第百七十話 真実
――――
「――……キ」
何処からだろうか……、誰かの声が聞こえる。
「……ォキ……ロキ……」
その声は徐々に近づいて来る。
そして……
「ロキっ!!」
「わっ!……だ、誰?」
声に気づいて目を覚ますロキ。しかし、姿が見えない。
「ふぅ……、やっと起きた」
「誰だ!?……何処にいる?」
振り返り周りを見ても誰もいない。しかし、声は直ぐ近くで聞こえる。
「どこって……、あんたの目の前にいるよ」
「嘘つけ! 目の前になんか誰もいないじゃないか!」
「あはははっ! そうだね。その時点からすると……、800年後の同じ場所にいる。あんたの目の前に立ってるよ」
「800年後? そんなの誰が信じる!! っていうか何で俺の名前を知ってるんだ? お前、誰だ!?」
「ちょっと! 母さんに向かってお前は無いでしょ!!」
「か、母さんって……、俺の母さん……なの?」
「じゃなかったら“母さん”なんて言わないよ」
「ちょ……、いきなりそんな事言われても……。っていうか800年後の目の前にいるって、どうやって俺に話しかけてるんだよ」
「あんたの思念に直接話しかけてるんだよ」
「思念?……うっぷ!(ダメだ……。まだ気持ち悪い)」
「ちょっと! 大丈夫?」
「ああ、なんとか……。ここ、空気が悪くて。なんか、声じゃないけど叫びっていうか、言い方悪いけど怨念みたいな感じなのが襲ってくるみたいな感じがずっとしてて……」
「ちょっと待って。ノイズを払うわ」
「え?……あ、なんか楽になってきた」
「よし、これでいいわ。……ロキ、ここで私と話をしてるって事は、あんたいよいよジャネクサスの所に向かうのね。想定してたよりは少し時間が掛かったみたいだけど」
「え?……いや、俺はレンを……」
「ん? レン?……あんた、マルクスに会ったんじゃないの?」
「え? なんでそれを……?」
「なんでって……。そりゃ……」
「母さん!! あなた、もしかしてノアさん!?」
「……え? そうだけど……。っていうかあんた記憶が……」
「うん……ごめん。俺、あなたが母さんだって記憶……今は無い」
「……そう。どうりで印象が随分と違う訳だね」
「でもマルクスさんから、あなたからの伝言があったって聞いて。それで、あなたに会う事が出来れば俺の過去を知ってるはずだって思って、それからは俺、あなたを探してたんだ!」
「え……? それじゃあ、マルクスからは何も……?」
「え?……うん、想定外な事があるって言って……。俺が記憶喪失だからって……、だから今はあなたの伝言を伝えても意味が無いって。……ただ、“最後はキミが納得する答えを出してほしい”ってそれだけ……」
「……マルクス。……ロキ、そうじゃない」
「え?」
「マルクスが本当に想定外だったのはそっちじゃない」
「……どういう?」
「あなた、“感情”があるのね……」
「え?……何言ってるの? そんなの当たり前……」
「…………ごめんね。……ごめんね、ロキ……」
「……何が?……え?……そんな……俺……」
「……あなたは“ヒューマライズ”よ……。私が作った……、世界で唯一の」
「俺が……ヒューマライズ……?」
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