第百七十五話 最終決戦の幕開け
――ジュヴェルビーク 深夜二時
町中に警報が鳴り響いていた。
「カルマ!! クリオネだ。恐れていた事態だ。予想された内で一番最悪のケースだ」
「ああ、分かっている。深夜だが、四の五の言っていられん。まず、町の皆を新設した地下中央シェルターに避難させる」
「ああ、了解した」
「カルマ! クリオネ! ノイだ。俺の班は東から南、西の流れで外周辺の皆に呼びかける。避難誘導は何度か訓練した通り、外周辺に住む者から内に向かって行き避難する中、内に住む者を誘導していく流れで進めるぞ」
「ノイ、対応が早くて助かる。私の班は西から北、東に向かう。そのままお前達は西門の防衛、私達は東門の防衛に就く」
「ノイ。クリオネ。頼んだ。俺は、ジャネクサスとの交渉に向かう」
「カルマ。分かっていると思うが、レンが再び稼働されているなら人質に捕られる可能性が高い。交渉は不利だぞ」
「分かっている。だが、連れられて来ているとすれば救出する。レンがソートリオールで捕らえれているようなら、ジャネクサスを捕らえて交渉する手もある」
「ジャネクサスを……? 相当賭けだな。……だが、お前を信じる。承知した。レンの事は頼んだ」
そして、ノイとクリオネを中心に各防衛班の誘導の下、深夜にも関わらず、住民の避難は訓練通り無事に終わった。そして、それぞれが戦闘配置に着いて間も無く、東西で途轍もない衝撃と同時に大地が揺れた。西でバジリスク、東でリゼルグが防御壁を粉砕したのだ。
「ほう……、こりゃまた大層な防御壁を作ったもんだ。一枚ブチ破ったと思ったら直ぐに内側に壁が再生する仕組みとは……、しかもこれはマルクスとクリオネの共作……なるほど、かなり強固に練り込まれてるな。骨が折れそうなこって。これは、西のバジも相当、手ぇ焼いてるだろうな」
そのリゼルグの背後からクリオネが襲い掛かる。
「ここは通さん!」
しかし、その攻撃を斑鳩が止める。
「私が相手をしよう。リゼルグ、お前は壁の破壊に専念しろ」
「ああ、助かるぜ。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうか……」
斑鳩の助太刀を受け、壁の破壊に集中するリゼルグ。そして更には、時朗がクリオネの背後を狙う。
ザンっ……――
――ガっ!!
しかし、クリオネの背を男女二人の若い剣士が守った。
クリオネ隊の中でも成長目まぐるしいルーキー達だ。
「いくらクリオネさんが強いからって、流石に隊長二人はズルくない?」
「へへっ! 敵の隊長さんと差しでやり合ってみたい気もするが、まずはここを守る事が先決。悪いが、二人でやらせてもらうよ」
「実興、蝉丸、そっちは任せた。私は、こいつを止める!」
「承知です」
「クリオネさん、ご武運を」
「ああ、互いにな」
そしてクリオネは、水でサーベルを作り、斑鳩と対峙する。
「参る……」




