第百七十八話 カルマVSレン
「……カルマ・アステロイドよ。まさかこうして対峙して話をする日が来ようとは……。して、提案とは何じゃ?」
「貴様の目的次第では交渉になるが、話に応じてくれた事にはまず感謝しよう」
「ふん、大方想像はつくが?」
「俺を破棄すれば、お前の目的は完遂されるのか?」
「『それで仲間の命は救ってくれ……』と、言いたそうだな。それが提案か?」
「……ああ、それで済むならな」
「そうじゃな。それではわしの目的は完遂されん。提案にはならん」
「では……――」
「哀れじゃぞ、カルマ。そんな交渉が最善の手とはな」
「……」
「お前が破棄されたのち、わしがお前の仲間を見逃す保証など無いぞ。わしがここで、『分かった』と返事をしてお前を殺し、そのあとはお前との約束などあって無いようなもの……。するのであれば、もっと物理的にわしを止められる交渉をせよ……。わしが手を止めざるを得ん“脅し”や“人質”でも用意してな……。貴様にそれができればの話じゃがな」
「っ貴様!」
「……何れにせよ、わしの目的はレヴェイの撲滅じゃ。お前は、最初に仕留めねばならぬ厄介者。ただそれだけ。目的の通過点に過ぎん」
「くっ……」
「話は以上か?……そうじゃ。感謝という意味ではわしからも一つ。せっかくこうして対面したんじゃ。伝えておこうか」
「……」
「お主、およそ化け物じみた力を保有しながら、今日までその力で我らを滅ぼそうとはせず、よくぞ大人しくしていてくれた。最大限の感謝をしよう。……そうでなければ、潰されていたのは間違いなく、わし等じゃったろうな。そう……、そうでなければなっ!!」
殺気を放つジャネクサスに対し構えるカルマ。
「ソフィア、レンを出せ。出番じゃ」
「う、うん、パパ!」
ジャネクサスがソフィアに指示を出すと、レンがソフィアの待機空間から出現した。そしてそのまま一気に突撃した。
「先手必勝っ!」
しかし、カルマにそれを防がれる。
「っ!?……レン!!」
攻撃を受け止めながら名を呼ぶカルマ。
「止められちゃった……。結構本気でやったのに……」
「レン! お前に以前の記憶は無い事は分かっている。……だが、それでも……」
「それでも……? 何?」
「お前は、友だ。戻ってこい!」
「今の私は、ジャネクサス様の従者。だから、あなたの命令を聞く理由は無いよ」
「それがお前の意志なのか!!」
「……あなたもロキさんと同じような事言うんだね……。でも私に意志なんて無い。私は、ジャネクサス様の命令通りあなたを倒す。それだけだよ」
「俺を倒して……、そのあとはどうするつもりだ? ジャネクサスの奴に従って、トトニス達……ここのみんなもその手に掛けると言うのか!!」
「トトニス……ちゃん……?」
一瞬意識が目の前のカルマから外れるレン。
しかし……
「レンっ!! カルマの言葉に耳を貸すなっ!!」
ジャネクサスが一喝する。
「ジャネクサス!!」
カルマが叫ぶ。
その瞬間レンの目つきが変わり、カルマの懐に飛び込んだ。
「百八式……砕破・鑼心撃!!!」
渾身の一撃。
……だが、カルマには通らない……。
「……レン、もう止せ!」
しかしレンは攻撃の手を緩めない。間髪入れず連打を繰り返す。
カルマはそれらを全て躱す。
通じぬ攻撃を繰り返すレン。むやみやたらに攻撃をしている訳ではない。カルマの動きを感じながら的確に攻撃している。
……だが、空間支配力が違い過ぎる。その差は誰が見ても分かる程……。やがて、レンの息が上がり始める。
「はぁはぁ……」
「パパ……。これって、どう見ても……」
「……レン、続けろ」
「ちょっ……、パパっ!」
レンとカルマの力の差を目の当たりにしても尚、戦闘を続行させるジャネクサスに疑問を感じ始めるソフィア。
「パパ……、レンにはまだ早かったんじゃ……。明らかに力負けしてる……。それに……」
「それに……なんじゃ?」
「カルマの奴……、自分の犠牲で仲間の命を救いたいって……。ねえ、……アイツ、そんなに悪い奴なの?」
「……ソフィアよ。わしは、カルマが悪だとは思うとらん」
「え?……だったら……」
「討つ理由が“悪”ではないだけじゃ。レヴェイは生まれてきてはならぬ者達なのじゃ。奴ら自身、望んで生まれてきた訳ではないじゃろう。……ある意味、奴らも犠牲者じゃよ。……人が犯した罪の責任を取る。それがわしの目的じゃ」
「人が犯した罪……?」
「今日までお前に伏せておった事がある。……だが、これが最後になる。話すとしよう」
「……パ、パパ?」
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