溢れ出してパパを攻撃した。……そのあとだよ。パパからレン以上の力が溢れ出したのは……。その一瞬でレンもカルマも凌駕されちゃって……」
「そんな! あのカルマが……。じゃあ、その危機を救ったのは……?」
「……ロキです」
「っ!!」
加えてソフィアがジャネクサスの正体、そしてレヴェイを滅ぼした後の真の目的……、今までソフィア自身も知らなかったそれらの事実を、最後にあの戦火の中で聞かされた事を語った。
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