第百六十六話 正義かエゴか
「レン! お前、破棄されたんじゃなかったんだな! よかった!」
なんと、駆け抜けた先で待っていたのはレンだった。
しかし、ロキはまだ分かっていない。レンがもうかつてのレンではないという事を。
「あなた……誰?」
「何言ってんだよ! 俺だ! ロキだよ!」
「ロキ……。あっ、じゃあ、あなたが“こどおに”?」
「こどおにって、お前、ソフィアみたいな呼び方するなよ」
「あはは、ごめん。初対面なのに失礼だよね。ソフィアちゃんがね、いつもあなたのお話するから。ちょっと、“あっ、本人だ!”って思ったら驚いちゃって」
「初対面……って、お前……」
「あっ……、そっか。あなたは私の前のオーナーなんだよね。話は聞いてるよ。だからあなたは私と初対面じゃないんだよね」
「……レン。(そっか……やっぱり、破棄は……、記憶が無いんだ……)」
「なに?」
「え?……そういえばお前、“レン”って……今の名前もレンなのか?」
「そうだよ。じゃあ、あなたと居た頃の私もレンだったの?」
「ああ、……俺が付けた」
「ふふっ! ロキさんはソフィアちゃんと仲良しなんだね」
「え?」
「私に“レン”って名前付けたの、ソフィアちゃんなの。同じ名前付けるなんて、仲良しの証拠だよ」
「(なんだか以前のレンより少し幼い印象だ……。それに、何だろう……無理やり戦わされてるって感じじゃない……)」
「ん? どうしたの?」
「いや……、じゃあ、今の主はソフィアなんだな」
「違うよ。私のご主人はジャネクサス様。でも、ジャネクサス様の命令で今はずっとソフィアちゃんと生活してる」
「なっ!!……なあレン。俺はお前を救いたいと思っている。俺と一緒に来る気はないか?」
「救う? 何から?」
「何って……」
「それに私は今、あなたの従者じゃない。あなたの命令を聞く義務は無いよ」
「命令じゃない。お前の意志を聞いているんだ。……今の生活が幸せなら……それは……それなら……」
「……私の意志? そんなものは無いよ。私はジャネクサス様に従う以外には無いから。……でも、ソフィアちゃんとの生活は楽しいよ」
「……そうか。……でもジャネクサスがこの先お前に何を命ずるかで俺は……」
「ジャネクサス様が私に望む事は、カルマの抹殺。でも、今の私ではまだまだ……」
「……レン。悪いが、それは聞き捨てならない。それがお前の最終目的になるなら、俺はお前を止めなきゃならない」
「ロキさん……、あなたは敵なの?」
「お前がわからず屋のままなら、俺はお前を止める!」
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