第百八十五話 ソフィアとカルマ
ソフィアがカルマに声を掛ける。
「ねえ……、あのさ、私、あんたの事よく分かってなかった。……ううん、あんたの事だけじゃなくてパパの事も皆の事も何にも……。パパは争いの無い世界を作った。それだけは分かってた。だからパパの悲願は、あなた達レヴェイという強大な力を持った存在をこの世から抹消する事で成し遂げられるって信じてた。……だけどそれは全然違った。……パパは全てに絶望していて、それで自分さえも消すつもりだった。……だがら、最初から私も一緒に消すつもりで……、斑鳩ちゃんも……、斑鳩ちゃんも死んぢゃっで……」
困惑した思いを語り、涙を流すソフィア。
「……ついて来い。お前の部下も一緒に。治療する」
「え……、私は、あんたを殺そうとしてたんだよ! そんなやつを治療って……」
「関係ない。怪我をしている者が目の前にいる。ならば助ける。……母さんはいつもそうしていた」
そんなカルマを抱きしめ、頭を撫でるレン。
「カルマーー! さっきはぶってごめんねーー!」
「はあ!? なんだ、いきなり!」
「だってカルマ、健気なんだもん!」
「よせっ! 恥ずかしいっ!」
「ぷっ!」
それを見て笑うソフィア。
「へへっ! ソフィアちゃん、やっと笑ったね」
「……あんただってこどおにが居なくなって悲しいのに、私もいつまでも落ち込んでられないからね……」
「ね。そうだよ。カルマも! 一緒に“道”歩こうね」
「……ああ。母さんには敵わん」
「……って、レン、あんたカルマのお母さんなの?」
「ううん。違うよ」
「なっ!!! おい、俺を騙してたのか?」
「騙すなんて人聞きの悪い。カルマが引っかかってただけじゃん。……式神ソラは私にとってもお母さんだよ。8年一緒に暮らしたから、人柄は良く知ってる。だから真似もできる。今の私なら、気配もね」
「な、何の為に……?」
「だって、私が言っても直ぐ仲間を守ろうとして無理するでしょ? カルマ」
「ちょっと待て! じゃあ、あの時……トトニスの時もか?」
「え? それは知らない」
「え……? じゃああの時は母さんが?」
「分からない。でも私とお母さんは似てるだけじゃなくて、繋がってると思うんだ。もし私の知らない所でカルマに話し掛けてたのなら心配で出てきてくれたんだよ、きっと。でもジャネクサスと戦った時のはモノマネだよ。似てたでしょ? 完全に信じてたもんね」
「お、お前な……」
顔を赤らめて照れくさそうに振り返るカルマ。
「ふふっ!」
「ま、まあいい。……おい、子供! 行くぞ、ついて来い」
「あー!! 子供って言った!! あんただって子供じゃん!!」
「お前、そんな事を気にしているのか? 子供だな」
「ムキィィィーー!! あんた、やっぱ殺す……」
「その前にまずは腕の治療が先だ。“殺す”のはそのあと……」
「……あんた、こどおに以上にムカつくわね……。てか、あんただって両腕ズタボロじゃん」
「あー、こんなのは唾でも付けとけば治る」
「……治んないわよ――」
「ふふっ。なんだかんだで仲良くやれそうじゃん」
二人の後ろ姿を眺めるレン。
「……さて、私はこれからどうしようか……。ねえ、ロキ――」
振り返りロキに尋ねるレン。
しかし、ロキはいない……。
「あっ……。……そうだった。……うん、トトニスちゃんのとこに行ってみよう!」
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