第百六十七話 痛みと意志
「……せっかく仲良くなれそうって思ったのに……。でも私だっていつまでもあなたに構ってる訳にもいかないんだ。私は今ソフィアちゃんに代わってここの看守を命じられてる。この奥で捕まってるニアが扉を破って脱走したみたいなの。あなたが何でここに居るかは知らないけど、どかないと巻き込まれるよ」
「扉を破って抜け出して来るニアなんて来ないよ。扉を破って牢から出てきたのは俺なんだからな」
「!!……そう。じゃあ、私のターゲットはあなただったって事だね。なら、遠慮なしに行くよ!」
次の瞬間、間髪入れずにレンが仕掛けた。
しかし、その一撃をロキは流布で躱す。
「え?」
そしてそのままカウンターで回し蹴りを放つ。
「うぐっ!!」
クリーンヒットを脇腹に喰らったレンが激しく吹き飛ぶ。
「(すまんっ、レン!)」
ガラガラッ――
瓦礫の中から立ち上がるレン。
「へー、ロキさん、あなためちゃくちゃ強いんだね。でも……、私だって!……流燕……」
ヒュン――
その瞬間レンが消えた。
そして次の瞬間ロキの懐辺りに現れる。
「ふっ!」
しかしロキも、それを流布で躱す……
が、その瞬間レンの気配が背後に……
「え?」
「逆鱗旋!!」
一点に集めた風の礫を螺旋の渦にして放つレン。礫の一つ一つが鱗の様に固く弾丸のような衝撃を与える。
背中に真面に喰らったロキは、かなりのダメージを受ける。
「くっ……くぅ……」
「へへ、逆転っ!」
そして、そのままロキを捕えようとトドメをさそうと一気に距離を詰めるレン。
だが……
「八十一式……」
「え?」
「麝香……風円陣!!」
フルパワーで、自身の周囲に斬撃の風を巻き起こすロキ。その威力は大気にまで影響を及ぼし、広範囲にプラズマも生じる。
「うそっ!……きゃぁぁぁ――」
ドサっ――
竜巻に巻き上げられ落下したレンは、倒れたまま起き上がれない。
ロキも消耗が激しく息が上がる。
「はぁはぁ……」
しかし、その僅か数十秒ほど……。消耗の激しいロキを他所にレンが立ち上がる。
「わっ……、服ボロボロ。……ねえ、ロキさんの技……、私のにそっくり。……なんで?」
「……そりゃ、お前、……一緒に……ゴローじいの……ところで修行……しただろ?」
「そっか……納得」
その時……
「……ぶはっ――」
脱出の時を含め、短時間でフルパワーの大技を二発も放ったロキ。反動で内蔵も損傷しており、吐血する。
「……ロキさん。あなた相当強いと思う。……だけど、あなたは体力も消耗するし、痛みも感じる。でも私は、体力は消耗しても痛みは感じない。この差は大きいよ」
「ああ、そうかもな……。だけど、俺はお前を救いたいという意志がある。対して、お前は命令に従っているだけだ。この差も大きいぜ?」
「なにそれ? 言ってる意味が分かんない」
一瞬苛立ちを見せたレンが、ロキに向かって突っ込む。ロキもそれに応じ、ここから激しい連打の攻防が繰り広げられた。
「(くっ、相当消耗していたはず……。どこにこんな力が……。これが意志の力?……これじゃあ、私のエネルギーが先に尽きるかも……)」
そして、およそ二時間にもおよぶ激しいぶつかり合いの末、立っていたのは――
「はぁはぁ……、つ、捕まえた……からね――」
レンだった――。
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