第百八十四話 同じ目線で
――
穏やかな風が流れる……。戦場から一切の殺気が消えた。東西では、新や蛍をはじめとする各部隊の戦士たち……そして隊長たちは皆、声も立てず静かに涙を流していた……。
ジャネクサスは斑鳩の亡骸を抱えると静かに飛び去ろうとした。
そこにカルマが現れる。
「待て。……ロキは何処へ行った?」
「……」
無言のジャネクサス。
「おい! 答えろ!」
しかし、振り向いたその表情にロキの面影を感じるカルマ。
「お前……、ロキ……なのか?」
「……すまんな。俺は、お前の知るロキではない。あいつは……――」
そしてジャネクサスは消えた。
「待て!! 行くな!! ロキっっ!!」
消えた姿に向かって名を叫んだが、この時カルマは分かっていた。
ロキがもう既にこの世に居ないという事を……。
……ツーツー……ザザッ――
クリオネから通信が入る。
「カルマ! 無事か?」
「あ、ああ、俺は問題無い。そっちは大丈夫か?」
「ああ、私の部隊もノイの部隊も皆なんとか生きている。大丈夫だ」
「……すまん。よくやってくれた」
「ああ。……それよりジャネクサスの気配が消えたのを確認したのち、こっちで敵が何人か消えたんだ。残っている奴らは全員戦闘特化型のヒューマライズのようだが、指揮官を失ったせいか攻撃が止んだ。ノイの方でも同じ事が起きているようだ。ジャネクサスを討ったのか?」
「(何が起きている……)」
「おい、カルマ!」
「……クリオネ」
「……なんだ?」
「ロキに救われた……だが俺は……あいつを……救えなかった……」
――
戦いが終わり、中央広場に一同が集まった。
シェルターに避難していた総勢10万程の民は、騒ぎ立てる事なくカルマの言葉を待っている。
そして……――
「……長らく続いた政府との対立……。皆には不安な思いをさせ続けた……。そして起きてしまった大きな抗争。それは一重に俺の力不足が招いた事だ。すまなかった……。長く待たせてしまったが、今日、ようやくその戦いが終わった。……だがその戦いの中で、命を落とした者もいる。今俺たちは、彼らが繋いでくれた道の上に立っている。どうかその事を忘れないでくれ」
そしてカルマは地上へ降りる。
「……レン。……今は“レン”でいいよな」
「……カルマ、あのね……」
「俺を殴れ。……俺のせいでロキは……」
パァァァンッ――
カルマにビンタを浴びせるレン。
横でソフィアも驚く。
「一人で背負おうとしないで!! ロキは、あなたにそんな重荷を背負わせる為に戦ったんじゃない! あなた今、自分で言ったじゃない。命を落とした者が繋いでくれた道の上に私たちは立ってるって。あなたも一緒に同じ目線で歩いてよ。一人だけ違う道を行こうとしないで……。お願いだから」
いつになく強い口調で訴えるレン。
「……すまん」
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