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第百七十九話  告げられる真実、そして真意

「わしは、今からおよそ800年後の未来から来た。それだけじゃない。わしは人間ではない。人とヒューマライズの間に生まれたハーフじゃ」


「え……? そんな……」


「わしだけじゃない。斑鳩たちグローサの隊長やその部下の中でも古参の連中は皆同じ境遇のハーフじゃよ」


「知らなかったのは、私だけ……って事?」


「すまぬな。お前には、わしらの境遇に囚われる事のない物の見方をしてほしいと願った故の判断じゃ。許してくれ」


「……じゃあ、未来からレヴェイを倒す目的で来たって言うの?」


「本来は、レヴェイが生まれる原因を事前に消すのが目的じゃった。この時代でお前と過ごしたのは11年間じゃが、今より200年ほど前の時代から、歴史を正す為にその種を蒔いては少しまた未来へ飛び、人間を監視下に起きながらそれを繰り返し、レヴェイが生まれぬ様見張った。じゃが、今より40年程前の時代で結局レヴェイは生まれてしまった。わしらの監視を掻い潜った者たちの手によってな……。過去に戻る術はもう無い。故に、残された手段はこれしかないんじゃよ」


「……なんで、そこまでしてレヴェイを……」


「知ある者は、異なる者を最終的には受け入れられぬ。ひとりひとりが意志を持ち、それぞれの価値観を持っている。異なる種族間で手を取り合い生きようとする者も勿論おるじゃろう。じゃが中には、私欲に溺れる者もいれば、理不尽に下等な扱いを受け、恨みや憎しみを持つ者もいる……。同族間であっても差があれば不安に陥るような生き物じゃ、人間とは……。事実、未来で異種であるレヴェイを受け入れる事などできず、排除しようとしたんじゃ。……その結果が、戦争じゃ」


「……待って、パパ! だからパパはこの世界で戦争が起こらないような仕組みを実現させたんじゃないの? ここまでそれが実現できたじゃない。だったらなんで……? ここで争ったら、パパの言う未来と同じになっちゃうよ!!」


「分かっているさ。だからこそ、今日、このジュヴェルビークで全てを終わらす」


「待ってよ! なんで? 今のパパの話だと、争いの元は人間にあるんじゃないの? なんで、レヴェイだけを排除するの?」


「……ソフィアよ。人間はもう既に終わっておるよ。争いが起こらぬ事がその証拠じゃ。悲しいかな。人間は争いの中で成長し、先を開拓する。ここまで飼いならされた人間たちにはもう、その術は残されていない。娯楽快楽の日々を送り、種を残すという本能さえも、より都合の良いヒューマライズで満たし、人口は年々減っておる。与えられるままに生きれば何の不自由も無い。今生きておる者は、幸福度の高いまま寿命を迎え、果てるじゃろう。私欲に溺れながら死ぬのじゃ。人間という、まだ“知”を持つには未熟過ぎた種族の末路に相応しい。大きな力で駆逐する必要など無い」


「……」


「そういう意味でレヴェイは、人よりも遥かに知を持つに相応しい種族だったのかもしれぬな。このわしでさえ、駆逐する意外に方法が思い付かぬ程にな」


「……パパは?……パパは、そのあとどうするの?」


「この先100年後には人は絶滅する。種を残さぬのだから……。そして今日、レヴェイもいなくなる。……つまり、わしは生まれてこない。そのあとなど……無い」


「……そんな……そんなのって……」


 ジャネクサスの真の目的を知ったソフィアは動揺する……。


 一方でこの間もレンは、カルマに全力で挑んでいた。相変わらずレンへの攻撃を受け流すだけのカルマ。しかしレンは、自ら放つ全力の大技の負担に徐々に体が耐えられなくなってきていた。一部の血管が破損し、目や腕から血を流している。これ以上の続行は内臓をも破損する恐れがある。


「レンっ!!……パパ! ここで終わらすって言ったけど、どうやって? このままじゃレンの体がもたない……!」


「覚醒を待つのじゃ。覚醒した奴の力はカルマをも超える。それが唯一の……」


「もう無理だよ! レン、ボロボロじゃん!……パパ、ごめん。私……あの子を助ける!!」


 そう言い放つと、空間からショコラとオランジュを呼び出すソフィア。

 ここまで明確にジャネクサスに反したのはこれが初めてだった。


「ショコラ! オランジュ! いい? 今から三人でレンを助けるよ!」


「はいっ! ソフィア様」


 カルマの間合いに飛び込もうとする三人



 ……と、その時だった。


「(ソフィア……、お前を巻き込むわしを…………、許せとは思わぬ……せめて一瞬で送ってやる)」


 背後からジャネクサスがソフィアを狙い、攻撃を放った。


 鋭く頭を貫くような閃光……

 それに一早く気が付いたのはオランジュ。ソフィアとショコラを庇うように振り返り、二人の盾となった。



 ズンッ……――



 しかしなんと、それを正面で受け止めたのは突如として現れた斑鳩だった。胸騒ぎの正体はこの親子のすれ違い……、そしてソフィアの命の危機だったのだ。


 だが、ジャネクサスの攻撃の威力は高く、受け止めた獅子丸新月を砕く……。


 そしてそのまま……斑鳩の体を貫き、体を大きく抉った……。

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